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ファンタジック・アイロニー[現在停滞中]  作者: なぎコミュニティー
第二幕
57/129

ムルアハ伝説




「オイ! トウラ! 起きろ! 朝だ!」


 今日も教会の朝は騒がしい。ノアはトウラを起こしにかかっている。


「んや~、もう少し寝かせてくれ~」

「ダメだ! 早く起きろ!」

「やめろ~」


 ノアはトウラの布団をめくって無理やり起こそうとする。トウラは布団を持ってそれに抵抗している。しかし、結局トウラは簡単に布団から引きはがされたのだった。




 そして、朝食のあと、今後の方針を話し合うことになった。朝食時にノアに呼ばれたのは、シオン、シュート、トウラ、アザミ、司教だ。司教には司教の仕事があるのだが、彼もまた、周辺の情報を持っているので、参加することになった。そして、少女、フリージアはまだ目を覚まさない。



「本題に入ろうか」


 ノアが前に出て口火を切る。


「まずは昨日の遺跡のことからだ」

「遺跡ですか?」

「まず、ガキ、お前がこの前村で収集した情報を話してくれ」


 と、ノアが言ったが返事がない。するとノアがシオンの至近距離まで来て大声で指をさした。


「何ボーッとしてるんだ!! お前だお前!!」

「え!? すみません、ガキは隣にもいるから」

「そいつはアザミだ」


 アザミはアザミと呼ばれるらしい。シオンだけガキと呼ばれるのは不公平な気もするが、今の議題はそこではない。


「ガキ、時間がないから早く話せ」

「わかりました。僕が聞いた話だと、遺跡は突然現れたり消えたりするもので、その遺跡はある一族が管理をしていたそうです。その一族はすでに途絶えていて、一族は拷問されたりして殺されたようです」

「誰だよそんなことをするのは」

「文明が発展した人間です」

「……っ、文明が発展するとだんだん欲が出てくるからな」

「性欲か?」

「お前は黙ってろ!」

「って、オイ!」


 トウラとシュートは漫才のような掛け合いを始めたが、空気が微妙になった。今は笑いはいらないのだ。ノアはシオンに話を続けさせようとする。


「続けろ」

「はい。そういえば、話を聞いたおじいさんから最後に言われたのですが、一族の血縁らしき人がいれば匿ってくれと」

「アザミはその一族の血縁なのか?」

「……わかりません」

「じゃあ、次だ。司教、これについて知っていることを話せ。わからないとは言わせないからな?」



 鋭い水灰色の目で睨まれた司教は、状況を理解して、少し頷いた後、話し始めた。



「先程、シオン君の話した事に付け加えたいのですが、遺跡を管理していた一族は殺されたんですが、無理のない話です」


 司教は、低いトーンで、かつ強い口調でそう話す。


「遺跡を守る、という名目だけではなく、実はそれ以前は強国を持っていまして、そこの出の一族です」

「強国があったのか?」

「ええ、場所はわかりませんが。聖職者の間で俗にいう『ムルアハ伝説』です」

「「「 ムルアハ伝説? 」」」


 シオン、シュート、トウラは驚き、声を合わせてその単語を聞く。


「変な名前だな」

「強国は別の民族に征服されたんですが、遺跡の方も「ムルアハ国は贅沢だ」と、人間たちの係争の地になっていったのです。その過程ののち、遺跡が消えたと言います」

「なぜ消えた?」

「それが不明なんです。聖職者の間でも研究している人は誰一人いませんし」

「昔、遺跡の周辺で争いがあったなら、その怨念で消えたのか?」

「それはありません。怨念ではなく、誰かが意図的に消したんだと思われます」

「誰だ?」

「それは分かりませんし、分かるのならその少年が話しているはずです」

「アザミは「教えない」と言っているからな秘密な以上、自分たちで見つけるしかないな」

「また謎が増えたのか……」


 落胆する一同。このところ、謎が増えるばかりだ。頭が混乱する。すっきりさせたい。



「オイ、落ち込んでる暇はないぞ。それで、早い話になるがこれからどこへ行くべきかだ」

「でも、それは今話す必要があるのか」

「オイ、謎はほかにもいろいろあるんだぞ?ダビデの鍵や神聖櫃も探さなけりゃいけないだろう」

「それにしても、道具が多いよな」

「って2つだけだろうが……」


 と、文句みたいな事を言うトウラにシュートは突っ込みを入れる。


「とにかくだ、周辺のことを教える。どこに行くかはお前らで判断しろ」


 と言って、ノアは地図を広げる。決めろと言われても困る。そんな不穏な空気がその場に流れる。だが、まずは周辺の情報を手に入れなければ何も分からない。



「まずは北、大きな川を超えたら開拓地と呼ばれる場所に到達する」


 地図では、真ん中より右上の部分に、割と線が込み入った部分がある。ノアはそこを指している。これが開拓地の都市群になる。


「この南がブルーマウンテンズだ。ピーク王国はブルーマウンテンズの山麓に位置している」

「それにしてもすごい場所にあるな」


 ピーク王国はブルーマウンテンズの上にある。トウラはそんな場所には到底行けないだろうと思った。


「ああ、こんな山を登った奴はほとんどいないと言われている。登るなら相当の覚悟が必要だろう」


 やはり、ピーク王国にすぐに行けないという空気が場に流れる。



「南は未開拓地と言われている。何もない場所が多いという。でも大国『ムルアハ国』はこのエリアにあったといわれているぞ」

「じゃあ、なんで今未開拓地なんだよ?」

「人間が土地を見捨てて発展している方へ流れた。ただそれだけだ」


 ただ、というには無情な理由だが、現に南側は何もないという。



「あとはあまりお勧めしないが、西と東だ。理由は説明しない」


 西は奈落の底、東は大森林なのだが、理由を割愛されたら考えるのが難しい。


「妹はメルフェールにいます。西の奈落の底の先には行けるのでしょうか?」

「分かってる。お前は直接西に行こうとしそうだからな。ダビデの鍵が必要なのは分かっているだろう。それを探さなければならないだろ」

「で、どこへ行けばいいんですか」

「だからそれはお前らで決めろといっただろうが」


 一行は困った。ヒマリはメルフェールにいる。そのためにはダビデの鍵が必要だ。その他には何をするべきか。情報収集か?シオンの思想は塞ぎ込んでいく。



「情報収集は開拓地一帯で行うのがいいな。ただ、行く場所はシェロが戻ってきてから考えよう。地勢については理解した」


 少し強引だが、この話は終わった。間髪入れず、ノアが次の話題を出す。



「で、修行の方はどうする? シオン、トウラ。手ごたえはあるのか?」

「俺のことはもう解決しただろう」

「僕は行き詰ってます――詠唱文が思い出せなくて」


 こんなことを言うとやる気がないのか、などと思われてしまう。トウラはともかく、シオンは今修行で一番困っていることを正直に告白し、指示を仰いだ。


「転生者は記憶を持たなくなることがある。まさか、シオンもそれなのか?」

「そうだな」

「やはりクズ神の仕業か?」

「どういうことだ?」

「シオンの詠唱を使わせたらすぐ倒されるだろう、だからだ。クズ神がその異能を封印したんだろう」

「ああ、そうか!」

「じゃあ、どうすればいいんですか?」

「つまり奴が都合の悪い記憶だけを抜け落としている。それに関係する物があれば……」

「詠唱文が思い出せる。それは神聖櫃なんですか」

「それは分からない。そのためにもシオンには修行をやってもらう」

「俺はもういいな」

「お前もやるんだよ!」


 ノアは、やる気のないような発言をするトウラを見逃さず、こうして、この話し合いは修行へと持ち越された。




 こちらの執筆は KAZUさん が担当しました。

 現在、作品は鋭意執筆中! お名前を見かけたら是非、応援お願いします!

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