4話 小夜音編(2)
大変お待たせしました! 待っててくださった方ありがとうございますm(_ _)m
執筆中小説漁ってたらわりと出来てるやつあった……そしてまだ全然本調子ではない( ꒪⌓꒪)
鈴鹿ちゃんのママが貸してくれた黄色の金魚の絵の入った浴衣を着て、近くの花火大会に来た。お家を出る頃にはまだ空はオレンジがかっていたくらいだったけどすっかり暗くなっている。
「いいねぇ〜この人が賑わってる感じ!」
「そうだね。どちらかといえば苦手だけど。……え?」
人混みの中、隙間なくたくさんの人がいるのに、ある人に目が釘付けになる。
「小夜ちゃん!?」
ちゃんと前を見ていなかったせいか躓いてしまう。
「あ、うん。ごめん。なんでもないの」
まさか。いるわけないよね。
こちらに向かって歩いてくる。祭りを楽しんでいるようには見えない。人を、探しているような。
だめ。今は鈴鹿ちゃんといるんだもの。それに、ここにいるわけがないじゃない。気のせい。人違い。
「あ、綿菓子。食べたいかも」
「いいね! 小夜ちゃん甘いもの好きだもんね。二人で分けよ! あと、ほら、腕」
「うん」
腕を組んで並んで歩く。
このまま歩いてたら気になっちゃう。世の中に似た人なんていっぱいいるんだから。
鈴鹿ちゃんと、目一杯お祭りを楽しまなきゃ。
「おじさん、これください!」
鈴鹿ちゃんが、私がいつも見てるアニメキャラの絵がプリントされたものを指差す。ちなみにこのお祭りでのお小遣いはママさんがくれて、鈴鹿ちゃんが持ってる。
その時、
「……小夜音っ」
袖を引かれ振り返ると、彼女がいた。
見間違えではなく。
走ったのか、少し顔が赤くなってる。
「小夜音」
私が大好きだった声が、名前を呼ぶ。
「……花恋」
少し迷って、私も彼女の名前を呼んだ。気付いた鈴鹿ちゃんが、「誰?」と呟いた。そこにいつもの笑顔はない。名前まで言ったことは無かったけど、気付いてるんだろう。
「鈴鹿ちゃん。ごめん。少しだけお話させて」
隣にいる鈴鹿ちゃんのことは見えていなかったらしく、花恋は鈴鹿ちゃんを、次に私を見て、驚いたような顔をしていた。そうだよね。まだ別れてそんなに経ってないし、もう別の彼女が出来てるなんて。
「いいよ。待ってる」
鈴鹿ちゃんは許してくれた。
「どうしてここに?」
人気の少ない場所を目指して歩く。
「会いに、来たの。やっぱり忘れられなくて。住所は分かんないけど、学校の名前は知ってたから」
なるべく彼女の顔は見ないようにしていた。初めて会うのが別れたあとなんて。
「……そっか」
もう少し、早く来てくれてたらな、なんて。
「ちょっと迷っちゃったけどね。私、方向音痴だし。今日ももう、ここにいなかったら帰ろうとしてたの」
ああ、そう。この声。大好きだった声。久しぶりに聞けた。嬉しい。でも、喜んじゃダメだよ。私には鈴鹿ちゃんがいるんだもの。
「こんなに人がいるのに?」
「賭けだよ。諦めたくなかったの」
好きだった人。初恋の人が、今目の前にいるのに。会いにきてくれたのに。
「そう」
嬉しいって。ありがとうって。言えない。
「一緒にいたの、お友達?」
「……ううん」
新しい恋人とは、言えなかった。花恋の事も、まだ過去に出来ていない自分がいる。この子に嫌われたくない。そう思うと涙が出てきそうで、グッと堪えた。
「私のこと、もう嫌い? 会いたくなかった?」
そんな。そんなわけないよ……。
「ううん……すごく、会いたかった……でも、もう」
いろんな気持ちが溢れて、でも、言葉にはならない。涙となって流れていく。大好き。でもそんな言葉、今の私には言えないの。
「……浴衣、似合ってるよ。私が一緒に歩きたかったなぁ。お話してくれてありがとう。嫌われてないって分かっただけで充分だよ。……じゃあね」
行っちゃう。行かないで。お願い。
そんなこと言う資格なんてない。
ごめんね。花恋。
それからすぐに、鈴鹿ちゃんと合流した。
せっかくのデートだったけど、もう純粋に楽しめるような気分にはなれない。もう少しで花火も上がるけど、今は鈴鹿ちゃんに愛してほしい。これで良かったんだって思いたい。
「鈴鹿ちゃん。帰ろ。……帰って、一緒に寝よ?」
帰宅後の2人についてはきっとご想像の通りですw
おそらく花恋さんの登場はもうないかと……




