星空マジック☆★
そして次の日。
ここに来てもう4日目だ。
明日には家に帰っちゃうから実質今日がのんびりできる最終日。
楽しい時間ってほんとあっという間。
今日はみんなでバーベキューをしようってことで湖のところで朝からみんなでワイワイやってる。
玲ちゃんと拓斗さんが仲良く具材を切っていて、なんかほほえましく見える。
こんな風に私服で一緒にいるところを見ると、全くメイドとご主人様の関係には見えない。
普通に美男美少女カップルって感じでお似合いだ。
「熱っ!」
しまった。ついよそ見してて、炎でかなり熱くなってる金網に手が触れてしまった。
「バカ、何やってんだよ!・・ほら!」
と隣にいた響がすぐ気付いてくれて、クーラーボックスでギンギンに冷えているペットボトルを手にあててくれた。
はぁ・・冷たい・・
「響、ありがとう!」
「別に。ってか気をつけろよ。さっきからボーっとしやがって」
「うん、ごめん!」
危ない危ない・・手も危なかったけど、あまり二人のことじろじろ見てたら不自然だよね!
内緒なんだから。
そうそうちなみにあたしと響はお肉や野菜を焼く係になっている。
「あたしと響は周りから見たらどんな風に見えるのかな」
「何?いきなり」と響は怪訝な顔であたしを見る。
「今メイドのカッコしてないし、どうなんかなーって」
「そんなんオレに聞かれてもな」
「恋人同士に見えるかな?」
「はぁ?おまえ頭打った?」と目を見開いて言う。
「もー!ちょっと言ってみただけじゃん!」
「ちょっとそこのお二人さん!肉焦げてない?」と向こうで飲み物を用意してる紫音さんが呼びかけるように言ってきた。
あたしたちは顔を見合わし、すぐさま手元の金網を見た。
『あーー!』
とあたしと響の声が重なった。
せっかくの高級肉がぁ・・無残なことに・・。
「おまえのせいだな」としれっとした顔で言う。
「あたしだけのせい?」
「オレは巻き込まれただけだしー」
「そんなのずるいー!」とあたしが文句を言ってると
「こらっまた焦がすつもり?ちゃんと見ててよ!」と鳴ちゃんがあたしの隣にやってきた。
「ごめんなさーい」
あたしはすごくちっちゃくなって謝った。
結局鳴ちゃんに監視されるような形でお肉と野菜を無事に焼いていく。
「兄妹じゃない?」
と鳴ちゃんがあたしたちに言った。
どうやらさっきの話の続きみたい。聞こえてたのか。
「それって当然おれが上だよな?」と俺様目線で言う響。なんだか少し楽しそう。
「そうそう、響が兄ちゃんでキャロは妹♪」
「なんでー!あたしの方が年上だよ?」
それは聞き捨てならないなぁ。
「誰が見てもそう言うと思うよ。特に見た目がね☆」
「ぶーっ」
納得いかなーい!
でも精神面ではあたしの方が上だもんね!
そんな他愛もない話をしてたらどんどん焼きあがってきてみんなに配りに行った。
「おいしい~!」
ほっぺた落ちそう。
「キャロちゃんほんと幸せそうな顔で食べるわね」と凜さんが言う。
「今日はみんなで一緒に作って食べてるから余計おいしくって」
高級食材を使ってるからおいしくないわけがないんだけど、でもそれだけじゃないんだよね。みんなでこうやって一緒にワイワイ食べるから余計おいしく感じられるんだ。
「この別荘生活は楽しかった?」
「はい!もちろん」
あっという間の別荘生活だったけど中身は濃かったなぁ。
中でも一番心に残ってるのはやっぱり響と仲直りできたことかな。
その瞬間またひまわり畑のことが頭に浮かんだ。
ち、違うー!それじゃなくて、仲直りの方だってばー!
とあたしがあたふたしてると、
「これもーらい」
とお皿から海老を誰かが盗った!
そっちを見ると、響がぱくっと海老を口に入れていた。
どきっ
今響の顔を見ると胸がドキドキする・・。
「あー!!海老好きだから最後にとって置いたのに~!!」
「スキを見せるおまえがワリぃんだよ。ってかまだ二本もあるのにけちけちすんなっつーの」
「もー!泥棒~!!」
とあたしが響をポカポカ叩いてると
「あははは。二人ともいつの間にそんなに仲良くなったの?」
と凜さんが微笑みながら言う。
「仲良くなってないですー!」
「仲良くなんかねーよ」
とまたかぶった。
「やっぱり仲いいじゃなーい!さては何かあった?」
そっか凜さんたち女子はあの仲直り事件の時現場にいなかったもんね。
まぁある意味いなくてよかった。けっこう大騒動だったし。
あのとき紫音さんも拓斗さんも鳴ちゃんもあたしと響の為に真剣に動いてくれて嬉しかったなぁ。
そのおかげで仲直りできたようなもんだしね。
そういえばまだお礼言ってないし後で言いに行こうっと。
「何もねーよ。凜の気のせい」とさらっと言って去って行った。
「響様なんか変わったわね。前よりフレンドリーになったというか」
「そうなんですか?」
そうなのかな?
響と接していると変わったというより元々そうだったんじゃないかって思えてくるんだよね。
今回のことで響は自分から壁を作ってたってことも分かったし、それがなくなれば本来の響が見えてくる、そんな気がする。
けど凜さんがそう言うなら、少しは壁壊せたのかもしれないな。
「あなたが響様の専属になってくれてよかったわ」
「そんな風に言ってもらえると嬉しいです」
まだまだ先は長いんだし少しづつでいいから壊せていけたらな。
本当の響をもっと見てみたい。
「キャロ、畔で遊ぼ♪」
とご飯を食べ終えたあたしに鳴ちゃんが声を掛けてきた。
「うん!じゃあちょっと行ってきます」
「はーい、行ってらっしゃい!はぁ・・・青春よねぇ・・♡」
湖の畔の方へ行くと響もいた。しゃがみ込んで手を湖の中につけている。
「響ー冷たい?」
とあたしも隣でしゃがみ込んで聞くと、手に少し水を含ませてあたしのほっぺに触れた。
「こんな感じ」
その行動が意外だったからあたしはとまどいながら
「けっこう冷たいねっ」と言った。
「おれにもそれやって?」と鳴ちゃんが間に入ってくる。
「お望みなら」と響は何か企むようにニッと笑い、
パシャっ
水を多めにすくって鳴ちゃんの顔に思いっきり掛けた!
「わっ!・・・やったなぁ!」
鳴ちゃんも真似をして響に思いっきり掛ける。
きゃーあたしにも水が飛んできた。
もうなりふりかまわずの掛け合いが始まる。
びしょ濡れ上等!
あたしも負けずに二人に掛けまくった。
太陽が湖に反射して水面がキラキラ光ってる。すごく綺麗。
けどそれ以上にあたしには二人の方がまぶしく見えた。
二人とも楽しそうに笑ってる。
なんか絵になる二人だなぁ・・。
二人のキレイな顔した男の子が湖の畔で水遊びだもんね。そりゃ絵になるわぁ。
掛け合いが一段落してあたしたちは地面に座る。
「ねーおれ水もしたたるいい男?」と顔に水をしたたらせた鳴ちゃんが聞いてくる。
「うんうん。二人ともほんとそう!」
「おまえはガキが水遊びした後って感じだな」と俺様目線で言ってくる響。
「もーひどいー!」
「けどいつもよりセクシーだね」
うっ・・鳴ちゃんってばまた小悪魔な目でそんなことを・・
「これ着とけ」
と響が上着に着てた黒と白のチェック柄のシャツを脱いであたしに渡した。
え??なんで??
ふと自分の胸元を見るとあたしのTシャツが水に濡れて透けてる?!
きゃーーーー!恥ずかし過ぎる・・。
「ちぇ、せっかくセクシーだったのにさ」
早く言ってよもう~~~!
はぁ~今日はよく遊んだなぁ・・。
ほんとあっという間だった。
もう夜の十二時。あたしはベッドの上で天井を見つめながら、別荘に来てからのことを色々思い返していた。
そのときかすかに扉が閉まる音を聞いた。
あれ?こんな時間に誰か外に出て行った??
気になって、女子部屋からそっと出ていく。
もうみんな寝てるみたいだから音を立てないよう気をつけた。
あっやっぱり。玄関のドアは鍵がかかっていなかった。誰かが外に出て行ったんだ。
こんな夜遅くに誰が出て行ったんだろう。
あたしも外に出てみた。
わっけっこう気温低いなぁ。夜は昼より涼しいんだ。
街灯とか全然ないからあたりは真っ暗。
けど時間が経つと目が慣れてきて見え始める。
家を出てちょっと前方に人がいるのが見えた。
目を凝らしてみると・・・
ん??もしかしてあの後ろ姿は・・
「響?」と声を掛けると
前方にいる人がこっちを振り返った。
「・・なんだおまえかよ、びっくりさせんなよ!」
やっぱり響だ。驚いた顔してる。
「こんな夜中にどうしたの?眠れないの?」
「いや、わざと。」
「わざと?」
「これがどうしても見たかった」
と響は上を見上げる。
あたしもつられて上を見上げてみた。
「わぁ・・・・・!」
何これ・・・思わず声を失うほどの輝き。
まるで巨大なプラネタリウムにいるみたい。
満点の星空、空全体を星がうめ尽くしてるみたいに見える。
こんな星空見たの初めて。
都会だとビルや建物で夜空が切り取られてるからまずこんな風に空全体を見ることなんて出来ない。星だってかすかにしか見えないし。
「最高に綺麗だね」
「だろ?」
あれれ?なんか涙が出てきちゃった。
あまりに感動しちゃって。
響にバレないようにこそっと拭き取る。
「この星空の下にいるとさ、今はオレだけがあの星全部に見守られてるような気分になるんだ。」星空を見上げたまま響が言う。
「それって贅沢だね」
「かなりな」
「けど今はあたしもいるよ?」
「じゃ、今はオレ達二人だけがあの星全部に見守られてる」
「ってことはあの星は今はあたし達だけのもの?」
「そういうこと」
響はそう言って草原の中に仰向けに寝転んだ。
あたしは隣に三角座りで座る。
そしてしばらく黙って夜空を見つめる。
「あの星の中にきっと居る」
つぶやくように言う響。
その言葉の意味をすぐ悟る。
「うん・・ちゃんと響のこと見守ってくれてるよ」
「うん」
あっ・・響の手があたしの手の上に重なった。
しばらく静寂が訪れる。
こうしてると今この世界にあたしたち二人だけのような気になってくる。
「少しずつだけど・・ちゃんと立ち直っていくから」
「うん・・」
「だから・・オレの傍にいて」
えっ・・・なんか今響、すごく素直に見えるんだけど、気のせい?
どうしよう、かわいくてちょっときゅんってしちゃうかも・・。
「うん、いるよ」
「ありがとう」
と安心した表情をする。
ほんとどうしちゃったの響??
いつもと全然違うんですけど?!
重なった手は今はぎゅっと強く握られてて、とまどっちゃうし、困るよ、急にそんな態度取られたら・・。
またパニックになるよ!
どきどきどき・・・
星空マジックなんだろうか。いつもとは違う日常。
今起こってること全部幻・・だったりして。
だけどこの温もりだけはリアルだし、リアルであってほしいと強く願う自分がいた。