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偽りの島  作者: 刑部笑月
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4.食事の跡

「西田君たち遅いね」

 そう言われた進藤は、時計を見てみた。

「もう約束の時間より30分も遅れているね」

「ねえ、迎えに行こうか?」

「でも、霧で少し帰りが遅れているだけかもしれないし、霧が出ているから危ないよ」

「何かあったのかもしれないし、霧だってさっきより大分薄くなってきたから大丈夫よ」

「・・つまり、燈台にも行ってみたいわけ?」

「そこら辺はご想像にお任せします」

 あかりはすました顔をしている。何気ない素振りから、西田達を心配している訳ではないことは進藤には一目瞭然だった。こうなってくると、逆らうとややこしいことになる。

「分かったよ。だけど、途中で西田君たちに逢ったら引き返すんだよ」

「分かってる分かってる♪」


 30分後、二人は虫藻岬についた。霧は薄くなって、視界も200メートル先くらいまでは効くようになっていた。

「結局逢わなかったね」

「早く彼らを捜さなきゃ」

「じゃあまずは燈台からね」

『ホントあかりは変わってるよ』

 険しい道を30分も歩いたのに、燈台へ小走りに行くあかりを見て、進藤はため息をつきつつ、あかりに続いた。

「へ~昭和12年に出来たんだ~」

「コラコラ、二人を捜すのが先決だろ?」

「ハイハイ」

 二人は入り口に積もった、湿った枯れ草を踏み越えると、燈台の中に入った。

 中は暗く、霧のせいか、奥が少し霞んで見える気がする。壁も全体的に湿っている感じだ。進藤が懐中電灯で左側を照らすと、錆びた扉が見えるが、取っ手が見あたらない。何気なく下を照らすと、錆びた取っ手が扉の前に落ちているのが見える。が、その周りの床に血のような色で描かれた異様な模様が広がっている。それは、コンクリートの上に人の血が流れているように見える。

「うわあ!」

「どうしたの?」

「床!床!」

 あかりが照らされた床を見て、ちょっとびっくりしたようだが、しばらく見ると言った。

「これ、錆が溶けて広がっただけよ」

 そう言われると、確かにそのような気がする。だが気持ちのいいものではない。進藤は模様を避けるように扉に近づくと、扉を押してみた。しかしびくともしない。

「あ、こっちに上に登る梯子があるよ」

 あかりに言われた方を照らすと、確かに梯子がある。だが・・

「これ随分錆びてるね。大丈夫かなぁ」

 進藤には梯子の下にも流れた血のように広がる錆びがあるのも気になるところだ。

「ちょっと登ってみるわ」

 進藤が止めるまもなく、あかりは両足を梯子にかけていた。あかりはどんどん上に登っていく。仕方なく進藤も登った。

 上の階についた二人は、二箇所ある窓を、それぞれ外に眺めてみた。

 進藤は海を眺めたが、海上は霧に覆われ、よく見えない。第一、ガラスのない窓からも霧が入ってくるくらいなのだ。

「イチロー!あの辺りに、何か黒い塊が見えるよ」

 進藤はあかりの覗いている窓の方へ行き、あかりの指している辺りを見てみた。そこは、舞泊方面とは岬を挟んで反対側の、崖が湾曲した辺りで、平地ではないが、少し平坦になっているらしい。そこには霧のせいでよくわからないが、中央部が少し高くなっている黒いものがある。しばらく見ていると、黒いもの少し動いているようにも見える。

「・・あれ、何かな」

 あかりもさすがに不安を感じたらしく、いつになく小さい声で言う。

「い、石川さんに連絡するか?」

「でも、まだあれが二人に関係するものかどうか分からないし、あれが何かも分からないんだから石川さんに連絡してもしょうがないよ」

 進藤は青い顔をして黙ってしまった。

「確認しに行こうよ・・」

 進藤が黙って頷くと、二人は燈台から出て、『黒いもの』の方へと近づいていった。

 道はすぐに草で覆われてきたが、一定方向に草が踏み倒されたり折れたりしており、最近人が通った気配がある。

 2分ほど草をかき分けけて進んだ辺りで、あかりが不安そうに言った。

「ねぇ・・何か生臭くない?」

「不安をかき立てるようなこと言うなよ・・」

 その臭いには進藤も気付いていたが、黙っていたのだ。それからすぐに草が切れたが、その途端・・

「ガカーガカーガカー!」

 鳴き声と共に、先頭を歩いていた進藤の方に向かって、黒いものが飛んできた。

「うぎゃあ!」

 進藤が後ろに吹っ飛ぶように退いたので、あかりにぶつかった。

「きゃっ!な、何よ」

「な、何か黒いものが襲ってきた!」

 あかりが前方から接近してきたものが去った上空を見ると、怯えつつも安心したように言った。

「な、何よ、カラスじゃないの。本当にイチローって臆病ね」

 進藤が上を見上げると、カラスが十数羽、かたまって舞っているのが見える。

「いきなり飛び出してきたもんだから・・でも、あの『黒いもの』はカラスが集まったものだったんだね」

 帰る口実が出来た進藤は、心なし安心したような笑みを浮かべて言った。ところが、あかりは強ばった顔をして固まっている。

「どうしたの?」

「あれ、冬美さんのシューズじゃない?」

 あかりが指した方向を見ると、ちょうど草が切れた辺りに、右足用のシューズが、外側を上に、足裏を手前に向けて転がっている。二人はシューズに向かって近づいた。

 進藤がそのシューズを手に取ると、意外と重い。不思議に思い、進藤はシューズの上側を見た。シューズの中には、血に汚れ、千切れた靴下に包まれた、足首から先の肉が入っていた。

「ぎゃあああ!」

 進藤は咄嗟にシューズを前に投げ捨てた。シューズが転がった所は、土がどす黒く、周りの草は赤黒く染まり、同じく赤黒く染まった骨が散乱していた。その骨には血で汚れた白い筋肉や、黄色い脂肪がへばりついている。そして下顎の骨の側には、冬美が愛用していたネックレスが、やはり血に汚れて落ちていた・・

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