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雪解けのサイン。  作者: らんシェ
第2章 るる×リオン
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3.5話 雪乃×柚結里SS

「ひゃっ!」

ゆゆの腕の中で、その鋭い光と大きな音に怯えている。背中に回した自分の手が震えているのが分かった。

いつものこと。こんな日に一緒に居てくれるのはいつもゆゆ。時々ママやお姉ちゃんがいることもあったけど。抱きしめてくれるのはゆゆだった。他の誰かだなんて考えられない。


「大丈夫よ、あたしがいるから」


いつも私を落ち着かせてくれる、魔法の言葉。でも、今はそれを聞いても怖くて震えが止まらない。胸がドクンドクンと、治まる気配もなく早鐘を打っている。


こうなってしまったからだ。きっと。不安なんだ。

「雪乃?」

いつもと違う私に気付いたらしい。ゆゆが心配そうに顔を覗き込んでくる。

「……もう、克服、しなくちゃ……」

だって、いつまでもこんなだったら、ダメだよ……。

「どうして?」

「だって、ずっと一緒じゃ、いられないでしょ……?」

ゆゆがいなくても、大丈夫にならなくちゃ。このままじゃ私ダメになっちゃうもん。見上げると、困ったような顔をしてるのが見えた。

「大人になったら、別々になっちゃうし、それに……」

「それに?」

本当はわかってる。それよりも今はいつゆゆが離れて行ってもおかしくない、その事実が怖い。ゆゆが、恋人だから。考えてしまうこと。

「きっと、ゆゆだって飽きちゃうよ。私のこと」

ずーっと一緒にいたけど。幼馴染のままなら心配なんてしなかったかもしれないけど。大好きだから。恋してるから。離れたく、ないから。

「嫌なこと、しちゃうかも。分かってて止められないこともあると思う、から。だから……」

上手く言葉に出来ない。けど、精一杯ゆゆに伝える。

ゆゆだから、自分を隠したくない。遠慮もしたくない。甘えてばかりだから、余計に自分のしたいこと、押し付けちゃうかもしれない。

「いつかあたしが、雪乃を捨てるって、言いたいの?」

少し怒気を含んだ声でゆゆが言った。

終わりは、来ると思う。どれだけ必死に願ったとしても。

「きっとそうだよ」

嫌いに、なっちゃうかな。でも、本当にそう思うんだ。堪えていたはずが、我慢出来なくなった。溢れる涙が頬を伝っていく。

「言ってなかったかな、雪乃。雪乃が、あたしの初恋の人なんだよ」

抱きしめられたその腕に、少し痛いと思うくらい、ぐっと力が入った。

「初めて話してから、だよ。ずっと雪乃のこと考えてた。出会って間もない頃は、お母さんたちが予定した日にしかあたしたちも遊べなかったでしょ」

もう小学生なのに、近所だとは言えまだ子供だけで遊びに行くのを心配したらしいママたち。お家を訪ねて遊ぶなんて、週に1、2回くらいだった。私とゆゆは毎日夕方までいっぱい遊びたかったのに。

……あの頃からだと言うの?

「もちろんその頃は恋なんて知らなかった。気付いたのは5年生くらいだったかな」

頭をゆゆに預けて、話に耳を傾けた。

「ねえ、雪乃。恋ってね、本当に自分の世界が変わるのよ。それまでどんな事があったとしても。変わるの。見たことない色でいっぱいになるの」

見たことない、色……。

「嫌なことがあったとしても、その人と話すだけで忘れちゃうの」

うん。私もだよ。私もずっと、そうだったんだよ、ゆゆ。

「初恋を奪った罪は重いのよ。叶ってしまったんだから余計に。絶対に捨てたりしないから。だから、信じて。もし本当にそうなってしまったら、その時はどう思ってくれてもいいから。あたしもそうするから。今は、そんなこと言わないで……」

ゆゆとの距離が一気に縮まったような気がした。今は、信じよう。幸せな今を壊しちゃダメ。

「もし別れることになっても、私ゆゆのこと好きなままだよ。口では何を言っても」

私の初恋でもあるんだもん。悪いところばかりしか見えなくなっても、きっと忘れられない。忘れたいと思っても、やっぱりどこかでまだ好きって気持ちも持ってるよ。絶対そうだよ。

あやちゃんが来た時みたいに、離れなきゃいけない時もあるかもしれない。離れたくなる時も。

「あたしもよ。もし雪乃に嫌われても、何回だって会いたいと思う。声だって聞きたいわ。絶対に」

緊張の糸が切れる。安心すると同時に、それまで忘れてしまっていた雷の存在を思い出した。今までよりも一際大きな雷で地響きが起こり、教室の電気が全て消えた。

「きゃああっ!!」

「もう。克服するんじゃなかったの?」

くすりと笑うゆゆ。自然と重なった唇。


「大丈夫よ、あたしがいるから」


今度はその言葉を素直に受け止められた。絶対大丈夫。ゆゆがいるから。


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