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ファンタジック・アイロニー[現在停滞中]  作者: なぎコミュニティー
第三部・ヒマリside
123/129

ハイ・アンド・ロー




 王城の応接室。そこに、2人は対面していた。


「では、よろしいですね?」


 クロムの正面に座るハートは頷いた。それを見たクロムの目が細まる。2人の間の机の上にはカードの束が置いてあった。


「では、始めますか」


 クロムはその山札を手に取ると、それを切る。

 切り終わると、山札の上から10枚を伏せて机上に並べた。




 同じだ。




 ハートは、ここに来る前、リリィに見せてもらったビジョンを思い出す。数十本のマッチを使い、選ぶべきカードを予知して貰った。そのカードは覚えている。


 ハートは、束から、カードをめくる。




 4。




 予想通りだ。

 今度は机上のカードに視線を移す。ハートは10枚の中から一番右端に向かって、先程のカードを置いた。


 同じ様にクロムも、残り9枚の内の一枚に、自分が引いたカードを置く。クロムの引いたカードは……。




 2。




「オープン」


 クロムの声と同時に、両者は伏せてあったカードをめくる。



 ハートは5。

 クロムは9。




「ハート様が合計9。私が合計11ですね。私のリードです」


 だがまだ終わりではない。


「ウィッチ?」


 クロムが尋ねる。


「ワンモア」


 そう、ハートが言い、束から新たなカードを引くき、裏側で伏せる。


「スタンバイ」


 クロムが言う。さぁ、勝負だ。ここでハートは2以上のカードを引かなければならない。




 ハートがカードをめくる。リリィの予知では、3が来る筈だ。


「(どうか、当たって!)」


 ハートは心中で祈る。カードが表になる。




 3。




「ほほう」


 クロムが笑みを浮かべる。


「貴方が11。私は12。私の勝ちね」

「その様ですな」


 ハートは息をつく。対してクロムは顎をさする。


「だが、まだ終わりではありません。まだ、2ラウンド残っています」


 伏せられた、残り8枚のカード。そのカードの、どれを選ぶかだ。

 このゲームでは、先に3戦を先取した方が勝利者だ。




「では、私から行かせて貰うわ」


 ルールでは、次のカードを先に選べるのは、前の回の勝利者だ。


 ハートが山札から、カードを引く。




 6。




 そしてハートは、目の前の8枚の内の一枚を選ぶ。

 残されているのは、中央に2枚。左右に3枚ずつ。




 ハートは、リリィの予知の幻影を思い出す。確かこの回では……ハートは中央から右のカードを選んだ。


「貴方の番よ」


 ハートの言葉に、クロムはカードを引く。そして、こちらから見て、右手際のカードにそのカードを置く。クロムのカードは……。




 10。




「オープン」


 クロムの声に、両者、カードをめくる。

 ハートは、2。対するクロムは8。


「私が8。貴方が13を超えて5」


 クロムの表情が険しくなる。


「私の勝ちね」

「……その様ですね」


 クロムは、惜しむ様に自分とハートのカードを見つめた。




「では、次に行きます」


 クロムが、初めてテーブルに身を乗り出す。


「次は無いですよ」

「こちらこそ」


 クロムの牽制に、ハートも答える。




「では、行きます……」


 ハートがカードを引く。




 5。


 だが、ハートはそこで止まってしまった。


「どうしたのです? ハート様の番ですよ?」

「分かってるわ」


 ハートは内心困惑していた。というのも、リリィの予知はここまでしか見せて貰えなかったのだ。ハートは横に並ぶリリィを見る。するとリリィが気付いた様に頷いた。


 リリィはクロムの死角になる位置にそろそろと移動する。そうして、おもむろにマッチを取り出すと、その場で擦った。


 マッチに映し出された数字は……ハートは、確信を得た様に、6枚のカードを見つめる。

 そして、残された、左の3枚の内の一枚に重ねる。


 クロムもカードを引き、残されたカードの上に置く。クロムのカードは、7だ。


「「オープン!」」


 両者、掛け声と共に、カードをめくる。


 クロムは微笑んだ。めくられたカードは、クロムが5。ハートが4。


「私が12。ハート様が9。私の勝ちです」


 リリィの予知通り。「この回は見送れ」と、リリィの予知に出て来たのだ。


 だが、ハートは終わらなかった。


「ワンモア」


 ハートのその言葉に、クロムはハートの目を見た。


「ほほう。勝負をかけて来るという訳ですか?」


 ハートの頷きに、クロムは微笑する。


「貴方が、ここで私に勝つには、4を確実に引かないと行けません。その確率の低さを知って、会えて勝負をかけると言うのですか?」


 リリィは必死に、首を振る。何故ならば、リリィの予知通りに行動しないと未来は変わってしまう為だ。それは即ち、今後のゲームでリリィの予知が機能しないと言う事になる。


 だが、ハートはひるまなかった。


「そうよ。勝負よ!」


 そのハートの台詞にクロムの口角が上がる。


「よろしい! それでこそ女王! 良いでしょう!」


 ハートは、静かに山札に手を置いた。

 この一枚に、ダイヤモンドシティの、いや、この世界の全ての命運がかかっている。


 この勝負に勝てばスペードキングダムは援軍を出してくれる。しかし違った時は……。



「そう言えば……」

「何ですかハート様」

「この勝負に私が負けたら、どうなるのかしら?」

「そうですねぇ……」


 その言葉に、クロムはしばし考える。

 やがて、思いついた様に不敵な笑みを浮かべた。


「貴方が、この勝負に負けた時は……」


 クロムはハートを舐める様な目で見つめた。


「その時は、貴方が私の伴侶となる、というのでどうでしょう」

「なっ……!」


 ここに来ての、ハイリスク。

 ハートは、それだけは絶対に嫌だった。


 それは、例え死んでしまっても、心に決めたたった1人の他に、自分の身を捧げる事は考えられなかったからだ。




 ハートはカードを手に、呼吸を整える。その緊張感はヒマリ達にも伝わっていた。


「(お願い! ハートを勝たせて!)」


 ヒマリは思わず、誰かも分からない人に祈っていた。






(ハートを助けたいか)


「(この声は!)」


(良いぜ。お前の力で、あいつを勝たせてやれ! 全てはお前の手の中にある!)



 ヒマリは静かに目を開ける。その目はいつの間にか金色(こんじき)に光っていた。


 その時、ハートの指が、ほのかに光る。



 ハートは精神を集中させていた。






 落ち着きなさい、私。






 そう、自分に言い聞かせる。


「行くわよ」

「望むところです!」

「ドロー!!!!」


 ハートはカードを引く。そして出た数字は……。




「4!」




 それを見たクロムの表情が引きつる。


「なっ……」


 周囲から歓声が上がる。


「やったー! ハートカッコいい!」

「流石です! ハートお姉様!」

「某、胸が落ち着かなかったです!」

「は、ハートさん……よよよ、良かったです!」


 やんややんやと沸き立つ部屋。


「これで私の勝ちよ!」


 勝ち誇って見せるハートに、クロムは唇を噛みしめる。


「さぁ、約束通り、援軍を出して貰うわよ」


 すると、クロムは諦めた様に、肩を落とした。


「分かりました。おっしゃる通りに致しましょう」




ここまでは 金城暁大 さんが執筆しました! 大変お疲れ様でした!

https://kakuyomu.jp/users/Ai_ren735 しばらく療養していましたが2019年から再び活動を再開するそうです! 今後の活躍にこうご期待……!

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