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蠢く影は

結局、途中で酔いが覚めたヴィネアは1人で帰れそうだったので帰らせた。


俺も今日くらいは久々の我が家に帰った方が良さそうだ。


飲んでいたバーは学院の目と鼻の先だ。


クロ、カイ、ローザも連れて帰ろうか・・・





少し歩けば、学院の門が見えて来た。


カートレット家の門もなかなかに立派だったが、国からの支援を受ける学院の門はそのクオリティを超える。


中心にはやはりカートレット家のそれと同じ共鳴石が埋め込まれている。


だがその性質は少し違い、カートレット家のものは石に衝撃を与えれば、近くにある別の石が共鳴するものだった。


しかし学院のそれは石同士を打ち合せることで共鳴するのだ。


そしてそれを機械工が改造して、手動ではなく自動で門が少しだけ開く仕組みになっている。


少ししか開かないのは、関係者と同時に不審者が侵入しないようにするためだ。


生徒が登校する時は全開になるが、その時は国から派遣された警備員が四人体制でくまなく監視している。


国営というだけで問題が起きれば、それは国を挙げた大騒動になってしまう。また王家の信頼にも関わってくる。


そんなことで内側から国が荒れるのは防がなければならないのだ。



カバンから取り出した石を、門の中央の石と打ち合せる。


これで門が開く、はずだった。


「・・・反応がない?」


おかしなことに共鳴石はうんともすんとも反応しない。


「まさか・・・」


試しに門を押してみると━━




ギィィィィという金属音を立てながら門がゆっくり開いた。




「!!」


通常、門は人が通ったのを感知すればすぐさま閉じてしまう。


しかし裏を返せば、人が通るまでは閉じないし、施錠もされないのだ。


つまりこれは誰かが石を使い、門を解錠した後、別の場所から侵入した・・・


もしくは、関係者が解錠した後、別の者が侵入。門が閉まった後にその関係者がもう一度解錠したかのどちらかになる。


正直、この門を通らず校内に侵入できるとは考えにくい。


そして実を言うとこの門━━




内側から開けることにも石が必要なのだ。




つまり、関係者とグルになった誰かが侵入し、関係者が侵入した者の脱出用に解錠したと思われる。


そしてその誰かはまだ校内に存在している。


(しかし何者の仕業だ・・・?)


この学院に所属する生徒は皆が将来有望な魔導師の卵である。


その個人情報を狙った裏の組織の犯行はよくあることだ。夜間の襲撃も多い。


その都度、学院の強靭なセキュリティがそれを跳ね除けてきた。


だがそれらは全て、門以外の場所からの侵入を試みていた。その結果、時間がかかり、侵入を察知され、速攻で排除されていた。


今回のような正面から門を開けて侵入してくるケースは初めてだったはず。


おまけに今回のこれをややこしくしているのが内通者が存在する可能性があるということだ。


内通者がいるのならその本人が動いた方が個人情報は入手しやすいだろう。


なら、敵の狙いは別にある。


いずれにせよ、捨て置くわけにはいかなそうだ。


周囲に人の気配がないことを察知し、俺はゆっくりと開かれた門をくぐった。


人を感知した門が歪な音を伴って、ゆっくりと閉まる。


そしてガチャリという音と共に固く閉ざされた。


侵入者も俺ももはや逃げられない。


そのまま目の前にそびえたつ巨大な校舎に向けて歩き出す。


真っ暗な校舎はまるで闇へと誘うよう。


また1人、宵闇の中へ吸い込まれてゆく。


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