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ファンタジック・アイロニー[現在停滞中]  作者: なぎコミュニティー
第二幕・ヒマリside
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忘れられた栄華




 真っ直ぐな木の棒が一本、盛り土の上に立てられている。クイーンさんはその前にしゃがみこみ、右手を胸に当てると静かに礼をした。


「……フィフス、他には何かありますか?」

「私達の家があるよ!」

「……行きましょう。案内してください」


 続いて、私たちはフィフスの家に来た。家と言うよりは小屋で、僅かな家具とシーツの変えられていない薄汚いベッドがあるだけだ。そして若干、獣臭い。


「これは……」


 クイーンさんが手に取ったのは、机らしき物に置いてあった写真立て。色がだいぶ褪せてはいるが、幸せそうな優雅な装いの夫婦と、二人の女の子が写っている。


「クイーンさん、それがどうかしたの?」


 クイーンさんは、写真をじっと見つめて動かない。その唇が、ゆっくりと動いた。


「私と、トゥエルブです」

「ッ!?」


 私は思いっきり唾を飲んでしまった。二人共、子供のころからものすごい美人だ。

 じゃなくて、ここに一緒に写ってるって事は……!


「そう、私とトゥエルブは実の姉妹なんです。そして、恐らくフィフスも……」


 クイーンさんは写真立てを置き、私に向き合った。


「ヒマリ、ダイヤシティが元々王政だったのは説明しましたね?」

「え? あっ、はい。」


 なんかいろいろ忙しくて忘れちゃってたけど、そんなこと言ってた気がしないようなするような……。


「ダイヤの騎士は、かつて王の側室だった者の子供たちなんです。そして、私とトゥエルブは正室、つまり「本当の妻」の娘だった。しかし王は身を追われ、私達を置いて行方を眩ませました。私たちは、父の無念を晴らすために集まったようなものなのです。」


 ……どうしよう、クイーンさんの話が思っていた以上に重い。というかクイーンさんもトゥエルブさんも、めちゃくちゃ苦労してたんだ……。


「側室だった者たちは街に残りましたが、私たちの母だけは王とその身を共にしました。私たちはかつての使用人に預けられ、それ以降、父と母の消息は掴めなかった。それが、まさかこんな形で再会するなんて……」


 感傷に浸るクイーンさん。こういう時って、どんな言葉をかけてあげればいいんだろう?


「……ん? あったー!!」


 すると、部屋の中をガサゴソとさばくっていたフィフスが、何かを掲げて叫んだ。


「フィフスちゃん? どうしたの?」

「あったよ! お父さんからの預かりもの! あと私の名前!」


 何だか色あせが凄くて、引っ張ったら今にも破れてしまいそうなボロボロの紙。クイーンさんはフィフスに手を差し出して渡して欲しいと求めると、フィフスは快くそれに応じた。


「……これは!!」

「ねぇーヒマリ? ちゃん。私読めないから読んでー?」

「えっ? 私? 私もこの世界の言葉は……」


 恐る恐るフィフスちゃんから紙を受け取ると、カタカナによく似た形でなんとか読めそうではあった。


「フィフス=ララ・アマリリス。でいいのかな?」

「ほえー。そんな名前だったんだー」


 ……この子、本当に今まで自分の名前を知らずに生きてきたのか。



「……フィフス、ありがとう。でもどうして、私が姉だとわかったんですか?」

「へ? 知らない。年上の女の人はみんな、「お姉ちゃん」って呼んでるよ?」

「そ、そうですか……」


 クイーンさんと同様に、私も鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になった。この子、無自覚妹だったのか。いや、違和感はないんだけど。


「ですが、フィフスが私たちの妹であることに間違いはないようです。でもそうすると……13人目になるのですか」

「……クイーンさん?」


 何かを考え込むようにだんまりするクイーンさん。ふと何かを探すようにフィフスを観察し始め、やがてフィフスの首を飾るネックレスに目を止める。


「……フィフス、あなたもしかして、「アイデンティティーナンバー」を持っているのですか?」


 フィフスの首飾り、よく見れば石板に五つのひし形が刻まれている。クイーンさんはもしかしてこれの事を言っているのだろうか。


「これ? これはね……」


 ちゃり、と可愛らしい金属音が流れて、胸元で輝いてみせる首飾りに触れるフィフス。何かをしたそうにキョロキョロするが、首を傾げて渋い表情をする。


「ここじゃ危ないから、外でいい?」




こちらの執筆は 美島郷志 さんが担当しました。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883742775 連載をスタートさせた『拝啓、クソガキの皆様。』を始め、多数の作品を執筆中。これを機に是非ご覧下さい……!

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あかつきいろラケットコワスター市川雄一郎
かーや・ぱっせ内野あきたけ(旧名:星野リゲル)
金城暁大ミシェロ平沢沙玖羅
葉夜和馬(現:桜川藍己)美島郷志
亀馬つむり横澤青葉ひよっこ犬
紙本臨夢KAZUK53美夜宵蜜糺清瀬啓
鈴鹿歌音number神庭まどか

Special Thanks! ☆ 春乃凪那
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