11話
「能都あややです! 突然この微妙な時期の転校が決まって不安ばかりですが、仲良くしてくれると嬉しいですっ! よろしくお願いします!!」
教室中から拍手が起こった。
それに習って私も拍手する。本当に微妙な時期だよ。不安でも仕方ないよね。
クラスのみんなは転校生さんに興味しんしんって感じですが、クラスメイトにもまだ打ち解けられてない私がそうなるはずもなく…。
「えーっと。能都さんの席はあそこよ。桜咲さんの横」
あ、あれれ? 隣です? うう、こうなると関わらないわけにもいかないのです……
「よ、よろしくお願いします…」
「よろしくっ!」
フレンドリーな感じで助かります。無邪気な笑顔はキラキラです。まあ、後は他の子に任せても大丈夫だよね。
HRが終わるとすぐにゆゆのところに避難です。私の席の周りはすぐに人でいっぱいになった。でも、そんな転校生にゆゆは興味無さげ。
「すごいねー」
「そうね」
ゆゆのキャラクターがプリントされたシャープペンを机で転がしながら眺めてると、いきなり抱き上げられました。気付けばゆゆのお膝の上です。
「あれ? ゆゆ??」
「転校生なんて、ただ邪魔な虫が増えるだけよ。…答えをもらってないとはいえ、他の人に雪乃を渡すなんて……」
「虫?」
「ええ」
うーん……? 何て言ったのかな。ゆゆが独り言なんて珍しい。
「柚結里さんたちのクラス、転校生が来たらしいわね」
「はい」
放課後。昨日と同じく、鷹音先輩がすでに生徒会室に来ていて飲み物を用意してくれた。
で、結局、授業中は教科書を見せてあげなきゃだったから机をくっつけて、ちょっとだけお話もしてた。クラスのみんなの名前を覚えるのを頑張ってるみたいで、ゆゆのこともいろいろと聞かれた。
「よく話してたんじゃない? 何のことだったの?」
「趣味とか特技なんかかな? ゆゆのことも聞かれたよ。早くみんなのこと覚えたいからいろいろ教えてって言われたから」
「そう。他には?」
「ううん。そのくらいだよ。授業中だけだったし」
「そう」
「どうして?」
「別に」
そっか。私がクラスの人と話すこと、あんまり無いからかな。話してもゆゆと一緒にいる時だし。
「それで、どんな子なの?」
「元気で明るかったですよ。緊張もそんなにせずに話せたから楽でもあったし…」
最初は緊張したし、やっぱりゆゆといる時が一番落ち着くのに変わりは無いんだけど。
「へーえ?」
「小野町さんも大変ね〜」
ニコニコしてお上品にコーヒーを飲む先輩。
と……、
「ゆゆ、怒ってる??」
「そんなことないわ」
そう? 私、何かした?
ゆゆはそういうけど。幼馴染なんだから、そのくらいは分かるよ。私だって。
朝のHRの後の休み時間みたく、お膝の上でギューされました。うぅ……先輩が見てるのに…。なんで?
「そうそう。今日は会長が学園長に昨日の夏休みの件を相談するらしいわ。会議が始まるのはそれからだから、少し遅くなるかもね」
「はやいですね」
「会長さんはいつもそうよ」
通らないといいな……。
「あの会長さんなら、通るまで帰って来そうにないわね」
「ゔ」
ゆゆを見上げると笑ってました。私に言ってるでしょ。 ゆゆ、意地悪なの!
「その通りね。きっと…」
「お? るるが来てないのか。サボりか? 許可、取れたぞ」
「るるはソフトボール部に顔を出してくるらしいですよ。早かったですね」
「そうか。思ったより簡単だった。それに、当初の予定よりも面白くなりそうだ」
お、面白くなるって何……?
会長さんの笑顔が怖いのです…。
「行きたくない…」
「行くわよ、絶対」
ゔー! こうなったらゆゆは私を引きずってでも行くつもりだ…
「仕方ないな。るるが来るまで待つか。それから話そう」




