17話
先輩2人は先に来ていた。
でも構わない。
まだなの、雪乃。
答えはちゃんと欲しいけど、これはあんまりだわ。
「ん……っあ……」
休日だった2日間。会えなかったのはすごく辛い。ただでさえ平日だってこの時間しか話せない。触れていられない。
雪乃は耐えられてるけど、あたしは……!
雪乃の腕があたしの腰に回り、きゅっとハグされた。いつもと違う。縋るように、体を預けてくる。キスに、応じてる。
その白く透き通るような頬に流れる雫に気付き、慌てて唇を離した。
「雪乃!? ……そんなに、嫌だった…?」
さすがに少しショックだわ。今までずっとあたしがしたいままにしてたから、当たり前、ではあるんだけど。
顔を俯かせ、彼女はひたすら首を横に振る。
「違う……! 違うの、何で、何で……私…………」
混乱してるらしい。その理由は分からないけど、原因にはあたしも関係してることは分かる。
やっぱり、告白しない方が良かった?
ううん。ずっと伝えたいと思ってた。後悔なんてしてない。真剣に考えてくれてる雪乃のことが嬉しい。
だから、待ってあげなきゃ。
雪乃だって辛いのよ。だから。あたしも耐えなきゃ。
「……明日で、終わるの、きっと…」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
授業中もいつものように全く話しかけられることなく、あやちゃんはノートを取り説明を聞くことに集中していた。
「私、あやちゃんに何かした?」
「したわ。でももういい。あや、決めたから。明日、柚結里ちゃんに告白する」
自分の心臓がドクンと鳴る音が聞こえた。驚きで少しの間何も言えなくなる。
「……そっか。頑張ってね」
ようやく口にすることができたのはたったそれだけの言葉だった。
「もう一度聞くけど。雪乃ちゃんと柚結里ちゃんと付き合ってるわけじゃないのよね」
「うん」
「そう」
それだけ言うとあやちゃんはまた黒板とにらめっこを始めた。
4限が終わりすぐに英梨ちゃんの元に向かう。
「英梨ちゃん」
「どうなさいました? 雪乃」
「お話が……」
「ちょうどお昼ですし、一緒にいただきましょうか」
「うん」
英梨ちゃんが選んだのは空き教室だった。私たちの教室の真下。この教室前を人が通るのは、更に奥にある理科室を授業で使う時だけ。だったはず。だから人が通ることもほとんど無いんだよね。お気遣い感謝なのです、英梨ちゃん。
「で。何か発見はありました?」
発見か……。
「多分? ……好きなんだなって、わかった…んだと思う」
「はっきりしませんわね」
よくわかんないんだもん。ただ、なんだかすごくショックを受けたから……そうなのかな、って。
「あやちゃん、もう告白するらしいの。明日……」
「明日!? 何をしてるのですか! 雪乃、早く小野町さんに……」
「でもまだはっきりしたわけじゃないのに」
「全く。強情だこと! ……いいですわ。気は進みませんが、私が教えて差し上げましょう。明日は覚悟しておいてください」
「え……あ、うん。ありがとう」
「小野町さんでないとだめだと分かればいいのでしょう。……きっと後悔せずに済みます」
なんか暗いけど、大丈夫かな。
「大丈夫?」
「ええ! これは私も吹っ切れるチャンスですわ。貴方とはいいお友達でいたいもの」
? 英梨ちゃんが大丈夫ならそれでいいんだけど。本当は自分だけで解決しなくちゃいけないのに、お話聞いてくれてお手伝いまでしてくれるなんて。
「優しいね、英梨ちゃん」
「見てるこっちがモヤモヤしますの! 仕方なく、ですわ!!」
腕を組んでぷいとそっぽを向いた英梨ちゃんは、耳まで顔を真っ赤にしてた。
また、怒らせちゃった?




