ここはどこだろう。
目を覚ました。
いや気がついたらそこにいた。
違うな。気がついたらそこに在った。
意識が覚醒したわけではない。気がついたらそこに私という存在が在った。
周りを見渡すとなんとも不思議なことにそこは全てが白い世界だった。全てが白いせいで上か下も前か後ろかすらもわからなかった。
ここは....どうやらあの世と呼ばれる場所なのだろう。ここについて知識があるわけではない。なんとなくそんな気がするだけ。
「自分は死んだ」という事実がストンと胸に落ちていく。
だからきっとそうなのだと感じただけ。
しかしこれはどうしたら良いのだろうか。何もないただ真っ白なだけの世界で私は何をすれば良いのだろう。
それから私は漂っていた。何もすることがなかったのでボーっとしながらただただ漂っていた。
『やあやあ元気してるかい?』
「..........」
『え?あの?聞いてる?もしもーし?』
「..........」
『ダメだ。ちょっとくるのが遅かったかな?それ!起きろ!』
パチン
おや?いつの間にか近くに人がいるぞ?ボーっとしていたから気がつかなかったよ。
ん?本当に人....なのだろうか?なんだか違うような気がする。人ではないと直感させられるようななんとも不思議な存在だ。
『お。いい感してるね!そうさ!僕は人ではない。生き物でもない。まー。なんていうんだろう。君たちのいうところでは「神」ということになるのかな?』
「はぁ。」
『あれれ?感動薄くない?神様だよ!ぼく神様!』
確かに彼は、いや彼女は神なのだろう。彼女のそばにいるだけで知識にはなくとも強制的に理解させられる。
『ふふん。君はなんとも感受性が高いみたいだねぇ。今の君のように、ここにきた皆がそうやって感じるわけではないんだよ。中にはいまだに自分が死んだと理解できないこもいるくらいだからねぇ。』
「それはきっと現世に残してきたものがあるからでしょう。そのことを思えば簡単に納得することはできないでしょう。私は死ぬ前にすでに済ませてきました。なので未練、などはありませんよ。いやしかし、そうやって生にしがみついていた方が人間らしくて素晴らしいかもしれないですね。」
『そうだね。確かに君はあちらに未練を残していないみたいだ。ただ、君の死は運命から外れたものだとしたらどうかな?』
「運命から外れた?」
『そうさ。本当はこうやって胸を張っていうことではないんだが、君が死ぬことはちょっと予想外でねぇ。私が目を離した隙にいつの間にか死んでいたみたいなんだ。だからこそ私は今ここにいる。運命から外れた君の魂を輪廻に回収するためにね。』
「ははは。神様にもミスってあるんですね。それを知ることができただけでも私は幸せ者だったということでしょう。古の著名人でさえこんな経験はできなかったでしょうに。」
『ふふふ。君面白いね!本当はこのままリセットして輪廻の渦に放り込もうと思っていたけどやめた!それで提案なんだけど、君、生き返って見るつもりはないかい?』
「生き返るですか?」
『そうさ!残念ながらこの世界で生き返るとその大きな矛盾から世界が壊れてしまうからそれはできないけど、別の世界で新しい人生を始めるの!』
「しかし私はもう72のジジイ。今更生き返ってもすぐに死んでしまって意味などないでしょう。」
『もう!そういうことなら若返らさせてあげるよ!この際だから他にも色々やっちゃおう!今ならなんでも叶えてあげるよ。全知全能でも!永遠の命でも!』
「であれば.......ひつだけお願いがあります。」
『なになに!?』
「私の愛用の傘を一緒に連れて行きたいのです。」
『え?傘?もしかして死に際に転がっていたあの壊れた傘のこと?』
「ええそうです。あーしかしあの傘は壊れてしまっていましたか。失念していました。」
『まーそういうことなら直すけど、本当にそんなことでいいの?言い忘れていたけど今から行く世界、結構危険だよ?』
「ははは。それで死んでしまったらそれまでの命ということでしょう。2度目の人生だ。贅沢は言っていられませんよ。」
『ほんと変なひと。わかったよ。じゃ直して一緒に別の世界に送ってあげる。』
「ありがとうございます。それではお世話になります。」
『はいはい。それじゃね。もう会うことなんてないだろうけど。せいぜい元気で頑張ってよ。』
なんとも奇妙な体験だった。死んでからまさか神様に会うとは。そしてそのまま2度目の人生。人生は何があるかわからないな。
一つ気がかりなのは次の世界が危険だということか....
戦乱の時代なのか、はたまた治安が悪いということなのか......大穴で怪物がいるとかだろうか?
まぁなんとかなるでしょう。どうせ本当なら死んでいた身。せっかくなら2度目の人生は気が向くままに過ごしてみよう。
テンプレその1
なんか白い部屋で女神に転生させられる。