表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/50

二人だけの秘密

「ね~今日は二人でどこ行ってたのさ?」

と鳴ちゃんが配達してもらった海鮮丼をほおばりながらあたしたちに向かって言った。心なしか拗ねてるような顔をしてる。


紅咲家御用達の料理屋さんがあるらしく、毎年そこに頼んで配達してもらうんだって。


今、鳴ちゃんと紫音さんと瑠々ちゃん、そしてあたしと響が一緒に夕ご飯を食べている。

他のみんなは食べて帰るって言っててまだ帰って来てない。


「おまえには関係ねー」と響はそしらぬ顔で言い放つ。


「つめたー。俺様復活してるし。」


「オレは元からこうだし」


「はいはい。・・ねーキャロ、明日はおれと一緒に回ろうね!」

と天使スマイル。

「はい」

とあたしはその笑顔につられて自然に口が動いていた。


はっ!!


横からなんか冷たい視線が・・・


怖いからそっちは見ないでおこう。


「やった☆どこ行こっかな~♪」とほおづえをついてうきうきしてる。

かわいいなー鳴ちゃんは。



「僕は明日ゴルフでもしに行こうかなぁ」と紫苑さんがつぶやいた。

そういえばこの近くにゴルフ場あるんだよね。

「じじくさ~」と瑠々ちゃんが即突っ込む。


「何言ってんの。今やゴルフは若者の遊びだよ。瑠々も一緒にどう?」

「だめー明日は凜さんと買い物行くんだから。」

「なんだー残念。僕が手取り足取り教えてあげようと思ってたのに」

「このエロじじい!」

と紫音さんの頭をぱこっと叩いた。


「あははは」

あたしは思わず笑ってしまった。このコンビ面白いー!

まるで漫才見てるみたい。ほんっと息ぴったりだな。


そんなこんなで楽しい夕食の時間を過ごし、おのおの就寝の準備をして行った。


女子用の部屋にはベッドが5つあって、こんな風に修学旅行みたいに女子が集まって寝ることってそうないから、みんなここに来てけっこう喋るんだよね。あたしも普段こんな機会ないから嬉しくてここぞとばかりに色々話しちゃう。


今日もガールズトークが始まった。今日のお題は何だろう?

昨日は改めて自己紹介みたいな感じだったんだよね。



「キャロってさ、モテモテだよね~」と瑠々ちゃん。


「へ??」今日は予想外な瑠々ちゃんの言葉から始まった。


「だってねぇ・・」と瑠々ちゃんが他の女子を見渡すとみんなうんうんとうなづいている。


「どこが???全然だよー」


「うわぁ!にぶっ・・まさかわざとじゃないよね??」


ぽかーん・・???


「こりゃ筋金入りだわ」と呆れた口調で言う。


「まぁまぁそこがキャロちゃんのいいところよ。鈍感でトロくさくて」

と凜さんが入って来た。


「・・・あたし今、目の前で堂々と悪口言われてますよね・・?」

じーっと凜さんたちを見つめると二人はあたふたして

「褒め言葉!」と苦しい言い訳をした。



「で、キャロはどっちが好きなの?」まだまだ瑠々ちゃんの尋問は続く。


「どっちってどっち?」


「だからー響と鳴だよ!」


「えっ・・・そんな好きとかあんまり考えたこと・・」


「じゃあどちらの方といるとドキドキしますか?」と珍しく玲ちゃんが会話に入ってきた。だいたい玲ちゃんと可憐さんはいつも聞く側なんだよね。


ドキドキか・・。ドキドキならいつもさせられっぱなしだけど・・


あたしはふいに今日のひまわり畑のことを思い出してしまった。


かぁぁぁぁぁ・・・


「どうされたんですの?お顔が真っ赤!」と可憐さんが驚いて言う。


「あー!これは何かドキドキするようなことがあったんだな?どっちと?ほらキャロ言っちゃいなよ」瑠々ちゃんってばテンション上がり過ぎ!

他の女子も何かワクワクするような目でこっちを見る。


「ないない!何もないから!」


言えるわけない。思い出しただけでこんな状態になっちゃうのに口に出したらほんとに熱くなりすぎて蒸発しちゃうよ!


あたしの必死の抵抗にやっと瑠々ちゃんたちは聞き出すのをあきらめてくれた。


「まぁまぁキャロちゃんをいじるのはこれくらいにして今日はもう寝ましょうか。」と凜さんがまとめてくれて、電気を消し今日のガールズトーク会は終了した。

はぁ・・なんか変な疲れが出たよ。



あたしはまだ冷めやらない体でまた思い出していた。

あれは一体なんだったんだろうって・・。

何か夢でも見たような不思議な感覚。

だけど・・響の体温はいまでもあたしに残ってる。


あの後響は特に普通で、あたしだけがとまどってる感じだった。


きっと深い意味はないんだよね。鳴ちゃんがあたしをからかってハグするのと同じような感覚に違いない。

だからこんなことずっと気にしてたらバカみたいだ。

うん!もう気にしない。


さっさと寝ようっと!明日は鳴ちゃんとお出かけだ☆




そして翌日。


「う~ん!ほんっとここって時間の流れがゆっくりだな」


今日は鳴ちゃんのお気に入りの場所に連れて来てもらってる。


小高い丘の上でピクニックシートを敷いて、あたしたちは今ピクニック中。目の前に広がるのは壮大な大地。大草原の中に一本だけぽつんと大きな木が立っていて、まるでそこが世界の中心なんじゃないかと思えてくる。


鳴ちゃんがうーんと背伸びをして腕を頭の後ろに組んで寝転ぶ。


「キャロ、お昼寝しよっか」

と隣に座ってるあたしに話し掛ける。

「はい。確かに眠くなってきました・・。」


心地いい気温が妙に眠気を誘ってきた。

なのであたしもゆっくり寝転んでみた。


風がそよそよあたしの顔をくすぐっていく。

なんて穏やかで癒されるひと時なんだろう・・。


目を閉じたままごろんと横になりそっと目を開けると、目の前に鳴ちゃんの顔があって思いっきり目が合った!びっくりしたぁ・・まさかこっちを見てるなんて・・。


「キャロってさ・・警戒心ゼロだね、いつも」鳴ちゃんは目をそらさずそのままの姿勢で言う。

キレイでぱっちりした目にはあたしが映ってる。


「え・・だって警戒する必要なんてどこにも・・」


「おれだって男だよ?」


どきっ


あたしはなんだか急にどぎまぎしてきて思わず体の向きを変えた。



「あれ??」


「ん?どうしたの?」


鳴ちゃんはいつの間にか体を起こして遠くを見てる。


「あれって拓兄と玲ちゃんじゃない?」


えっ?拓斗さんと玲ちゃん??


あたしも体を起こしてそっちを見ると、さっき眺めてた一本だけ立ってる木のところに誰かいる。

よく目を凝らすと確かに拓斗さんと玲ちゃんだ。


「奇遇ですね。あの二人は仲がいいんだ・・。」


「仲いいっていうか・・」


しばらく二人のことを眺めてたら・・・


「あっ!」

あたしは思わず声が出てしまった。


だって二人今、キスしたんだもん!


なんか見てはいけないものを見てしまった気分。

メイドとご主人様が・・・きゃー!


鳴ちゃんは二人を見ながら

「拓兄ついに動いたんだ・・」とつぶやくように言った。


「ついに?」


「もうずっと前から拓兄は玲ちゃんのこと想っていたから」


「そうなんだ・・じゃあよかったね」


あたしはいつの間にか鳴ちゃんにタメ口になってた。もういいや。鳴ちゃんなら怒らないだろうし。


「今見たことは二人だけの秘密だよ」

となんとなくイタズラっぽい表情で言ってくる。

「う、うん!誰にも言わない」とあたしは深く何度もうなづいた。

ってか言えるわけないよ~!



「ねーもう一つ秘密作る?」


ん???


鳴ちゃん??なんだろいつもと雰囲気が違う。ちょっと妖しげで魅惑的な雰囲気・・。

ま、まさか小悪魔鳴ちゃんが降臨した???


鳴ちゃんがゆっくり顔を近づけてくる。


きゃわわわ・・パニック~~!


「な、鳴ちゃん!」


イキナリどうしちゃったのー??

どこで小悪魔スイッチ入ったんだろ?!


あたしはだんだん後ろにのけぞるような形になり、ついにシートの上に頭をつけた。あたしの頭の横に手をついて、鳴ちゃんは近づくのをやめない。

これって迫られてるの?そうなの??どうなの??



どきどきどき・・



もう目の前に鳴ちゃんの顔が迫る。あたしに鳴ちゃんの影が覆うぐらい近い。


鳴ちゃんストップー!って言いかけた瞬間、



ッチュ♡



ん?今あたしの目元に・・・キスした・・?


ぽかんとした顔で鳴ちゃんの顔を見ると

「びっくりした?」とイタズラっぽく舌を出した。


「!!」

またからかわれたー!


「びっくりしたよ~!!もーー!」


起き上がって鳴ちゃんをポカポカ叩く。


「わぁキャロ痛いって~あははは」



『どちらの方といるときドキドキしますか?』

ふいに玲ちゃんの言葉がリフレインした。


あたしは響にも鳴ちゃんにもドキドキさせられっぱなしだよ~!





その後鳴ちゃんと有名なパンケーキカフェに行き、熱々のとろけるチーズの入ったパンケーキを食べて二人とも幸せ気分で別荘に戻った。


今日も拓斗さんと玲ちゃんは夕食をパス。


あの後どこかに二人で食べに行ったんだろうか。


それにしても驚いたな・・。まさかあの二人が付き合ってるなんて。

なんとなくメイドとご主人様の間に恋愛っていうものはタブーというかありえないのかなって思っていたけどそうでもないんだ。


よく考えたら一番近くにいる異性だもんね。

逆に言うとむしろ恋愛関係になりやすい?


ふと響の方に目をやった。

あたしの斜め前にいてて夕食の海老と帆立のパスタを食べている。

あたしの視線に気づいて『何だよ?』とムッとした顔をしてる。


いやいや、ないない。

まず響があたしのこと女としてみてないもん。

いつも扱いひどいしねー。





その夜、遅くに戻った玲ちゃんから呼び出しを受けて、裏の方に二人で出た。まさか玲ちゃん・・


「今日・・キャロさんあたしたちの近くにいてましたよね?」


どきーん!

気付いてたんだ?!


「う、うん」


「何か・・見ました?」と大きな目でこっちを見つめてくる。


あたしは不自然に首を横に振り

「ううん」と答えた。


「クスっ・・・キャロさんは正直な方ですね。ほんとうのこと言ってくれてかまいませんよ。」と微笑みながら言う。


はぁ・・あたしってほんと隠し事できないタイプだよなぁ。

年下の玲ちゃんに見抜かれてるし。悲し~~。


「あっ・・・えと・・見ちゃいました」


「やっぱり・・恥ずかしいところをお見せしました。」

と玲ちゃんは途端に真っ赤になってうつむく。


「拓斗さんと付き合ってたんだね。いつから・・って聞いてもいい?」


「はい。一か月前からです。拓斗さんがずっと言いたかったことがあるって、あたしの誕生日に打ち明けてくれて・・」と照れながら嬉しそうに話す。


きゃー!拓斗さん草食系に見えてけっこうやるな。


「けど悩みました。あたしはメイドですし、恐れ多いなって」


そうだよね・・。あたしたちメイドの立場から言うとそういう風に思っちゃうよね。


「でも拓斗さんは、仕事の関係と恋愛は別だって。だから気にするなって、言ってくれて、あたしも自分の気持ちに正直になる決心ができたんです。」


さすが拓斗さん。言葉に説得力があるよ。


「よかったね!好きな人と想いが通じ合えて」

「はい」と顔を赤くしながら幸せそうに笑う。


かわいい~!!これぞ恋する女の子って感じ。そういえば今日の玲ちゃんのカッコも超かわいくて。サーモンピンクのAラインのワンピースに髪を下ろしててまるでどこかのお嬢様みたい。


「周りには恥ずかしいので内緒にしててくださいね?」

「了解!」

そうしてあたしたちは家に戻ろうと歩き始めた。


「ところでキャロさんはどうなんですか?」


「え?」


「響さんと・・あるいは鳴さんと・・」


「な、何もないよ?」


「そうですか・・でもいずれ決着をつけるときが来るかもしれませんね」

と意味深な言葉を独り言のように言って家の中へ戻って行った。


「決着・・?」

あたしは一人立ち止まってぽかんとしてる。


あたしには玲ちゃんの言っている意味が理解できなかった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ