とある冒険者と、彼の見たもの2
めちゃめちゃ手直ししながらなので設定が変わったりしてます 暫くは
「いや~助かった!オレぁもう絶対死んだと思ったね」
「本当に。僕のなけなしの魔力も枯れかかってましたし…」
「先に来た奴らもさあ、あんな大きな群れあるなら一緒に討伐しといてよって感じ~」
新たに起こした焚き火の前でわっはっは!と豪快に笑うのは剣士のバート。未だ疲れた様子の魔導士はデイヴ。愛用の弓を撫でながら愚痴をこぼすのはハドリー。彼らは他の冒険者たちと比べても平均的な腕前であるが、受けた依頼は着実にこなすと評判の冒険者グループだ。もとは四人だったのが一人体調を崩して外れて以来、何度か一緒に組ませてもらっているがみんな気のいい奴らである。
けれど今はそんな説明をしている場合ではない。先ほどからずっと、エイドニーは冷や汗をかきっぱなしだった。
「いやまあ?あいつらに襲われたおかげでこ~んな美人と知り合えたわけだし?オレ的にはラッキーっていうか?」
「…はぁ。子供相手に何を期待してるんだか…」
「その子供見て頬染めてたのはデイヴでしょ~!」
「そ、そんなことは…っ」
やいのやいのと騒ぐ彼らの、いつもなら仲が良いなぁと微笑ましくも感じるはずのそのやり取りが恐ろしい。勿論それ自体ではなく正確に言えば斜め後ろの、まさに話題に上がっている人物の反応だった。
「みっみんな!失礼だろう、助けてくれた人の前で…!」
「………」
無言に続く無言。仲間に治癒魔法をかけてくれた彼女に対しバートが「女神アプロディーテ…?」と呟いてからの沈黙はかけらも破られず今に至る。ピクリと眉をひくつかせた彼女を見てもう反射的に間に入り状況の説明をしたエイドニーだが、仲間には正しく伝わっていないようだった。
どうやら致命傷と思った傷は浅く、魔狼は何かのきっかけで退散。そこを通りがかった彼女が回復薬でもくれたのだろうと考えているらしい。
無理もないとは思う。十やそこらにしか見えない細身の、加えてとんでもない美しさの少女が自分たちが敵わなかったワーグの群れを一瞬で倒したなんて、自分が聞いてもきっと信じられなかったろう。
(でも本当なんだよ…!俺は全部見てたんだ!)
絶体絶命の危機から先ほどの、見たことのない治癒魔法まで。何が起こっているか理解は追いつかないまでもすべて見ていたエイドニーは、少なからず彼女を軽んじている三人を窘めるが一向に収まる気配はなかった。背後の、砂を踏みしめる音すらしない無音に逃げだしたい気持ちでいっぱいだったが、不意にそれは破られる。
「と、とにかく…!この人のおかげで俺達は助かったんだから、ちゃんとお礼を…」
「そんなものはいらない。言わなくていい」
「っ…!?」
「私はダラムという町に用がある。命を助けた見返りに案内してくれ」