第01話『GSチップ』
どうも皆さん、ベルトです。
1次創作、ゼロからの設定は苦労しました。
プロローグの簡単な内容を具体的に書きました。もちろん、戦闘ありです。
温かい目で読んでいただけると嬉しいです。
それでは、本編にどうぞ!!
時は10分ほど、さかのぼる。
「ふわぁ〜〜〜、練習開始!!」
黒髪が耳に当たる程度の少年、上野進也15歳。祖父から貰ったハーモニカを首にかけている。空き地の土管の上で、青空を見ながら寝転んでいた。
『♪♪〜〜♪〜♪♪♪』
土管に座り、ハーモニカを唇に当てて、奏で始めた。
『♪♪♪〜〜♪〜〜〜♪♪〜〜』
「(良し、後少し……!!)」
進也は、とある曲の練習をしていた。家にある楽譜の最後の1曲だ。
『♪♪〜〜♪♪〜♪〜〜××〜〜??〜◆◆◆◆◆』
「ああーーーっ、惜しい!!」
進也は、愛用のハーモニカを吹き終わったが、最後の曲を吹けずに残念がっている。祖父や両親は家に居らず、生活資金だけは毎月送ってくる。
ゴーーーン、ゴーーーン、ゴーーーン
「まいっか、また挑戦しよっと。お昼か、今日も天気が良いな」
この街のシンボルである『バランの時計塔』が12時を知らせた。時間によって鳴り響くメロディが異なる。腕時計や携帯電話に時間を知る前は、人々から時間を知らせる建物であった。街の中心辺りに建てられ、この街の建物の中で一番古くて大きい。見学ガイドツアーなど、観光客が訪れる。
【暗闇の部屋】
「時は満ちた。忌まわしき者どもに恐怖を感じさせろ」
どこかの暗い空間、たくさんの黒服を着た人間に向かって、話し声が聞こえる。巨大モニターに膝元で黒猫を撫でる姿が映った。ただし、顔は映らず、黒猫を抱く手と膝元だけが映し出されている。
「いでよ、GSチップよ。我々の大いなる野望のために、全ての人間に渡せ。諸君の健闘を祈る!!」
「「「ウオオオオォォォォォーーーーッ!!」」」
謎の人間の演説を大勢の人間が聞くなか、隣にあるチップ工場で、ベルトコンベアーに大量のチップが流されていくのであった。
【里美の家】
「そろそろ出かけます」
『里美ちゃん、始業式で会おうね!!』
「はい、理名ちゃん」
里美と呼ばれた少女は通話を終え、ピンク色の携帯電話をオフにした。里美は、腰の近くまである黒髪ストレートヘアーで、小顔をした中々の美少女である。電話の相手の理名とは、里美の親友で風花中学校から一緒の活発な女の子である。
「里美、おばあちゃんとの約束の時間よーーー」
「はーーーい」
里美の祖母は、風花高校の理事長である。今日は、朝早くから仕事で高校に出掛けており、後から里美が行く予定であった。部屋着から今度から行く高校の制服に着替えてきた。
「里美に渡したい物があるらしいぞ」
「気をつけてね」
里美の父親と母親が、出かける里美を心配してくれる。父親はちょっぴり厳しいけど優しく、母親は見守ってくれる里美の大切な家族だ。
「お父さん、お母さん、いってきます」
「「いってらっしゃい」」
【商店街】
腰の近くまである黒髪ストレートヘアーが特徴の里美は、祖母から連絡があって、風花高校に向かって走っていた。ブレザーの服装を着て、左胸のポケットには赤い風車の紋章が特徴的だ。小さなネクタイをしている。
「イッテぇ〜〜〜〜!?」
「あっ、ごめんなさい!!」
里美は、走っている途中に軽く男に、ぶつかってしまった。しかし、男はわざとらしそうに痛がっている。
「待ちな!! 俺の右腕が折れちゃったよ。治療費として、お嬢ちゃんのGSチップを渡しな」
「だ、だめです。おばあちゃんから貰った大切な物です」
歪んだ表情をする男は、急に脅してきた。そのまま里美の肩に掴んだ。
「うるせぇな、とっとと渡せ!!」
「きゃあああっ!!」
「追いかけっこは、嫌いじゃないぜ」
里美は、男が怖くなって逃げ出した。追ってくる男。そして、現在に至る。
「はぁ……はぁ……はぁ……きゃっ!?」
ビルの路地裏に逃げ込んだ里美だったが、積まれている段ボールに足を捕らえて、つまずいてしまった。
「逃がさないぜ?」
男は、長ズボンのポケットから『チップ』を取り出した。それを左腕にある腕時計に差し込んだ。
『レディ?』
「認証、スパイダー!!」
『アニマル・チップ チェックイン』
紫色の波動を纏った男の姿は、灰色の蜘蛛に変化した。全身が覆われて、6本の足を持っている。動物に変化できるアニマル・チップは、パワータイプだ。
「ひゃあぁぁ……」
「悪いね、お嬢ちゃん。キミが持っている『チップ』を渡してもらおうか?」
この世の中は、ガイアと呼ばれる新しいエネルギーシステムによって、大幅な発展を遂げた。その中で、ガイア・エネルギーを人体に利用できないかと考えた科学者は、チップに納めることで成功する。
「誰か……助けて……」
それが、GSチップだ。良い心を持った人間ならば、良いことに。しかし、悪い心を持った人間が、悪事に利用しているのだ。
「その顔、最高だね。もっと見せろ!!」
「きゃっ!! 誰か……助けて、ください……!!」
里美は倒れた衝撃で、右腕から血が少し流れている。恐怖で自身が持っている『アビリティ・チップ』を使って守ることすら忘れていた。まさに絶体絶命であった。
【スーパーマーケット】
「いらっしゃいませ〜〜〜」
「今日の昼飯は、このくらいかな」
スーパーで買い物をしている進也。GSチップは、身分証明や予め入れておいたお金を使用することが出来る便利な電子機器だ。
「ありがとうございました〜〜〜」
スーパーから出てきた進也。すると、向こう側の道路で、女の子が男に追われている。女の子の必死な様子に、ただ事では無いと感じた。
「あれは、まさか……!!」
その様子を見ていた進也。男が腕時計を持って『アニマル・チップ』を使って変化した。進也は、急いで追いかけた。
【路地裏】
「さっさと、よこせ!! グガアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!」
「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」
悲鳴をあげる里美。迫ってくる巨大クモの足が、里美を捕らえたかに見えた。
「危ない!!」
「…………えっ? きゃっ!!」
全力疾走して、倒れている里美をお姫様抱っこで持ち上げる。巨大クモの攻撃が、進也たちが居ていた場所に直撃して、コンクリートの地面が穴だらけになった。
「大丈夫?」
「あ、ありがとうございます……」
進也は、里美を運びながらビルの物陰に隠れた。助けた里美を見た。一方、里美は戸惑っていた。
「あ、あの……」
里美が、襲われているところを進也が助けた。里美の持っているGSチップは何とか無事だ。
「事情は後で聞くよ。とにかく今は逃げよう!! ポリスが来るまで!!」
「は、はい……!!」
「そうは、させねえよ!!」
進也は、里美を連れて路地裏を出ようとした。しかし、クモに邪魔されて、逃げ道を塞がれた。上から見下ろすクモに、進也は質問した。
「お前『チッパー』か!?」
「だったら何だ。このチップは、集めるほど強力なパワーが得られることは常識だ。お嬢ちゃんのチップは、俺にこそ相応しい」
GSチップで起動する怪物。チッパーとは、チップを使って戦う人間のことである。
「チップは、平和に楽しく使うものだ。女の子を傷つけるのは許さない!! 行くよ、エターナル!!」
進也は、男と同じように『チップ』を取り出して、左腕に着けてある腕時計に差し込んだ。
『レディ?』
「認証、エターナル!!」
『アクション・チップ チェックイン』
腕時計から電子音声が鳴り始める。白い波動を纏った進也の姿は、クモのように身体全てが変化せずに、顔と腕と足の一部を白い鎧に包まれた。背中には黒いマントを着ている。
「さあ、お前に罰を与えよう!!」
進也が決め台詞を叫ぶなか、その姿を見た男は、ニヤリと笑った。
「珍しいスピードタイプか。さらにマント付き、これはレア物!! よこせ!!」
「そうはいかない、これは気に入っているからね。行くぞ!!」
アニマル・チップとは別のチップであるアクション・チップを使って戦う進也。チップには3種類があって、人それぞれである。
「おりゃあああ!!」
「ぐわっ!!」
巨大クモは、進也に蹴りこんだ。素早く避ける進也だが、6本の足が進也の反撃を拒む。
「なかなか危ないな、下がっていてね」
「は、はい!!」
後ろにいる里美を心配しながら、相手の目の前で回転して、マントで軌道を隠した白いエネルギーを纏った右腕で殴った。
「はあぁぁ!!」
「ぐわっ!?」
ぶっ飛んでいく巨大クモを追いかけるためにビルの壁を蹴り、マントで身体を覆い尽くた。敵に自分の攻撃を分からなくするのだ。
「(糸が厄介だ、このチップの出番だ)」
『サブ・チップ エッジ』
腕時計にチップを差し込んで、再び電子音声が鳴った。マントの中で、右腕を先が鋭いエッジに変えた。サブ・チップは、メイン・チップの3種類『アニマル・アクション・アビリティ』と比べると、一部分のみ発動。そして、攻撃力は小さいなど初心者でも使いやすい。
「よっと」
「くらええぇぇ!!」
体勢を整えた巨大クモは、白い糸を吐き、周りの空中に小型クモを大量に出現させて、進也に向けて発射した。
「せやああぁ!!」
右腕のエッジは、青いエネルギー刃を飛ばすことが出来る。飛んでくる小型クモを処理しながら壁を走っていく。
「コイツ!!」
「ゲージMAX、覚悟しろ!!」
戦いを続けていると、一定のエネルギーが溜まって、強力な技が出来る。GSチップを差し込んである左腕に着けてある腕時計の赤いボタンを押した。
『ワイルドチャージ!!』
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーっ!!」
腕時計から電子音声が鳴り響き、左足をバネにして巨大クモに向かって跳んだ。身体を空中で左に、ひねりながら白いエネルギーを右足に纏う。
「ブラスタァァァァァーーーーーキック!!」
「うわあああああああぁぁぁーーーーー!?」
巨大クモの腹に直撃した右足から進也の身体の周りに、必殺技の蹴り『ブラスターキック』の軌道の白い渦が見える。これは、右足の太ももに取り付けられた『ブラスター装置』の噴射力によって加速した証拠だ。
「はっ!!」
進也は、蹴りこんだパワーを利用して、バク宙のように後ろに戻った。
「ぐわああああぁぁぁぁぁぁ!!」
背を向けた進也の背後で、巨大クモは悲鳴を上げながら爆発した。男の腕時計から、GSチップが強制的に排出した。
『アニマル・チップ チェックアウト』
『アクション・チップ チェックアウト』
腕時計からチップを外して、武装を解除した進也。腕時計から終了の電子音声が鳴った。戦いを見終えた里美が歩いてきた。
「す、すごいです……」
「アニマル・チップ回収っと。あとは『ガイア・ポリス』が来るのを待とうね」
里美は、今の戦いに驚いていた。進也の動き方に強く感動した。ちなみにガイア・ポリスとは、悪事を行うチッパーなどを取り締まる警察のことである。
「あ、ありがとうございました。わたし、松下里美と言います」
「おれは、上野進也。ポリスに事情を話したら、帰るからね」
進也は、駆けつけて来たガイア・ポリスに事情を説明した。やがて、アニマル・チップを使用した男は、パトカーに連れて行かれた。その様子を見終えた進也は、笑顔で左手を振りながら去って行った。
「松下さん、じゃあね!!」
「あっ……、はい!!」
里美は、今度会ったときに必ずお礼をしようと思いながら、祖母の元に向かうのであった。
いかがでしたか?
バトルは、こんな感じです。
チップ・システムのイメージは、猫舌で灰色の狼に変身する主役ライダーです。
次回は、風花高校の入学式で、キャラクターたちが増えていきます。お楽しみに。