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優等生の学院デビュー

チュンチュン。


窓の外に鳴くスズメのさえずりが朝を伝え・・・


「チュンチュン」


伝えていたのは中のスズメだった。


スズメが鳴くのはスズメ同士での情報伝達や縄張りの主張、求愛など様々な目的があるらしいが、ここは室内で、当然スズメなど一羽しかいないわけで。


「チーチーチー」


「お前、餌くらい自分で出して食えるだろうが・・・」


つまり餌よこせと言う鳴き声で叩き起されたわけである。


だが、寝ていたソファーから降り、壁掛け時計を見ると始業の1時間前を指していた。丁度いい時間に起こしてくれたようだ。


「チュンチュン」


「はいはい、感謝してますよ。でも餌は自分で食え」


薬棚の上から鳥用の餌と犬用の餌を取り出し、適当な皿に盛る。


階級や実績によって差はあるが、研究室は学院の教師に一人一部屋与えられる。


俺の研究室は恩師のおかげでかなり広い方だ。


その半分以上は研究機材や薬、素材を収納するための棚などに支配されているのだが、それらを置いてもまだ仮眠用のベッドやソファー、机などの生活用品を設置できている。


研究もできて、一々家から学校への道を往復しなくてもいいとなれば必然と住み着いてしまう。家は一応別にあるのだが。


窓の外には、まだ始業まで時間があるのにも関わらず登校してくる真面目な生徒達の姿が見える。


これももう見慣れた光景である。


その中に一際目立つ銀髪の生徒の姿が見えた。


銀髪自体は大して珍しくもなく、この学院にも他に何人もの銀髪生徒はいる。


しかし彼女の姿を見間違える者はこの学院にはおるまい。


「・・・よかった」


彼女は自分の言ったことをしっかりと実行したらしい。






8時にもなると大半の生徒は登校している。


この朝の始業時間前の30分をとっても生徒によって使い方は異なってくる。


読書や勉強、教師に質問をして己の力を高めることに注ぐ者。


友達と会話して人間関係を深めたり、広げたりすることに費やす者。


仮眠をとって授業に備える者。


大半の生徒がこの枠に収まるのだが、今日の朝の教室には若干1名、このどれにも当てはまらない生徒がいた。


「なぁ・・・アリス様一体何があったんだ・・・?」


「分からねぇ・・・でも・・・良い・・・」


「あんなキャラじゃなかったよね・・・?」


教室中でそんなヒソヒソ会議が行われていた。


その中心にいるのは、制服の襟元を大きく開き、あからさまに他の生徒より短いスカート、黒のニーソに身を包んだアリスだった。


いつもなら脇目も振らず勉学にこの時間を捧げているアリスだが、今日はやたらと周囲の視線を感じ、何にも手がつけられていない様子だった。


普段の格好の時から制服を押し上げ主張の激しい胸はその谷間を露わにし、度重なる戦闘で程よく引き締められた脚も短いスカートによってその姿を衆目に晒している。


本人の耳にこそ届いていないが、彼女はそのルックスだけでなくスタイルも注目を集めている。


つまり今日の彼女の服装はそれだけで男子を悩殺できそうな勢いがあった。


本人はカジュアルさを気取っているつもりなのだろうが、この魔導学院は如何せん真面目な生徒が多く、その類の格好をする生徒は皆無である。


要するにその格好はこの学院では不適正なわけで・・・




「あっ、おはようございます先生。今日も爽やかな朝ですね」


「服装が爽やかじゃない、やり直し」




教室に様子見に来た俺は、居心地が悪くなり教室を出ようとした彼女を出会い頭に連行した。


生徒指導も楽じゃねぇ。



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