第11話『風花高校の生徒会長』9/9修正
どうも皆さん、ベルトです。
1ヶ月振りの更新です。
前半は説明、後半は特訓です。先生キャラクターが増えました。
2012年9月8日(土)、海王様のご指摘によって修正しました。
それでは、本編にどうぞ!!
【風花高校 職員室】
「皆の衆、集まってくれてありがとうのぅ」
朝、理事長の松下徹子は、先生たちを集めていた。皆それぞれ専用の机の椅子に座っている。そして全員が集まったところで、1年E組の担任である総司が立ち上がり、ディスクを入れてテレビを操作した。
「まずは、この映像を見てくれ」
《疾風ブラスターキック!!》
テレビに映ったのは、上野進也がA組との戦闘授業で、最後に見せた松下里美のサイクロン・チップを用いた同時発動だ。
「これは……」
「皆の衆、これを見てどう思ったか意見を聞かせてほしいのじゃ」
「驚いた。3年生の火渡優也の他にもGSチップ同時使用が出来た生徒がいたとはな」
真剣な眼差しで映像を見ていた徹子は皆の意見を求めている。2年生担当の才牙空は、進也と会話したことは無いが、格闘場で見かけて知っていたので2つの意味で驚いていた。
「映像に映っているのは、俺の担当する生徒だ。名前は上野進也、Eクラスにしては成績も態度も良い」
「おいおい、自分のクラス自慢かよ。E(良い)だけにか?」
総司の説明に食い付いたのは、3年生担当の吉澤テルキ(よしざわ テルキ)だ。総司とは水と油のように、あまり仲が良くない。
「つまらん、さっさと質問に答えろ」
「はいはい、相変わらず面白みが無いなっと。理事長、松下里美のチップは、26個しか無いエクストラ・チップでしょう?」
「良く分かったのぅ、先生。サイクロンはアビリティ・チップではあるが、エクストラ・チップでもあるのじゃ」
総司はテルキの言葉を無視して、答えを求めている。そんな総司を同じように無視したテルキは、徹子にたった26個しかない特殊なチップ、エクストラ・チップであることを見抜き指摘する。徹子は、それをあっさりと肯定するのであった。
「全く、理事長は……孫には甘いな」
「瀬島嵐のチップも同様だな。必殺技の電子音声が変わっている」
《『エクストラ・ワイルドチャージ!!』》
総司は徹子の様子を見て呆れている。そんななか、空は映像を巻き戻して何度も見ていた。進也の対戦相手であった瀬島嵐のGFウォッチの電子音声の違いに気付く。
「がっはっは。問題は、何故エクストラ・チップであるサイクロンが、エターナルと共鳴したかだ」
「エターナルも、エクストラ・チップでは?」
風花高校のGSチップ担当の高橋宗之助は、別の角度から見ていた。エターナルとサイクロン、何故タイプも能力も違うチップが共鳴、したのか不思議であった。総司の疑問に宗之助は答える。
「確かに可能性はあるな。生徒のチップを全て把握はしておらんし、GSチップはまだ完全には解明されておらん。GFウォッチを改造しない限り、あんな共鳴は起こるはずが無い」
「それなら、上野進也のは改造したGFウォッチでは?」
「それもあり得ない。生徒たちが使っているのは、長谷川コーポレーションと共同で造り上げた我が校専用のGFウォッチだ」
GSチップを読み取り、人間の身体にGSアーマーと呼ばれる鎧を装着できるのがGFウォッチの最大の特徴である。このGFウォッチを改造すれば、同時発動できる可能性はある。次々と推測が出るなか、また別の角度で質問する先生がいた。
「この子、身体に影響は? 3年生の火渡優也は、ガイア・エネルギーが膨大すぎて、いつも倒れて保健室に来るからね」
「がっはっは、映像を見ておる限り、右足だけにエネルギーを集めている様だから、さほどダメージは来ないはず。この戦法を考えたのは悪くない」
生徒たちの健康管理を勤める保健室の後藤ちあき(ごとう ちあき)だ。彼女は、進也の身体に異常が無いかを考えていた。火渡優也は、同時発動を身体全体にするため、体力の消費が激しいのだ。心配するちあきに対して、宗之助は身体に異常を及ぼしていないと伝える。
「同時使用後、しばらく観察していたが、特に授業を休むなど無い。それに上野進也なら自己申告してくるからな」
「あら珍しい。中居先生が生徒を褒めるなんて」
「明日は、雪が降ってくるか?」
総司は、進也の授業風景などを見ていた。進也を褒める総司に対して、ちあきとテルキが珍しい物を見て笑っている。
「テルキ……お前だけ、氷河期に変えてやろうか?」
「何で僕だけなんだ、差別だろ? そっちが氷河期なら、こっちは灼熱地獄に変えてやろうか?」
総司とテルキが睨み合っている。この光景は、職員室では珍しくないため、他の先生たちは見慣れていた。
「そこまで。中居先生も吉澤先生も落ち着くのじゃ。さて、上野進也くんのお話は、ここまでじゃ。今から本題に入る」
「今のが本題じゃ無かった……どういうことですか? 理事長」
「バランの遺産である伝説の武具の1つが今朝、明暗遺跡から消滅した」
「「「「「 !? 」」」」」
「実はのぅ……――――――――――」
この場にいる全員に緊張が走った。バランの遺産の事は、かなりのトップシークレットである。1年生担当の中居総司、2年生担当の才牙空、3年生担当の吉澤テルキ、GSチップ担当の高橋宗之助、保健室の後藤ちあき、そして理事長の松下徹子は、数十分間で話し合い解散するのであった。
【格闘場】
「今日もよろしくね、ロボットさん」
『今回からアラームを着けました。これで前回のように遅刻ギリギリは大丈夫です』
風花高校の職員室で『バランの遺産』について先生たちが話し合っていた同じころ、進也は何時ものようにGSロボットとの戦闘訓練を始めようとしていた。GSロボットは、前回の反省を生かして予定の時間になったら音楽が流れるアラーム機能を用意した。普段は、授業終わりに使用するものである。
「ありがとう、それじゃあ始めよっか」
『はい……おや、松下サマに他の皆さま』
「えっ?」
「上野くん、やっと見つけました」
GSアーマーを装着した進也は、GSロボットとの間合いを開けて戦う準備をしていた。GSロボットも構えたところ、ふと入ってくる人間に気付いた。そこに現われたのは、里美たちだった。
「松下さん?」
「進也、たまに遅れる理由はこういうことね」
「GSロボットと特訓っスね」
「1人だけ強くなるなんてズルいぞ!!」
「………流石」
感心する理名、三郎、公平、優奈が答えるなか、里美は驚くことを言うのであった。
「上野くん……わたしも参加しても良いですか……?」
「里美ちゃん!?」
「なんで、また」
「わたし、強くなりたいです……。上野くんの足手まといは、もう嫌なんです……。わたしも一緒に戦いたいのです!!」
理名が驚いている。里美は自分から戦闘を進める女の子ではないと知っていた。だけど、進也との出会いから里美は変わった。そんな、里美の真剣な眼差しを見て進也は答えた。
「う〜〜ん。分かった、協力するね」
「進也!?」
「ありがとうございます!!」
「それじゃあ、始めよっかロボットさん」
『了解シマシタ』
あっさりと里美の願いを了承した進也。里美がお礼を言い、理名は驚くなか、GSロボットと相談をし始めた。
「まずは、松下さんが強くなる方法か」
『1ツハ、進也サマノ援護ヲ鍛エルコトデス。ツマリ、サポート役デス』
「それは良いな。進也なら、瀬島ちゃんと朝月と引き分けたくらいだしな」
GSロボットの提案はサポート役だ。公平の言う通り、進也の実力はA組にも負けてはいない。しかし、進也と里美は違う意見を出した。
「う〜ん、それは松下さんが本当に強くなるっていう意味とは離れちゃうね」
「そうです、ロボットさん、鈴木さん。わたしは、1対1でも勝ちたいのです」
『………モウ1ツ、アリマスケド、オススメ出来マセン………』
確かに進也と里美の言う通り、里美の実力が上がるとは限らない。GSロボットは言いたくないようで、小言で話し始めた。
「大丈夫です。教えてください、ロボットさん!!」
『里美サマハ、進也サマト比ベテ戦闘ノ経験ガ少ナイタメ、力ガアリマセン。ナノデ、一点集中型ガ良イデス』
「つまり、フルパワーで突撃する神風特攻っスか」
『ハイ。全テノエネルギーヲ一撃ニ込メル自己犠牲ノ技ナノデ相手ヲ倒セナケレバ、間違イナク命ノ保証ハアリマセン』
「はい……、分かりました……ちょっと怖いですね」
里美は、GSロボットの説明に恐怖心が芽生えてくる。いくら戦闘授業が安全とはいえ、学校から出るとチップを悪用した犯罪がある。いつの間にか身体が震えていたらしく、ぽむっと右肩を叩いてくれる進也がいた。
「大丈夫だよ、おれが一緒にいるから。松下さんの手伝いをするのが、パートナーとしての役目だよ。1人で駄目なら、2人で頑張ろう」
「上野くん……ありがとうございます」
進也は、里美を励まそうと優しい言葉を掛ける。実際に戦う時は色んなことが起こる。自分たちの想像を越えた状況が待っているだろう。自分自身にも言っている進也であった。
「しばらくは、進也が里美ちゃんのサポート役ね」
「上手くいけば、一撃必殺になるっス!!」
「まさに必殺技だな!!」
理名、三郎、公平は進也がサポート役に回るのは賛成している。里美の想いは、みんなに伝わっているらしく、今まで黙っていた優奈が語りだした。
「………心配、里美さんには戦ってほしくない……」
「優奈ちゃん、ありがとうございます。でも、わたし頑張ってみたいんです!!」
「………そう……ですか」
里美の雰囲気に優奈は黙った。自分は『とある会社』の命令に従っている。自分自身の立場が変わっていたら、喜んで協力したいと考えてしまう。話すことが出来ず、見守るしか無かった。
『松下サマ、練習アルノミデス』
「その前にロボットさんの名前を考えましょうか」
『名前? ワタクシハ、ロボットデス』
GSロボットは名前を決めるのかが分からない。自身は1年E組のロボット。それだけの存在なのだ。
「ロボットさん、そんな悲しいこと言わないで」
「E組のロボットさんだから、いーちゃんです」
進也がGSロボットに話しかけるなか、里美が突然決めた。
「そのまんまだ!?」
「びっくりっス」
「………かわいい」
みんなは、里美の名前発表に驚く。あまりにも、そのままであったが、里美らしく分かりやすかったため、反対する言葉が出なかった。
『………………いーちゃんデスカ、悪クアリマセン。アリガトウゴザイマス』
「良かったです」
「似合っているよ、いーちゃん」
『(皆サマは、本当ニ良イデス。ダカラ、コンナニ楽シイ感情ガ芽生エテクルノデスネ)』
「よし、さっそく頑張っていこうか!! みんなで強くなろうぜ!!」
「「「「『 おぉーーーーーーっ!! 』」」」」
GSロボットは、みんなの行動に楽しさを感じていた。今年は素晴らしい学生たちが入ってきた、自分の名前も出来た。公平の叫びに、みんなも賛同して一緒に叫ぶのであった。
【1年E組】
「今日は午前授業で、時間もたっぷりある。そこでお前たちには、保健・風紀・図書・放送・体育委員会と生徒会、どれかの委員会を選んでもらう。近々『委員会戦争』もあるしな」
みんなで朝練をしたあと何時ものように、授業は始まった。ただ、今日は午前中だけらしく特に授業を進めるようでは無いのだ。そこで総司先生は、委員会を決めることにした。
「どれにしましょうか?」
「いっぱい合って迷うね」
「なお、部活動は自由に提出な。こちらは授業と関係ないから好きにするといい」
進也と里美は隣同士の机の椅子に座って考えている。E組は、進也たちのふわふわした雰囲気に癒されながら、委員会を決め始めている。
「ぼくは体育委員会だな。いっぱい身体を動かせるぜ」
「あたしは風紀委員会。主にしょうもない奴らたちを捕まえる権利が欲しいしね」
「おいらは放送委員会、情報発信は大切っス」
「………優奈は図書委員会。いっぱい本を見たいから」
公平、理名、三郎、優奈は決まった。バラバラになってしまったが、自分で考えたことなので問題は無い。
「士くんは私と一緒で良いよね、はい体育委員会決定♪」
「美莉、勝手に決めるなーーーっ」
「一緒に体育倉庫で…………きゃっ♪」
士と美莉は相変わらずだ。美莉の尻に敷かれている士は、亭主関白の歴史が無くなっていく現代を現しているようだ。
「おれは保健委員会にするね。松下さんは?」
「わたしも保健委員会にします。人を助けるのが目標ですから」
「決まったようだな、それぞれ提出するが良い」
進也と里美は同じ委員会にして、それぞれ提出した。こうして、午前中の授業は終わるのであった。
【放課後】
「自習だって。何をやろうか」
「進也、プールに行こうぜ!!」
「悪くないね、プールなら特訓も出来る」
今日は炎天下で、熱中症の危険もテレビで放送されていた。公平の提案に答えて、ぶつぶつと考える進也。その様子に公平たちはこそこそ集まった。
「最近、進也のヤツ戦闘ばっかり考えていないか?」
「朝月と戦って以来、すごいっス」
「良いことじゃない。里美ちゃんを守るために強くなるって、羨ましいわ」
「………燃えている」
進也の熱さを感じとった4人。いつもの天然や爽やかさが無く、ちょっぴり寂しくなった。
「それに……暑いから……プールに行きたい……」
恥ずかしそうに答える進也の本音の言葉に、4人は思わず転んでしまった。
「「「「 やっぱり、天然か 」」」」
「上野くん。はい、涼しみましょう」
里美の言葉にも、4人は思わず転んでしまった。特訓なのに、本人は涼むことが優先らしい。
「「「「 こっちも、天然だ 」」」」
進也と里美の天然発言に惑わされながら、みんなでプールに行く準備をする。そして士や美莉も誘って移動するのであった。
【プール】
「上野くん。あの人、泳ぎ方が綺麗です」
「本当だ。松下さん、おれは遊びの準備をしてくるね」
「よろしくお願いします」
進也たちは学校指定の水着に着替えた。すると、プールには先客がいた。かわいい女の子や美少女が大好きな生徒会長、海王瑠璃だ。
「はじめまして、生徒会長の海王瑠璃よ。よろしくね」
「松下里美です、よろしくお願いします」
瑠璃は、生徒会に所属する女の子と一緒に挨拶に来た。その体つきは、女の子でも見とれてしまい、特に胸は大きく自己主張がとても強い。
「里美ちゃん、今から何をするの?」
「プールでバレーボールです」
「プールで?」
瑠璃は里美の言葉に首を傾げた。
「GSアーマーを使用した実戦は、まだまだ無理なので簡単に遊ぼうと思いまして」
「天才ね、里美ちゃん」
「いえ、考えたのは三郎さんです」
「どうもっス、中居三郎っス」
里美が簡単な説明をして、瑠璃が興味深く聞いている。しかし、この遊びの発案者である三郎が現れると、里美とは全く違うリアクションをした。
「………………あっそ」
「(生徒会長、女子と男子とのリアクションの差が半端ねえ!!)」
「(そうだよな、マジでヤバそうだな!!)」
瑠璃は男の子には興味を全く示さなかった。公平と士は、その事に気付いたのか、小さな声で叫んでいた。
「ぷはぁ。松下さん、水中にラインを描けたから、さっそく遊ぼう」
「上野くん、ありがとうございます」
水中から現れ、里美と親しそうにする進也に、苛立ちを感じた瑠璃が近づいた。
「誰よ、あなた?」
「上野進也です、よろしくお願いします」
頭を下げて挨拶をする進也。しかし、瑠璃は無視する。
「名前なんか聞いてないわよ。あなた、里美ちゃんの何なの?」
「えっと、その……、大切な……友達で……パートナーです!!」
「パートナー……ね……」
「上野くん……!!」
進也は顔を真っ赤にしながら、きちんと答えた。まだ自身の恋心に気付いていないが、その想いは里美に伝わったようだ。隣では、嬉しい顔をしている里美である。
「(うっとうしいわね、この男)。里美ちゃん、わたくしのコレクションになりなさい」
「えっ?」
「会長は、かわいい女の子が大好きなんです」
瑠璃は里美の隣にいる進也を敵と考え、先手を打つことにした。困っている里美に、副会長の赤沢が続ける。
「私の会社『海王財閥』に掛け合っても良いのよ。さあ、里美ちゃん……」
「ちょっと、里美ちゃんの意志は!!」
「そうです、おかしいですよ!!」
「うるさいわね、あなたたちのような女の子に興味はないわ。わたくしが欲しいのは里美ちゃんだけよ。あなたのことは、入学式イベントから見ていたわ」
瑠璃の言葉は続ける。ここまで黙っていた理名と美莉が反抗するが、瑠璃は無視していく。
「………どうやって?」
「カメラよ、監視カメラ。昨日も良い表情だったわ、里美ちゃん」
「「盗撮じゃん!!」」
疑問を感じた優奈が思わず尋ねる。その答えに士と公平が叫ぶなか、瑠璃はシレッと答える。
「失礼ね。生徒会は、生徒を観察するのは当然よ」
「犯罪っス」
「里美ちゃん、みんなに愛されているのは知っているけど、まさか、同性の子もいるなんて……予想外だわ……」
三郎も瑠璃の行為を否定して、理名はこの展開に頭の回転が止まっている。
「上野くん、何か背中がゾクっとしました」
「おれも、ゾクッとしたよ。炎天下なのに変だね」
進也と里美も珍しく、瑠璃から感じる何かに押されていた。ただ、2人が一緒にいるおかげか、恐怖心は少ないようだ。
「会長、松下様が困っていますよ。一旦、離してください」
「は〜〜〜い」
「あの会長、ちょっと危険ね」
副会長に言われて、しぶしぶ引き下がる瑠璃。里美に嫌われては意味が無いのだ。その様子を見た理名は瑠璃を敵視した。
「上野くん……」
「松下さんは、おれが守るから。その……大切なパートナーだから……」
「あ、ありがとうございます……」
進也と里美は、周りの空気とは違って良い雰囲気になっている。この空気が良いから守ってあげたくなると、理名たちは考えるのであった。
【第6プール】
「チーム分けは、どうしますか?」
「私は、里美ちゃんと一緒よ♪ ………………………あの男、潰す」
先ほどの瑠璃の発言は、プールで決着を付けようとなった。みんな、やる気マンマンである。
「鈴木、生徒会長さんがこっちを見ているけど、何か顔に付いてあるかな?」
「まあ、気を付けろとしか言えないなあ……」
「???」
「まあ、フォローをきっちりするからな」
公平の言葉に、進也は首を傾げる。士は良い笑顔で右親指を立てて、サムズアップする。
「審判は、副会長と佐藤さんか」
「それじゃあ、行くわよ」
『レディ?』
「始め!!」
『チップ チェックイン』
ボールは、瑠璃が作った特別製の水球だ。男子チーム進也・三郎・士・公平・朝月vs女子チーム瑠璃・緑・美莉・優奈・里美である。審判は、赤沢・理名だ。
「えいっ」
「鈴木!!」
「天醒!!」
「むん!! おりゃ!!」
序盤、男子チームプレーが炸裂している。一方、瑠璃はネプチューンというチップを使っていた。全身が水色で、下半身は青い魚のような尾、上半身には青いビキニ水着という姿だ。そして女子チームは、今のところ息があっていない。
「きゃっ」
「しゃあ!!」
「ナイス、スパイク!!」
普通のバレーボールとは違う変則ルール。10ポイント先取。ネットは1.5mで普通より遥かに低い。プールの底に、ボールが当たればポイントが入る。ボールは、水中に沈む特別製なので、キックあり。パス回しは5回まで。一度触れた人も、もう一度だけ触れることが出来る。
「やっぱり、GSアーマーを装備すると動きづらいな〜〜〜」
「進也、気を付けろ。生徒会長だ!!」
「(里美ちゃんに最も近いあの男、この特別製の水球で溺れろ!!)」
「ぐっ!? お、重い〜〜〜!!」
進也は、瑠璃のサーブを返した。水圧が増加され急激に重くなったボールだったが、何とか浮かせた。
「上野、ナイスレシーブ!!」
「行くっス」
「……………………………………ちっ」
士や三郎が応援する。その様子に瑠璃は舌打ちした。
「(舌打ち……。あの女、進也と里美ちゃんの仲に苛立っているわね。あたしも一緒に居ただけで分けられちゃったし)」
「美莉ちゃん、ファイトです!!」
「(里美ちゃんは、進也と一緒に居る時が一番幸せなのよ……!!)」
理名が心の中で応援するなか、ついに8対9。女子チームのマッチポイント。進也と瑠璃の決着も付こうとしていた。
「トドメをさしてあげるわ。水球爆弾……!!」
『ワイルドチャージ!!』
「ちょっと、それは必殺技よ。止めなさい、生徒会長!!」
「うるさい」
理名の注意を無視して、瑠璃は必殺技のエネルギーを込めたボールを容赦なく放った。ボールが右腕に当たって、あまりの痛さに進也は声にならない悲鳴をあげた。
「――――――――――っ!!」
「上野くん、大丈夫ですか!!」
向こうから里美が心配している。
「す、ごく痛、い……」
「何とか浮いた、良いぞ進也」
「もう一発!!」
「必殺技、なら負け、ません!!」
『ワイルドチャージ!!』
「ブラスター、キック……!!」
痛みに耐えながら進也はボールを蹴り飛ばした。
「ふん、水流ブロック」
「なっ!?」
「進也の必殺技が!!」
瑠璃はプールの水を操り、水流の壁を作りだした。これは必殺技ではなく、ネプチューンの固有能力である。ボールは止められ、反対にボールの威力を何倍にも増して跳ね返した。
「返すわよ」
「ぐははっ―――――――!!」
「上野くん!!」
「あら、里美ちゃん」
瑠璃によって強化したボールが顔面に叩きつけられ、水底に沈んでいく進也。里美は誰よりも速く、進也を助けるため真っ先に水中に潜った。その光景を意外だというように見とれている瑠璃。
「生徒会長……この借りは、委員会戦争で返すわ」
「やってごらんなさい、あんな男から引きちぎって、里美ちゃんを必ず手に入れる、そしてコレクションとして飾って・あ・げ・る」
「――――――――――――っ!!」
理名の文句を無視し、圧倒的な実力を見せつけて、生徒会長の瑠璃は去って行った。
「「「 上野(進也)!! 」」」
「上野くん、上野くん!! しっかりしてください!!」
進也はGSアーマーが解除されていて、プールの水を飲んでしまったようだ。
「里美ちゃん、人工呼吸よ!! 保健委員会として、早く!!」
「はわっ!? わ、分かりました!!」
「士くんは見ちゃダメ!!」
「なっ、おい美莉――(美莉の胸、胸、でっかい胸が〜〜〜〜〜!!)――!?」
理名が苦しんでいる進也を見て、里美を急がせた。里美が進也に唇を重ねるのを見た瞬間、美莉は士の目をふさいだ。士の背中には美莉の豊かな胸が押し付けられ、鼻血が出そうであった。
「ぷはぁ!! げほっ、げほっ!!」
「大丈夫ですか、上野くん!!」
水を飲んでしまい苦しむ進也に、里美は背中をさすってあげる。
「けほっ、な、何とか……」
「進也、里美ちゃんが人工呼吸してくれたおかげよ」
「へっ?」
「り、理名ちゃん……」
「あ、ありが……とう……松下さん……」
「い、いえ……良かっ……たです……」
今までで一番真っ赤な進也と里美。アクシデントとはいえ、お互いの唇を重ねてしまった。入学式イベントでは里美の頬にキスをした進也だが、お互いの顔を全く見ることが出来ない。
「(予想外の出来事だったけどね。これで、少しでも進也と里美ちゃんが意識してくれたら……)」
理名は、生徒会長という厄介な相手が現れ、里美ちゃんの恋を邪魔するに違いないと感じた。それでも、この2人なら乗り越えられると信じている理名は、真っ赤になっている進也と里美を見守るのであった。
今回は、マヒロ様のコラボで書かれていたネタを書かせてもらいました。
嵐ちゃんのエクストラ・チップは、明け烏様から提供してもらった時からの設定です。
次回は、2人の初恋や謎の武具などを進めていきますね。