次男登場★
怒りが全然治まらず、ムカムカしながら廊下を歩いていると・・
「キャロちゃん?」
後ろから名前を呼ばれて思わず立ち止まる。
その声は・・
「鳴様!」
ああ今は鳴がものすごく天使に見える。上下白のラフなスウェット姿も今は余計それを強調させてる。
「様とか付けなくていいよ。」
「えっ・・でも・・」
「いいからいいから」
「じゃあ鳴ちゃんって呼んでいいですか?」
「いいよ。キャロちゃんだけ特別ね」とウインクする。
ヤバい可愛すぎる・・・
ほんと癒されるなーー。
「なんか怒ってるように見えたけど、もしかして響となんかあった?」
「・・・はい。ちょっと喧嘩というか・・」
「そっか、意地悪されちゃったんだね、かわいそうに」
と鳴ちゃんがこっちに近づいて来て
ふわっ 何だろ・・いい香り・・
って、えっ???
い、今あたし鳴ちゃんにハグされてるの??
「よしよし」と頭ポンポンってしてくれて・・。
きゃーーーーーーー!
こ、こんなことがあっていいんですか?!
あたしメイドですよ、ただのメイド!
それも響専用の・・・
ダメだパニック~~!
「ん? 鳴じゃないか・・っておまえ何をしてるんだ?」
と向こうから廊下の角を曲がり人がやってきた。
身長が高くて今時っぽい黒縁メガネをかけた男の人。
あたしに掛けてた腕をゆっくりはずし後ろを振り向く鳴。
「ああ拓兄。今日は家にいたんだ。」
「うん。それよりそちらの女の子は?」
「新しく響の専属メイドになったキャロちゃんだよ。」
「初めまして拓斗様、春風キャロです。よろしくお願いします」
「ああよろしくね」と爽やかな笑顔。
この方が次男の拓斗さんか~!爽やかだなぁ・・
拓斗さんは確かこの4月から大学4回生になるのよね。
拓斗さんの印象は爽やかで優しげで落ち着いている様に感じた。
また下の二人とは全然印象が違うなぁ。
見た目も切れ長な瞳で大人っぽい顔立ちをしている
笑顔がとても爽やかで好青年って感じだ。
「俺の見間違いじゃなければ今抱き合っているように見えたんだが・・・」
あっ・・・
あたしの顔が途端に真っ赤になっていく
見られていたなんて恥ずかしい・・
それ以前に鳴ちゃんにハグされたこと自体顔から火が出そうだけど。
「響にいじめられてへこんでたから慰めていたんだよ。」
それを聞いて拓斗さんは呆れたような表情をした。
「はぁ・・おまえのその誰にでもスキンシップをはかるところは
あまりいいことではないといつも言っているだろう?今まで
何人の女性を勘違いさせて悲しませてきたことか・・」
「しょうがないじゃん。勝手に行動に出ちゃうんだから」
「だからそれが・・」
「もうキャロちゃんの前でお説教はしないでよ。
拓兄はもっと積極的になるべきだよ。あの人にはもう気持ち伝えたの?」
「ば、ばか、ここでその話を・・」と怒る拓斗さんをかわして
「じゃあ~ね~、キャロちゃんもまたね☆」
と鳴ちゃんは笑顔を残し足早に去って行った。
「はぁ~あいつは全く・・。」
「あたしは・・勘違いしたりしないですから、安心してください」
「ああ・・君は何か芯がしっかりしているように見えるな。
兄弟たちといい距離で付き合ってくれると有り難いよ。」
「拓斗さんは優しいんですね。あたしたちが傷つかないように考えてくださってる・・。」
「そんなことはないよ。ただの自己満足みたいなもんだよ。善人ではないのに善人でいようとしているだけさ。」
「・・・・深いですね」
「人はみんな深いものだよ。それじゃ仕事の続き頑張って。またゆっくり話そう。」
と優しい笑顔で去って行く。
うーん・・みんな深いか・・・確かにそうかも。
みんなそれぞれ性格が全然違う。
長男の紫音さんは一体どんな人なのかな。
今から楽しみだ。
さてとお屋敷の掃除、今日も頑張らなくっちゃ!
気付けばさっきのムカムカはいつの間にかなくなっていた。
お屋敷の掃除をしていると、初めて見るメイドさんに出くわした。
「初めまして。4月から響様の専属メイドになった春風キャロといいます。」
「あ・・・初めまして・・拓斗様の専属メイドの静川玲といいます」
消えるような細く小さな声。顔を少し赤くしてうつむいているので照れているように見えた。
もしかして人見知りさんなのかな。
身長も小柄で黒くて肩ぐらいまでありそうな髪をポニーテールにしてる。
まだだいぶ若そう・・・高校生ぐらいに見える。
「拓斗様に先ほど会いまして、爽やかでとても素敵な人ですね。そんな拓斗様の専属なんて少し羨ましい感じもします。」
これは本音だった。叶うなら交換してほしいくらいだわ。
「は・・はい私も拓斗様のお世話ができて嬉しい・・です」
と初めてこっちを見て微笑んだ。
かわいいーー!まさに美少女というやつだ。
目がぱっちりしてて少し潤んでて、唇もふっくらピンク色。
拓斗さん、こういうタイプの女の子が好きなんだろうか・・ってつい思ってしまう。
「玲さんも面接で選ばれたんですよね??」
気になって聞いてみた。
「私は・・違うんです・・私はここの旦那様の知り合いの娘なんです。それで・・」
「そうなんですか。」
これにはびっくりした。みんながみんな面接で採用されてるわけではないんだ。
若いのにここで働いてるのには何か理由がありそうだけど、根掘り葉掘り聞くのは良くないよね。この辺でやめておこう。
「あたしまだ入ったばかりで色々迷惑かけるかもしれないですけどよろしくお願いしますね。
「はい」とまたとびきりかわいい笑顔を見せてくれた。
なんかこのお屋敷にいる人ビジュアルレベル高くない???
なんか引け目を感じてしまいそうになるけど・・
ダメダメ、弱気にばっかりなってちゃダメよね。
あたしだって理由はどうあれ一応選んでもらったんだから。
「あれれ?もしかして新入りさん?」
あっまた初めましてのメイドさんだ!
この人はもしかして・・
「キャロちゃんだよね。凜から聞いてる。あたしは紫音様の専属メイド陽山瑠々(ひやま るる)っていうの。よろしくねー」
わぁ明るい人!空気がいっきに明るくなった。
肩より上の長さのオレンジ色の髪にゆるくパーマをかけてておでこを出していて見た目からも明るい印象を受けた。
「こちらこそよろしくお願いします。」
「うんうん。あなたとはなんか仲良くなれそう!慣れるまで大変だけど頑張ってよね。」
「はい!」
こうしてあたしたちはお互いの自己紹介を終えてまた各々の仕事に戻って行った。
メイドさんたちみんないい人ばかりでほんとよかった・・。
つらいことがあってもいい仲間が居れば乗り越えていけるはず!!
ピロロロロ・・・
ぎくっ
「・・・はい」
「すぐ部屋に来て」
「・・・はい」
乗り越えて・・・いけるはず・・・?