1話 生徒会編(1)
大変お待たせしましたってレベルじゃないですよねはい……季節はすっかり秋? 彼女たちの夏はこれから、です……。
「夏休みだよ! ゆゆ!!」
「そうね」
記念すべき夏休み1日目はさっそく登校日なのです。というのも生徒会で何か話し合いがあるとか……。すでに会長さんは生徒会室にいます。黙々と課題をしています。流石会長さん、真面目なのです。私たちはと言えば、昨日は早めに終わったのでゆゆのお家で課題をしてたけど、早々に飽きて夏休みの計画を立てていました。生徒会の予定が未定だからどうしようもないけど、とりあえずここに行きたいっていうのだけね。
「そうだお前たち、今度旅行でもしないか? 生徒会メンバーで」
「会長さんたちと旅行ですか?」
「ああ、海に行こうと思っててな。近くに別荘も持ってるからな。そこでのんびりしようかと」
別荘かぁ。流石です。昨日の計画には入ってなかったけど、やっぱり夏といえば海だよね。
「いいですね〜海」
「ダメです」
え!
「心配いらん。プライベートビーチだから俺たち以外に人はおらんぞ」
「……」
「行こうよゆゆ! みんなで海だよ!」
「…………そうね」
やった! 海だ!
うふふ〜ゆゆと水着でイチャイチャするんだー♪
「今度一緒に水着買いに行こうね!」
「ええ」
「……ゆゆ、背中ポンポンダメだよ〜」
うー、眠くなっちゃうじゃん。寝ちゃダメだし…
「いいのよ。まだ先輩たち来ないみたいだし」
でもでも、いっつも会議の時まで寝ちゃう……
「ん〜……水着でね、イチャイチャしゅうの……」
「ええ」
「およげるようになぅ……」
「そう」
「…………くぅ」
◇ ◇
雪乃が眠ってしまうとまもなく、コンコン、と生徒会室のドアがノックされた。
「どうぞ」
会長が応えると間もなく開いたドアの向こうから、おそらく20代後半と思われる男性教師が入ってくる。180cmくらい、眼鏡をかけた黒髪のボサボサ頭。けれど、目鼻立ちの整った顔は多分…………
「失礼します。森です。少しの間生徒会顧問になってしまったのでとりあえず来ました」
やる気無い挨拶に会長もあたしも返事はしない。
「好物は百合です」
「「…………」」
……水着ね。雪乃にはどんなのが似合うかしら。もう決定事項みたいだし、今日帰りにでも見に行きましょう。
「あー……そこに恰好の百合ップルがいるぞ」
「余計なことを」
森先生はあたし達の正面に座ると、気持ち悪い笑顔を浮かべた。
「さ、僕のことは空気だと思って存分にイチャついてくれ」
爽やかに言い切った彼に殺意すら湧く。まあ、遠慮なく雪乃を愛でていいならそうするけど。
「先生気持ち悪いです」
「よく言われるよ〜。この学校で男性は虫みたいな扱いだからねー」
男性に免疫の無い人の多いこの学校では、百合カップルの方が多いしね。それよりも。この人きっと、面倒くさい人だわ。早く揃わないかしら。
「会長。いつも役員だけで活動してたんですし、この人要らないと思うんですけど」
会長は相変わらず無言で課題に取り組んでいる。そういえば忘れてたけどこの人、受験生だったわ。
「そうは言っても先生だしなー」
「邪魔なんですけど」
「空気だと思えばいいさ。ここには3人しかいないって」
「……」
追い出す気は無いらしい。
「おーっす」
「こんにちは〜」
そこへ今度はタイミングよく先輩方が。
これで視線は逸らせるわね。会議も始まるし。終わったらすぐに帰りましょう。




