マントヒヒとの遭遇
「オレの名前はマントヒヒ。フリーのマントヒヒさ。と、いっても本当にマントヒヒな訳じゃない。
生まれた頃からマントヒヒみたいな顔をしていて、小中高とあだ名が『マントヒヒ』って固定されていただけさ。今は満足してるぜ。」
「そんなオレの夢は空をかける事だ。ムササビだって空をかける。
ならマントヒヒであっても『マント』とついているのだから空をかけるはずだ。そうだろう?」
そうカミングアウトされた時、人は一体どうしたらいいのだろう。
本当に猿みたいな顔をした人間が、僕に向かって語りかけていた。
僕は普通の人生を過ごした、普通に小学校に入って、普通に中学校に入って、なんとなくで高校にはいって。友達も数は多くはないけれど普通にいて、普通に過ごしていた。普通に高校生活も始まると思っていた。
この「マントヒヒ」と名乗る人間に僕が気づいたのは高校の登校初日、体育館で視認した時だった。その時は、「高校はすごいな」と思った。
横に白いアフロを伸ばした様な髪をした人が僕のすぐ近くで、話をする先生方の方を向いて舌打ちをしていたからだ。あろうことか、彼がいた列は割り当てられた僕が所属する予定のクラスの列だった。
先生方の話が終わり、クラス毎に退席する時、一瞬彼と目が合った気がした。ついでに、何故かウインクらしきことをされた。
「怖いし、関わらない様にしよう」そうされた時、僕はそう決意した。
だが、今である。
僕は「マントヒヒ」を自称する人?に二人きりの教室でいわゆる壁ドンをされている。
何故だろう。どうして、こうなっているのだろう。
「お前を一目見た時から、オレの心は決まったんだ。」
マントヒヒはいう。
「あの、お気持ちは嬉しいんですけど。ほら、同性?ですし、あってそう時もたってませんし、あの。」
僕はしどろもどろに返すのがせいいっぱいである。
「会ってからの時間なんて関係ない。俺達の関係はもう、運命によって決められているんだ。」
鼻息を荒くしてマントヒヒはいう。
「いや、でもですね。あの、空を翔ける人のお手伝いなんて、僕は航空技術も何もないですし、その、飛行機とかじゃだめなんですか?」と、一応聞いてみる。勘弁してほしい、こういう人の相手をするのは僕の許容外だ。
「何を、いってるんだ?航空技術なんて関係ないし、飛行機も関係ないさ。」
「オレのパートナーになって、オレに君を『描かせて』ほしいんだ、『空』君。」
それが、彼の、言葉だった。
何かにぶつけたくて、書きました。一応長編になっていますが、続くかはわかりません。
よろしくおねがいします。