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第4話:王太子殿下、申し訳ありませんが、あなたの輝きは私の推しの10%にも満たないのです

王宮の豪華な応接室。

目の前には、眩いばかりの金髪と青い瞳を持つ美青年——この国の第一王子、ジュリアス・フォン・アルフレッドが座っている。


ゲーム『薔薇と剣の王国』のメインヒーロー。

全方位無欠の「黄金の王子」。本来のロゼリアが死ぬほど執着し、その愛ゆえに破滅した相手だ。


「……ロゼリア。昨夜の君の行動には驚かされたよ」


ジュリアスが、形の良い唇を動かして優雅に紅茶を啜る。

その仕草一つひとつが計算されたように美しい。……はずなのだが。


(うーん。やっぱり、なんか『薄い』んだよなぁ……)


前世でアデル様の「漆黒の美貌」と「不器用な照れ顔」という濃い味付けに慣れきった私の目には、王太子の輝きが**「光度が高すぎて白飛びしている写真」**のようにしか見えない。


「マリア……特待生の彼女を助けたそうじゃないか。君が、あんな慈悲深い真似をするなんて。一体、何の風向きが変わったんだい?」


ジュリアスの瞳に宿るのは、疑念と、少しばかりの「自分への関心を引こうとしているのではないか」という自惚れだ。


「風向きも何も、殿下。ただ、あの場にいた殿下が何もしなかったから、私が代わりに動いただけです」

「なっ……」

「将来の王たる方が、たかが一人の令嬢の嫌がらせを止められないなんて。……正直、幻滅しましたわ」


(よし、言った! これで好感度は爆下げ。婚約破棄へのカウントダウン開始ね!)


「……ふっ、なるほど。そうやって僕の気を引こうというわけか。相変わらず、可愛くないな」


……え? なんで?

ジュリアスがなぜか口角を上げ、身を乗り出してきた。


「今までの君なら、泣いてすがるか、怒鳴り散らすかだった。……面白い。少し見ない間に、駆け引きを覚えたらしい」


(いや、駆け引きじゃなくてマジレスなんですけど!? 何その『おもしれー女』みたいな反応! 怖い! 乙女ゲームの補正力怖い!!)


私が本気で引き気味の表情(引いているのに美しいのがロゼリアのスペックだ)を浮かべていると、背後の扉が乱暴に開かれた。


「——殿下。失礼いたします」


低い、けれど私の鼓膜を心地よく震わせる、世界で一番大好きな声。


「アデル! 入る時はノックをしろと言っただろう」

「……緊急の報告があったゆえ、失礼した。……ロゼリア、なぜお前がここにいる」


アデル様だ。

近衛騎士団の副団長という立場上、王太子の側近でもある彼は、私を鋭い眼光で射抜いた。

その瞳の奥に、ほんの少しだけ「焦り」の色が見えたのは、私の妄想だろうか。


「アデル様……! お会いできて光栄です! 今日の制服姿も、腰の剣の角度まで完璧ですね! 凛々しすぎて国が滅びそうです!」


「……っ、黙れと言っている……!」


アデル様が即座に顔を背ける。

よし、今日もいい赤みだ。最高のご馳走である。


「アデル、君も彼女の『変貌』に戸惑っているようだな。……ロゼリア、さっきの続きだ。僕との婚約を維持したいのなら、もう少し素直になったらどうだい?」


ジュリアスが、私の手を取ろうと手を伸ばす。

その瞬間。


ガシッ。


私の手首が掴まれる前に、アデル様の大きな手がジュリアスの腕を制止した。


「……アデル?」


「……殿下。職務中に失礼いたしますが、ロゼリア嬢への『過度な接触』は、彼女の父君である公爵閣下の耳にも入ります。……控えられるべきかと」


アデル様の声は、いつになく冷たく、そしてドスの効いたものだった。

彼は私を自分の背後に隠すように一歩前に出る。


(待って。これ。これってもしかして……)

(『推しによるガード』!? 職務にかこつけた、実質的な独占欲の発露!?)


私の「腐」ではないが、オタク特有の深読みセンサーが激しく反応する。


「……アデル、君。まさか、彼女に……」

「滅相もございません。私はただ、無用なトラブルを避けているだけです」


そう言いながら、アデル様の首筋が真っ赤になっているのを、私は見逃さなかった。

ああ、もう。


「アデル様、私を守ってくださったんですね。……大好きです! 宇宙で一番愛してます!」


「……っ!! お、お前というやつは……!! 殿下、失礼します! この狂女ロゼリアを外へ連れ出します!!」


「えっ、ちょっと待て、アデル——」


ジュリアスの制止も聞かず、アデル様は私の腕を掴んで(力加減は驚くほど優しい)、応接室から文字通り「連れ去って」いった。


廊下を早歩きで進む彼の背中は、耳まで真っ赤。

掴まれている私の腕からは、彼の体温が伝わってくる。


(断罪エンド回避とか、もうどうでもいいかもしれない。……この人をデレさせるまで、私は絶対に折れないわよ!)

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