第08話『先輩の授業を見学しよう』
どうも皆さま、お久しぶりです。ベルトです。
最後に更新してから、1ヶ月以上になりました。
活動報告でも話していますが、今後は好きな時に更新します。
温かいコメントありがとうございました。
それでは、本編にどうぞ!!
【長谷川コーポレーション】
ビルの地下8階。関係者以外は、立ち入り禁止のトップシークレットの場所である。そこに黒髪の社長と銀色の仮面をしたボディーガードがいた。
「社長、実験を始めます」
「よかろう。これが成功すれば、人類は新しい世界に発展するはずだ」
長谷川豊とマスクは、隣の部屋の窓ガラス越しから眺めている。たくさんの機械が置かれている実験場は、けっこう広くて圧迫感は無い。
「はっ、それではGSチップ『実体化』開始!!」
「認証、キャット」
『アニマル・チップ チェックイン』
GSチップを四角い機械に差し込んだ。チップ特有の電子音声が流れた。この機械は、GFウオッチの技術を応用したものだ。
「にゃあ〜〜〜♪」
「素晴らしい……」
バシュゥゥゥゥという白い煙が晴れていき、機械の上には先ほどまで何も無かった場所から黄色い猫が出てきた。豊は、この光景を見て満足している。
「おおっ!!」
「とてもプログラムとは思えません」
社員たちから歓声が上がる。現れた黄色い猫は、GSチップのデータを実体化したもので、本物の生きている猫と変わらないように見える。
「次はアビリティ」
「認証、ライトニング」
『アビリティ・チップ チェックイン』
サァーーーと現れたのは、人間のような姿をした雷であった。今までの実験で、人間の姿が安定していることが分かっている。
「透明だな」
「解析の結果、雷の性質は50%です。今までの実験のなかでは最高の数字です……!!」
社員は興奮している。しかし、豊は満足していない。隣にいるマスクは、目の前の現象によるデータを見ている。
「最後はアクション」
「認証、モーメント」
『アクション・チップ チェックイン』
ジ…ジジ……ジジジ………と現れたのは、人間の身体の部分である右手と左足だけであった。
「だめです。実体化すら出来ません」
「難しいか。まあいい、アニマルのほうは予定通り、住民たちへの安全なペットとして売り込んでくれ」
豊は、アクションの実体化はまだまだであると予測していた。そして、プログラムの動物を売り出し、更なる活動を進めようとしている。
「分かりました」
「これから忙しくなります」
「みんな、頑張るぞ!!」
社員たちは、これからの未来に期待していた。こうして、長谷川コーポレーションの大ヒット商品として、風花町でプログラム型ペットが普及するのであった。
【1年E組】
「おはよう」
「おはようございます」
進也と里美が教室に入ってきた。進也は、理事長の徹子から里美を守ってほしいと頼まれている。そのため、進也が学生寮の前で里美を待っていて、いつも一緒に登校するのが日課になってきた。
「「「「……!! ぶっ潰………………………いや、止めよう……」」」」
「「???」」
一部の男の子たちから「アイツは仕方ない」「温かく見守ろうぜ、大人として」「邪心が癒される」など言われている。思春期の男の子たちにとって、女の子と仲良くなりたいのだ。仲が良い進也と里美は、モテない男の子たちにとって、憧れの理想像である。
「お前ら、おはよう!!」
「おはようございます♪」
士と美莉が一緒に教室に入ってきた。いつも通り、美莉が士の部屋の前で待ち伏せして、登校している。こちらも日課になっている。
「「「「……!! 日々野さんと一緒に来るとは、羨ま……けしからん!! よって士、ぶっ潰す!!」」」」
「何でじゃあああああああああぁぁぁーーーーーーーっ!!」
「士くんーーーーーーーーーーーっ!?」
一部の男の子たちから「裏切り者」「ブラックリスト入り」「処刑は昼休み」など言われている。女の子と仲良くすることが出来ない男の子たちにとって、仲良くなっている男の子は、まさに目の敵である。特に士は、自分たちと同じ思考を持っているため、許せない。今日もEクラスは、通常運転である。
「ひどい、俺が一体何をしたんだよ……」
「日々野ちゃんと一緒にいるお前が悪いぞ、士。ぼくたち『素晴らしき平等の会』は許さない」
「ちなみに教えたのは、おいらっス」
男の子たちから、ようやく解放された士は、顔を机に着けて寝そべっている。よく見ると服がボロボロである。どや顔をしている公平と三郎が、士の机の周りで理由を話した。
「公平、三郎、お前らもグルかよ!! 今日こそ決着を着けてやる!!」
「望むところだ!! かかってこいやーーーー!!」
暴れまわる士と公平。止めるのは、もちろん理名の役目である。
「アンタたち、静かにしなさい!!」
バコーーーーーーーン!!
「「ぶべらっ!!」」
「お見事っス」
理名がピコピコハンマーで制裁しているのを三郎は、離れたところから拍手していた。
「くそぅ〜〜、何でいつも、こんな目に合わないといけないんだよ……」
「士くんが世界中の人間を敵に回しても、私は味方だよ!! 私が士くんを貰いますからね……きゃっ♪」
「………美莉さん、声に出てる」
士は男の子たちから攻められる現状に落ち込んでいる。対して、美莉は妄想を膨らましながら照れている。そんな様子を見た優奈は小さく突っ込んだ。
「素晴らしき平等の会って何ですか?」
「初めて聞きます」
話を聞いていた進也と里美は、相変わらず天然だ。そこが良いところでもあり、悪いところでもある。そんな様子を見た理名は、話しかけた。
「あいつらが勝手に遊んでいるだけよ。だから、進也と里美ちゃんは、気にしなくていいからね」
「「わ、分かりました」」
声を揃えて答える進也と里美。早くくっ付いて欲しいと願いながらも、温かく見守ることを改めて決意した理名であった。ちなみに、Eクラスのほぼ全員も願っているらしい。今日も授業が始まるのであった。
【8号館】
「チッパーレースに向けて、今日は2年生の授業の見学をする。そして、2年生のコーチとして3年生もいる。挨拶を忘れないようにな」
「「「「はーーーーーーーーーーーーいっ!!」」」」
総司先生と一緒に来たのは、仮想空間を作る科学室だ。ここでは、バーチャル映像による世界を再現するゲーム機がある。正式名称は、GOレース。専用のゴーグルと浮遊するエア・ボードを利用することで使える。
「これがチッパーレースのシミュレーションだ」
巨大なモニターに映っているのは、荒野が広がる強風、噴火する火山、隕石が降る宇宙、高層ビル、猛獣が出るジャングル、見晴らしが良い草原、海上・海中・海底、氷河期、洞窟、無人島、山、滝などのステージだ。それぞれのステージに、2年生たちがGSアーマーを装備して戦っている。
「すごい……」
「まるでゲームみたい」
天候も変化するらしく、晴れ・曇り・雨・雪・霰・雷・日照り・寒波・霧・異常気象・砂嵐など様々だ。
「すごいだろ。俺たちも最初に来た時は驚いたぜ」
「神代先輩!!」
「お久しぶりです」
そこに居たのは、入学式イベントで対戦相手となった達也たちだった。パートナーの志野も居ており、理名たちと話しこんでいる。
「先輩のクラスの授業でしたか」
「おーーーい、達也。そろそろお前たちの出番だぞ」
「そちらの方々は?」
「火渡優也だ、よろしくな」
「神道美優だよ、よろしくね」
優也は黒髪で肩に届く長さで、瞳はルビーのように紅い。美優は、背中まである黒髪で、瞳は青だ。
「女みたいな先輩だな」
「実は本当に女なんじゃね?」
公平と士は、優也の見た目を女性らしく見えている。確かに周りにいる女性たちと比べても、見た目は負けてはいない。しかし、優也にとっては禁句であった。
「俺は、女でも無ければ、男の娘でも無いわーーーーーーーっ!!」
『レディ?』
「認証、ダークフェニックス!!」
『アニマル・チップ チェックイン』
優也は、黒い炎を纏って背中には二対の翼を広げた。2枚のチップを使える優也の1つであるアニマル・チップだ。
「覚悟!!」
「「男の娘まで言ってはいませ、ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」
「士くーーーーーーーーんっ!?」
優也の翼によって見えなくなるまで遠くに飛んで行った公平と士。美莉の叫び声が響くのであった。
「火渡先輩は、2枚のGSチップを同時に使える、すごい人だよ」
「あなたは?」
公平と士の心配をする進也たちの前に、2年生の制服を着た女性が現れた。髪型は紫のサイドポニーで、瞳は黒だ。隣にいた志野が説明を始めた。
「彼女は、西谷葵。私たちのクラスメイトであり、演劇部の副部長でもある」
「よろしくね」
「よろしくお願いします!!」
「………」
挨拶をする葵は、進也たちを見ながらチラッと優奈を見た。葵が立ち去るまで、優奈は沈黙しているのであった。
「2年生、そろそろ授業の終盤だ。成績をチェックするので集合!!」
「先生が呼んでいる。みんな、じゃあな」
「「「神代先輩たち、ありがとうございました!!」」」
2年生の担任である才牙先生に呼ばれて、2年生たちは立ち去った。進也たちはお礼を言った。
「お前さんたち、楽しんでおるか!!」
「「わっ!!」」
葵たちが去って見学しているところ、急に後ろから話しかけられ、驚く進也と里美。
「お前さんたち、失格者であろう」
「誰よ?」
話しかけてきたのは、白衣を着た白髪のお爺さんであった。理名は失格者と言われてキッと睨んだ。
「がっはっは。そう睨むでない、怪しい者じゃない。この風花高校の科学担当の高橋倉之助だ」
「もしかして、このGOレースは、先生が作ったのですか?」
「おうともさ。わしの自信作よ」
「かっこいいっス!!」
「がっはっは、面白い奴だな。良かったら昼休みにでも新しいGSチップを見に来ないか? お菓子もあるぞ」
「行きます!!」
三郎と進也は、子どものように目を輝かしている。里美たち女性陣は、男子のノリが分からないまま一緒にいくのであった。
【科学実験室】
「がっはっは。新しいGSチップを開発していたから、誰かテストしてくれ」
昼休み、進也たちは高橋先生の実験室にやって来た。ちなみに公平と士は、保健室で寝ている。美莉は付き添いである。
「ウサギさんです」
「里美ちゃんなら似合いそうね」
「新しいチップって、わくわくするね」
進也が見ている中、里美はGSチップを腕時計に差し込んだ。
『レディ?』
「行きます。認証、ラビット!!」
『アニマル・チップ チェックイン』
ポンッと現れたのは、ウサギの白耳だけだった。
「上野くん、どうですか?」
「…………………………………」
しかし、里美は頭が変わったことを気付かずに、進也の近くに行く。
【生徒会室】
「ぐふっ!?」
「会長!?」
監視カメラで里美の可愛すぎる姿を見た、生徒会長の瑠璃は何故か吐血した。全く意味が分からない。
「萌えたわ、今日の出番はこれだけで悔い無し!!」
「会長ぉぉぉぉーーーーー!! 理解したくありませんが、仕事が残っていますよーーーーーっ!!」
瑠璃は、勝手に倒れていた。右手で書いた『里美ちゃん、マジ天使』という無意味なダイイングメッセージを残していた。副会長のツッコミは、今日も大変である。
【科学実験室】
「上野くん?」
里美は、クエッションマークを頭の上にあるかのように首を傾ける。その動作だけで、進也は顔が真っ赤になる。
「里美さん。それ以上、上野さんに近いたら危ないっス」
「かわいい」
「はわっ!?」
三郎の忠告も虚しく、気になる男の子に褒められて、里美も真っ赤になる。
「がっはっは、失敗だな。まさか、耳しか現れないとは」
「ある意味、2人にとって成功よね」
高橋先生が豪快に笑うなか、理名は進也と里美の仲が深まることを喜んでいる。
「上野くん〜〜〜〜!?」
「かわいい」
もはや褒めることしか言わなくなった進也。里美の髪から白い煙が出てきた。そんななか、高橋先生と理名は入学式イベントについて話していた。
「がっはっは。まあ、トップ争いから外れたヤツも居るがな。キツく言うと、チッパーとしては失格だ」
「分かっています。けど、里美ちゃんたちを残していくのは出来ませんよ」
「結果が全てではない。その結果をいかに大事だってな。お前たちの行動は1人の人間として、素晴らしかった。そこは誇っていいぞ」
「あ、ありがとうございます……」
理名は褒められたのが、よっぽど不意を突かれたのか珍しく真っ赤になっている。
「がっはっは。それに先生や理事長も今回のレースに違和感がある。恐らく、誰かが動いているのだろう」
「そうなんですか!? 早く捕まえなきゃ!!」
ようやく元に戻ったのか進也は驚いている。ちなみに里美は進也に褒められすぎて、思考回路がショートしている。理名は隣で考え込んでいる。
「なぁに、そう慌てるもんじゃない。あちらは必ず動きがある。その時に動けば良い」
【放課後 ???】
「あなたの正体をばらすぞ?」
「………それだけは止めて……」
暗い教室の中で、女の子が目の前に居る女子生徒にお願いをしている。
「だったら、早く見つけてくれ。手っ取り早く、理事長の孫を引っ張ればいいんじゃねぇぇぇか」
「………!!」
女の子を脅している女子生徒の隣には、女性の敵になってしまった長谷川直樹が机の上に座っている。
「お前の目的は、理事長の孫に近づいて『バランの遺産』の1つを見つけること。忘れてはないだろうな」
「………はい……」
「騒ぎが起こる隙に奪い取れ」
「………はい」
女の子は去って行った。その後、直樹は苦しみ始めた。
「ごほっ、ごほっ、ごほっ!!」
「どうした?」
「生徒会長ってヤツに妙な攻撃されて、調子が悪いんだよぉぉぉ!!」
「やれやれ、世話のかかる息子さんだ。今どきスカートめくりなど、女性の敵よ」
「ふん、何をやろうが良いだろう!! 俺の自由だぁぁぁ!!」
聞き分けが悪い直樹。女子生徒は、ため息をするのであった。しかし、その瞳は面白い玩具を見つめているのであった。
【学生寮5F 女性】
里美は、理名の部屋を訪れていた。
「理名ちゃん、相談があります……」
「うん?」
「上野くんを見ているとドキドキします……」
理名は心の中で「よっしゃーーーー!!」と喜んでいる。ようやく、気付いてくれたことにホッとした。
「里美ちゃん、それは間違いなく『恋』よ!!」
「わたしが……恋を……ですか?」
「そうよ、里美ちゃん!! そのまま進也にアピールし始めたら、間違いなく恋人になれるわ!!」
理名は興奮しているが、里美は困った表情だ。
「でも、無理です……」
「何で!?」
「実は、小さな頃に男の子と約束しました。お嫁さんにしてくださいって」
里美は、小さな頃に大きな約束をしていた。
「それって、里美ちゃんの初恋」
「その男の子との約束を守りたいです……。だから、上野くんへの想いは我慢するしかありません……」
これは、厄介なことになったと理名は、心の中でため息をする。それでも、里美ちゃんを幸せにするのは間違いなく進也であると、己の勘を信じて燃え上がるのであった。
ようやく物語が進んで来ました。
皆さまが提供したキャラクターも、何とか書いていきますね。
次回の更新は未定です。しかし、止める気はありません。申し訳ありませんが、気長に待っていてください。