表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジック・アイロニー[現在停滞中]  作者: なぎコミュニティー
第二幕・ヒマリside
83/129

スペニア・キャンプの攻防・後編



 ロミオとグレイシアの争いは、過激さと狂気が増していく中、ヒマリとハートは、必死でシフォンの傷の手当てをした。しかし、傷口が深く、どうしようも出来ない。

 ヒマリの腕の止血は、ハートが持っていたハンカチを巻きつけ、何とかなっていたが、お気に入りのブラウスを真っ赤に染めていた。



「シフォン、しっかりして!! 起きて!! また、あたしのこと呼んでよ……『ヒマリさん』って」


 それもお構いなしにヒマリは悲痛な声をあげ、シフォンの名前を呼び続けていた。


「ヒマリ、今は安静にさせないと……。今は、何とか足止めをしてくれているけど、私たちもどうなるか分からないわ。私たちは、シフォンをグレイシアに奪われないように守り抜きましょ」

「うん……」


 辺りが夜の帳に包まれ、どれぐらいの時間が流れたのだろうか。スペニア・キャンプの灯りは灯っておらず、漆黒の闇に包まれていた。




「『殺意の氷剣(デス・アイスソード)!!』」


「『幻想世(イリュージョン)界の愛(・ラブビジョン)!!』」



 ロミオとグレイシアの贈り物(ギフト)がぶつかり合い、キラキラと光を残し、相殺そうさいした。


「ちっ、なかなかやるな……。デカフォニック渓谷バレー最強の男。次は、殺す」

「あんたに僕は殺せない。次こそ絶望でひれ伏せるがいい」


 辺りにはロミオの贈り物(ギフト)にあてられたグレイシアの部下たちが地面に倒れていた。ヒマリは、建物の影からその戦いを見守る事しか出来ない。長時間の戦いにロミオとグレイシアの息も乱れている。それに比べ、何も出来ないヒマリとハートは、罪悪感を覚えた。



「(どうして……同じ人間なのに争うの。あたしは、何も出来ないの?)」


 ハートは、シフォンの手を握り、再び意識が戻るのを待ち続けているが、段々と気温が落ち、シフォンの温もりも無くなってきている。このままだと待っているのは……。ヒマリは、その時の事を考えると震えが止まらなくなる。


「シフォン、大丈夫よ。私たちが、あなたのお兄さんを止めるから。安心して」


 優しくハートがシフォンに声をかけたが、シフォンの反応はなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 ロミオとグレイシアの乱れる息遣いきづかい、したたる大量の汗が地面ににじむ。ロミオとグレイシアの戦いも終わる気配がない。


「どうして……オレの攻撃を受けても死なない……。流石だな。でも、『スペアニア』に刃向かう奴らはみんな殺してきたからな。シフォンも同罪だぜ? オレが『殺せ』と言ったら容赦なくシフォンもってくれたからな」

「それは、嘘だよ」

「何だと?」

「だって、あんたの妹は誰も殺していない。みんなを逃がした上でキャンプを襲撃していたのを見ているから」


 その話を聞いたグレイシアの顔が般若はんにゃのような顔立ちになり、真っ赤に顔が染まっていく。怒りが爆発する瞬間だ。グレイシアは、真っ赤に染まった氷の剣を天にかかげ、大きな声をあげた。


「許さない……許さないぞ、シフォン!! このオレに嘘をつくとは……。殺してやる、殺してやる!! 『殺意の氷剣(デス・アイスソード)!!』」


 今までにない大きな衝撃にヒマリとハートは、吹き飛ばされそうになる。空には真っ白な厚い雲が覆い、気温の低下が著しく激しくなる。大きな雷鳴の衝撃にヒマリは、「きゃっ!!」と声をあげる。


 大きな雷鳴が何回か続き、雪が降り始めた。

 雪は勢いを増し、ヒマリたちのいるデカフォニック渓谷バレー隠者の森エルミット・フォレストは、雪で覆い尽くされていく。


「やってくれるじゃないか……。僕は、あんたを倒して、ジュリエットに会いに行く。だから、こんな贈り物(ギフト)ごときで死ねるわけがない!! 『幻想世(イリュージョン)界の愛(・ラブビジョン)!!』」


 再び異世界への扉が開かれようとする。

 しかし、今回は上手く開かなかった。

 吹雪により、その扉が凍り、パリンと音を立ててむなしく崩壊した。



「ふはははははははは、もうこの吹雪だとオレの勝利は確実だ!! 死ね、ロミオ!! ここがお前の墓場だ!! 『殺意の氷剣(デス・アイスソード)!!』」


 吹雪で視界が悪くなってしまってはロミオにとっても不利だ。グレイシアの不敵な笑みを見てしまったヒマリは、震え上がる。

 ロミオは、けようとせず、そのままグレイシアの贈り物(ギフト)を腹部にくらい、後ろに吹き飛んだ。


「ぐっ……うぅっ……」


 徐々にロミオに近づくグレイシアの姿をヒマリは、目に入れた時、再びまたあの声が聞こえてきた。




この物語は 鈴鹿歌音 さんが担当しました。 https://talkmaker.com/author/clanon213/

『マジカルミュージック』『グリモワル・フォーチュン』等、音楽を題材にしたファンタジー小説を多数連載中! これを機に是非ご覧下さい……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆★本小説をお読みくださりありがとうございます★☆

以下のリンクは本作にご協力いただいた作者さんの一覧です!
お気に入りの作者さんが見つかると嬉しいです(*´`*)

あかつきいろラケットコワスター市川雄一郎
かーや・ぱっせ内野あきたけ(旧名:星野リゲル)
金城暁大ミシェロ平沢沙玖羅
葉夜和馬(現:桜川藍己)美島郷志
亀馬つむり横澤青葉ひよっこ犬
紙本臨夢KAZUK53美夜宵蜜糺清瀬啓
鈴鹿歌音number神庭まどか

Special Thanks! ☆ 春乃凪那
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ