6話
「雪乃? 起きなさい」
「んー……もうちょっと…」
「だーめ。混んじゃうでしょ?」
「でもー……」
「起きないと、キスするよ?」
そんなこと言われても……。ビックリはしたけど、キスが嫌だなんて言ってないよ?
それよりも眠いの〜…………。目を開けるのも億劫です。まだ起きたくない〜…。太陽ポカポカで更に眠いのです。
「あぅ〜…」
「ほーら!」
お布団はがされちゃったのでお着替えするです……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
雪乃は布団を引き剥がすと、やっとのろのろと起き上がって着替え始めた。キスするって言った時に何も反応しなかったのはどうしてなの? そのまましちゃっても良かったけど、きっとあたし止まらなくなっちゃうから。
遊園地、本当は受付に並ばなくたってメイドに言って頼めば別の入口から入れるの。お父様のおかげでね。でも、初めて二人で遊園地に行った時雪乃はそれを嫌がった。申し訳ないって。それからはちゃんと並んで、何時間も待ってから入場する。アトラクションも同じく。休日なんてすごく多いから、あたしとしては並ばずにいっぱい楽しみたいところだけど。待ってる間に雪乃とたくさん喋るのも楽しいから、まあいいかと思ってる。何よりその方が、彼女も楽しそうだし。
さて、やっと着替え終わったかと思えば、ちょこんとベッドに座ってしまった。髪は寝癖ではねたまま、顔も洗ってきたはずなのにまだ眠そう。カバンは肩からかけているから、準備完了、のつもりみたい。こっくこっくと首が動いて、本当に眠そう。あたしは櫛を出して丁寧にといてあげた。
今日も可愛いわ、雪乃……だれにも見せずにずっと独り占めしたいくらい。
……よし。車も待たせていることだし、出ましょうか。
「雪乃?」
「……だっこぉ〜…」
この子、天使だわ。とろんとした目で両手を前に出して見上げてくる。
「はいはい」
実際まだ時間は早い。いつもより早いからこうなってるけど、雪乃はそこまで朝に弱いタイプでもない。移動中はずっと寝てるだろうけど、ちょうど着く頃には目が覚めてるはず。普段からこれくらい甘えてくれていいのに……。あたしの方は荷物を先に車に預けたので手は空いてる。
「1時間半はかかるから。お腹空いたら言って。朝食は持って来てるわ」
「はぁ〜い……」