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ファンタジック・アイロニー[現在停滞中]  作者: なぎコミュニティー
第三幕・一部
100/129

その頃・前編




 木かげに座り、遠くをぼんやりと見ている。そんなシェロの視界の端に、誰かが近付いて来るのが見えた。


「なぁ、ノアどこ行ったか知らないか?」

「ノアなら、シュートといっしょに「え!? なんで声かけられて無いんだ俺!?」

「知らないわよ……」


 落ち込むトウラ、呆れるシェロ。トウラがシェロの隣に座る。シェロはノアが言っていたことを思い出す。


「確か、調べ物がどうとか」

「俺はいらない子かよ……」

「疲れてるなら寝かしてやろう、とか言ってたみたいだったから、違うと思うけど?」

「なーんだ。てっきりノアのやつは俺のことボロクソ言ってるかと思ったぜ」

「あ、舌打ちはしてたかも」

「やっぱそういうやつだよなアイツは!」


 シェロは思わず笑う。それに釣られるようにトウラも笑った。朗らかな風が吹いていた。ひとしきり笑って、トウラの顔が変わる。


「シオン、大丈夫かな」

「大丈夫、と思いたいけれど……」

「この世界でやっと会えた身内、だったんだよな。懐いてた、っていうか」

「そうね。和尚とシオンには二人の空気があった」


 シェロとトウラはシオンと和尚が修行している時、食事している時、いろいろ教えてもらっている時、どんな顔を、声を、雰囲気をしていたかを思い出した。たしかに自分たちはシオンの仲間である、と思うけれど、それとは違う、別の関係でシオンと和尚が結ばれていたことは間違いなかった。


「ねぇトウラ」

「何?」

「家族を亡くしたことってある?」

「……無いな。両親もおじいちゃんおばあちゃんも元気そのものだったし、兄弟もみんな風邪知らずって感じだしな」

「そうなのね。じゃあ貴方も頼りにはできないわね」

「待ってなんで俺をdisるキャンペーンが始まってんの」

「でぃす……? なんて言ったの?」

「あーー、なんで突然俺をバカにするようなこと言うの?」


 シェロは小首を傾げた。トウラは心臓を押さえたくなった、が、怪しまれるのはイヤなのでどうにか堪えた。シェロはトウラの発言の意図をようやく掴んだらしく、なるほど、と言わんばかりに説明する。


「言い方が悪い、とは思うんだけど。もしトウラに身近な人をなくして、立ち直った経験があったら。……今のシオンもなんとかしてあげられるんじゃないかって」

「なるほどなぁ……」


 トウラは頭の後ろに手を組んで、空を見上げた。シェロもトウラの視線を追って空を見た。


「飛びたいなぁ……」

「それな〜」

「?」


 シェロはトウラの方を見る。


「いや、ホラ。俺、竜だったじゃん?」

「あぁ、そういうこと。トウラも飛ばせる人だったっけって思ったわ」

「ホントのところさ、空を飛ぶのめっちゃ楽しかったんだよね」

「そうよね! 空はイイわよね!」

「お、おう……あー、命に別状無かったら竜を手放したりしなかったんだけどなぁ」


 急に立ち上がったシェロに驚きながらも、なんとなく思っていたことを呟くトウラ。


「じゃあ、飛ぶ?」

「おう! ……って言いたいところだけどなぁ」

「さすがに、ね」

「どうせならシオンが元気になってからって感じだよな」


「……ねぇ! シオン見なかった!?」「もういいでしょ……」

「あら、フリージアにアザミじゃない」

「シオンもどっか行ったのか?」


 トウラとシェロは思わず顔を見合わせ、皆どっか行ってるなと笑った。フリージアは二人の様子を不思議に思いはしたが、それよりもシオンの行方だった。


「シオン、教会行ってからどこかに行ったみたいなんだけど……」

「私は今日はシオンに会ってないわ。トウラは?」

「俺もだな。情けないんだけど、何言ったらいいか分からなくて、会いそびれててなぁ」

「それで良かったんじゃない。シオン、ボクに掴みかかったんだ」

「アザミ、それはシオンは心がいっぱいいっぱいだったからで……」


 アザミの発言にまさかと思った矢先にフリージアが言ったことで、どうやらシオンがアザミに掴みかかったらしい、と二人は悟った。


「……これだったらシオンの側に付いておくんだったな……」

「そうね……」

「それでね、二人にも探すの手伝って欲しいんだけど……」

「行く」「行かせて」「帰っていい」

「「「 アザミ? 」」」

「ハイハイいっしょに行けばいいんでしょ、行けば」

「シオンを怒らせたのはアザミなんだから! ちゃんとどう謝るか考えとかないとだからね!」

「七面倒だね人間って」

「言い訳はいいから。行くよ?」


 半ば強引にアザミを引っ張って行くフリージアの姿を見て、トウラは姉妹みたいだな、と口角を緩めた。


「なんだかんだ揃ってるな、みんな」

「よく見ろシュート、若干2名ほど欠けてるぜ?」

「集合かかってないのに集まってるのが珍しいって言ってるんだよ」


 木の裏からひょっこりとシュートが現れる。シェロとトウラが座っていたのは木陰。しかし、これの意味するところを二人は気付かない。


「それに、なんとも珍しいものが見れたしな」

「なにかあったかしら?」「さぁ……?」「茶番やってる場合か……?」「そうだよシオン!」


 シェロが疑問げで、トウラも分からない風で、アザミはダルそうに、フリージアはほぼほぼ叫んだ。


「ん? シオンがどうかしたのか」

「起きて、アザミと喧嘩して出て行って、シスターさんも見たらしいんだけど居なくって!」


 フリージアの説明に、シュートは目を細めた。


「トウラ、お前探知系の魔法使えたっけ」

「……いま後悔してるよ」

「俺もからっきしだしな。出来そうなのは……ノアか」

「それが、ノアはどこかに調べ物」

「えー………タイミング悪っ! どうしようもねぇなこりゃあ……」

「探知系の魔法って何」


 シュートとトウラに割り込むアザミ。トウラが不思議そうに尋ね返す。


「お前、そりゃあ探知する系統の魔法だろうよ」

「トウラ、ボクは内容が分からなくて質問している」

「………シュート、パス」

「俺たちは魔法を勉強する機会はついぞ無かった! なんたってお尋ね者だし。シェロどうぞ」

「探知、ってシオンの足取りが分かればいいのよね?」


 うなづくシュートとトウラ。フリージアはよく分かってない顔をしている。


「……シオンの足跡が追えればいいんじゃない?」

「なるほど!」「天才じゃないか?」「えと……おめでとうございます?」


 トウラ、シュート、フリージアがそれぞれ感嘆を述べる。反面、アザミは黙ったまま。シェロが見やると目がここではないどこかを見つめているようであった。


「大丈夫!?」

「危ないなぁ。構築に失敗したらどうする気?」


 シェロか思わず肩を掴んだ、が、アザミの目はすぐに戻ってきて、不満げに手を払った。


「構築? 構築ってなんだよ」

「……おいまさか、魔法を作ったとか言うんじゃないだろうな!?」

「シュートはなかなか聡明じゃないか。そうさ。『足跡を追う魔法』を作った。ボクは名前付けとか得意じゃないからそっちでやって。じゃあ流すよ」


 アザミはシュートの予想通りだと自慢げに言って、シュートとトウラに手をかざした。そして二人の脳内に何かが流れ込む。頭を抑えてうずくまる二人にシェロとフリージアはおろおろする。しばらくして。


「流すぞ、じゃねぇんだよ……何を? って思った瞬間頭来たぞ」

「のんびり教えてる時間は無いからさ。この方が早いでしょ?」


 悪びれもしないアザミをちょっと睨みながらシュートは文句を言った。ちなみにトウラはまだ頭を抱えている。


「トウラが治ったら行こうか、シオン探し」



こちらの執筆は 亀馬つむり さんが担当しました!

https://kakuyomu.jp/users/unknown1009 カクヨムにて様々なジャンルの小説を連載中! 是非ご覧ください!

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