1話
お休み中でしたが急に何か降ってきたので書きました。
急に次章に入りましたがw
「さやちゃん? また思い出してるの? ダメだよ、れいだけみてくれなきゃ」
「ごめんね……でも鈴鹿ちゃん、これじゃぎゅーってできないよ?」
「いいの。れいがギュッてするから」
後ろで両手を縛られ、両足も同じような状態で、身動きがとれない。でもこんなの当然だと思うから、彼女を怒ったりはできない。こんな私でも好きになってくれて、寂しくないようにしてくれるなんて、鈴鹿ちゃんはとっても優しい。
私は結局あの後花恋と別れた。疑心暗鬼になりすぎて想いが冷め、その日のうちに別れを告げた。残ったのはこれで良かったんだったっていう思いと、でもやっぱり別れたくなかったっていう後悔。それに囚われたまま、今の恋人と付き合っている。なんで別れちゃったんだろう。また戻りたい……。声が聞きたい。会いたい。やっぱり嫌いになんてなれない。初恋は消すことなんてできないみたい。私には大きすぎた。あの子じゃなかったら、綺麗さっぱり忘れられたかもしれない。そもそも出会わなければよかった。でもあの子に会わずにここまでくるなんてきっとできない。あの子に会わなきゃ、ずっと私は寂しいままだった。
「ごめんね、ごめんね……」
あの子に対して、それから鈴鹿ちゃんに対して。
「これかられいだけを見てくれればいいんだよ?」
「ごめんね? 鈴鹿ちゃんは優しいね。大好きだよ……」
「うん、うん」
私の恋人は園田鈴鹿。写真を撮ることとスクープが大好きな……ちょっと変わった子。でもとっても優しいのよ。あの子よりずっと、私のことを考えてくれてるの。
「ぎゅーってしてくれる? 寂しいの、まだ……埋めてくれる?」
2人きりの部室で、縛られた私。学校が終わるといつもこう、と言ってもここ1週間のことだけど。
鈴鹿ちゃんが私を抱きしめてくれる。痛いくらいに、きつく。
「いいよ。れいがちゃんと埋めてあげるよ? だかられいだけを見て。早く、早く……」
初恋を忘れられない私を、ありのまま受け入れてくれた鈴鹿ちゃん。私は早く、彼女のことだけ見なくちゃ……。私は幸せ者だ。2人を同時に好きでいるなんて贅沢しちゃいけないの。
知らない間に涙でぼやけた視界を、鈴鹿ちゃんが取り戻してくれる。
「大丈夫。心配しないで。れいがいるから。1人じゃないよ」
壁に寄りかかっていた体が急に後ろ盾を無くし、床に打ちつけられるのを防いでくれる。私は横になって、彼女を見上げる形になる。鈴鹿ちゃんは私の体に跨ると、キスしてくれた。
触れるだけのものからだんだん深まっていく。
「んっ……あ、はぁ……っ、れいかちゃんっ、っふあ……」
縛られた体じゃ抵抗もできない。息が苦しくなってくると、また涙が流れる。
「大丈夫、大丈夫……」
唇が離れると、どうしようもなくまた寂しい気持ちが戻ってくる。
「解いて……お願い、鈴鹿ちゃん、」
抱きしめられるだけじゃ嫌だった。私も彼女を自分の腕で抱きしめたい。しばらくは渋っていたけど、手の縄だけは外してくれた。自由になった腕で鈴鹿ちゃんにすがりつく。
「鈴鹿ちゃん、鈴鹿ちゃん……」
「れいはちゃんとここにいるよ」
「行かないで…」
「大丈夫。さやちゃんから離れたりしないから。ね?」
「うぅ、」
あの子はもういない。私には彼女だけ。鈴鹿ちゃんがいないと、私……。
「さやちゃん、大丈夫だからね。れいがちゃんと愛してあげるよ。安心してれいだけ見て……」
抱きしめて、頭を撫でてくれる。それに甘えて私は体重を鈴鹿ちゃんに預けた。
「鈴鹿ちゃん……」
「さやちゃん。れいはここにいるよ。さやちゃん大好き。愛してる……」
「んー……」
第3章から小夜音と、るる×リオンの時にチラッと出てきた園田さん再登場。
ここから3、4話にかけてこの2人を書いていこうと思います。




