19話
「おはよぉ〜……」
「おはよう、雪乃」
ふわぁ……ねむねむ…
「眠そうね」
「そりゃあだって……」
原因はゆゆなのに。
あんなことがあった後で、ぐっすり寝れるわけないでしょ!
いつもと同じ朝だけど、昨日と一つだけ変わったこと。それは、ゆゆとはお友達ではないこと。あ、と言ってもこの通りゆゆとは仲良しなわけで。ゆゆは私の恋人さんってわけで。うぅ……なんというか、昨日までみたいに甘えるのが恥ずかしいというか…………。
「あら。ハグはしてくれないの?」
あぅ!!
「……むぅ」
出来るわけないのに。
意地悪。分かってるくせに。
「行こ。遅くなっちゃう」
さっさと1人で歩き出す。ゆゆの意地悪。もう知らないもん。
なんでかな。手を繋ぐことすら、恥ずかしいなって。昨日までは普通だったのに。
「ちょっと待って」
腕を掴まれ、ぐっと引き寄せられた。
そしてーー
「…………!」
かぁっと顔が熱くなり、心臓がバクバクと大きく鳴るのが聞こえた。ダメだ、絶対ゆゆにも聞こえてる……!
うぅ……頭が沸騰しちゃうよ! 昨日は嬉しくて細かいことなんて何も考えられなかったけど、キスってこんなに恥ずかしいんだ……。
唇が離れた後も熱いままだし心臓は落ち着かない。ゆゆの顔なんて見れない。その胸に埋めきゅっと抱きついて。見られないはず。
「ハグしてくれた」
「……あぅ」
「目、覚めた?」
「うーっ! ばかぁ……」
意地悪。今日のゆゆは、すっごく意地悪なのです!
「おはよう、雪乃」
声をかけてきたのは英梨ちゃん。う……ちょっと気まずいな。でも、英梨ちゃんの方から来たってことは、もう大丈夫…なのかな?
「その様子では、昨日は大丈夫だったのですね。全く! 最後までハラハラしっぱなしでしたわ!」
やっぱり怒ってるよね……。プンスカしてる英梨ちゃん、やがて盛大なため息を吐くと、ビシッとゆゆを指差した。
「次はありませんわよ?」
「もう大丈夫よ。昨日は本当に助かったわ。ありがとう」
「ありがとう! 英梨ちゃん!!」
「え、ええ……恋人になったからって、ライバルが減るとは思わないことですわね」
「もちろんよ」
「ライバル?」
「雪乃」
?
怒ってたはずの英梨ちゃんが今度は優しく笑ってます。
「もう小野町さんから離れてはいけませんよ。今度こそ私、貴方を食べちゃうかもしれませんから」
え? 食べる??
どういうことかな。聞こうにも、英梨ちゃんはもう他のお友達のところへ行っちゃいました。
「ゆゆ、今のどういうことだと思う?」
「そのままの意味よ」
席に着いたゆゆに引っ張られて、ゆゆのお膝に着席です。
「お勉強しないの?」
「もうしたじゃない。それに今日くらい」
後ろからぎゅーされた状態でブラブラと足をブラつかせる。この体勢、何か落ち着くから好き。
「……また、お泊りしようか」
「うん」
あ。そういえば……
「今日お姉ちゃんが夜ご飯食べに行こうって言ってたんだ。ゆゆも行こ?」
「あぁ……そうね」
3人でお食事なんて、すごく楽しくなりそう。きっといつもより美味しく食べれるよ!
「今日は私のお家でお泊まりしようよ」
きっと遅くなっちゃうし。
「そうね。遅くなると車を寄こすのも面倒だし。そうしましょう」
お姉ちゃん、どこに連れて行ってくれるのかな〜! お腹空かせとかなきゃ!!




