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ファンタジック・アイロニー[現在停滞中]  作者: なぎコミュニティー
第三幕・二部
112/129

罠・前編




「シオン……どうして……一人で行っちゃうの……!」


 シェロはひとり、村の外一帯をぐるぐると巡っていた。知らぬ間にいなくなっていたシオンを見つけるためだ。シオンを一人にはさせない――その一心で探し回るシェロの目はひどく血走っていた。

 そんな時だった。シェロの目に鬱蒼うっそうとした森が映り、足が止まる。


「――ッ!」


 脳裏に過ったのは、森を背に慟哭どうこくしているシオンの姿。

 シェロは思い切り頭を掻きむしった後、過った情景を振り払うように大手を振った。シェロが森に入ってゆく。




 森はところどころ薄暗い。大きなくすのきつたが絡んでいたり、銀杏の大木に大きな穴が開いていたり、黒松が曲がりくねって伸びていたりしている。また、鳥の鳴く不気味な声が遠くから響いたりもした。


「シオン……シオン……どこに行ったのかしら……」


 この時、シェロは森の中に水の音を聞いた。音のする方へ目を向けると一瞬、光を見たが消えていった。


「今のはなんだったのかしら」


 シェロが一瞬見えた光の場所に向かうと泉があり、鼻孔に飛び込むこうばしい香りにシェロは、空腹を覚える。たった今まで誰かが居たであろう空間に目を向け問いかける。


「シオン、シオン、そこに居るの?」


 シェロが呼びかけるが誰の答えも返ってこない。ただ水の流れる音ばかりが聞こえている。


「やっぱり、こんなところには居ないか」


 シェロが呟くとすぐ後ろで〝がさっ〟と音がした。


「おねえちゃん……」

「!」


 突然のか細い声に思わず振り向くシェロ。振り向いた先には、異常なほど白い肌をした幼い女の子が立っていた。


「おねえちゃん……だれか……探してるの?」

「……うん、仲間を探してるんだけど、お嬢ちゃんは、パパかママは一緒?」


 シェロが聞くと少女は小首を傾げる。


「ひとりだよ……」

「えっ、ひとりなの。パパやママは居ないの?」

「うん……。死んだ……」


 生気のない声で告げられた言葉だった。

 シェロは周章てて見繕う。


「ご、ごめんね。辛い想いをしたね。私はシェロ、お嬢ちゃんのお名前は」

「わたし……イワン……」

「イワンちゃんね。イワンちゃんは、どこから来たの?」


 シェロがイワンの目を覗き込むとイワンの目が妖しく光る。シェロの胸元が微かに光る。


「…………………」


 シェロは、頷くと頭を抱える。気づくとイワンは目の前に来ている。


「ごめんね、イワンちゃん、ちょっと眩暈がして、でももう大丈夫。そこで座って話しましょう?」


 イワンは、一瞬驚いた顔をしたがすぐに元の表情に戻り応えた。


「うん……いいよ……」


 ちょうど良い切り株がふたつあり、少し高い方にシェロが座り、低い方にイワンが座る。


「シェロ……さん……どんなヒト……さがしてる」

「イワンちゃんより、ちょっとお兄ちゃんの男の子でシオン君て言うんだけど見なかった?」

「見たよ……」

「見たって、どこで?」


 シェロは、驚いて聞き返す。


「ここで……」


 イワンの目が妖しく光る。イワンの目を見つめたシェロは気が遠くなってゆく……。




 やがてシェロはその場に倒れこんだ。

 イワンはシェロの意識がないことを確かめ、立ち上がり振り返る。シェロの胸の辺りが微かに光る。


 その時、近くの杉の木を揺らしながら人が降ってきた。


「コロブチカ、結構時間かかったな」


 その人――背の高い男が、イワンと名乗っていた幼い女の子に話しかけると、イワンは途端に口調を変えて応えた。


「ケイキ……コイツ……オレの術……効かなかった」


 ケイキは一瞬目を見開く。


「なに、珍しいこともあるんだな。今は、どんな状態なんだ」

「気絶してる……問題ない……ケイキ……運べ……」


 ケイキは、やれやれという顔をするとシェロをひょいと肩に担ぎ飛ぶように去っていった。コロブチカも後を追うように素早く走り去っていく。




こちらは K53 さんが執筆を担当しました。

https://kakuyomu.jp/users/K53 ただいま『タケルの書』という和風ファンタジーの連載を開始しています。これを機に是非ご覧下さい……!

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