能天気
惰眠を貪る日々は幸せだが、どこか物足りない。
刺激を求めてしまう自分がいるのは分かっているけれど、自分にとっての刺激は大きな代償を伴うものなので、とても怖い。だから僕は今日も心を落ち着かせて、自分の衝動的な欲望を理解して、その頭を撫でて抱きしめてやることで、自分を許しているのだった。
嗚呼、神様。
私は今こうして、慎ましく生きています。
自分が産んだ闇という名の子と共に、
自分だけの静かな世界で、
淡々と日々を過ごすだけで、私は幸せです。
祈りを捧げる、あの戦火の中で、君の姿だけが、希望の光だった。全身がただれるような業火に焼かれて、自分を見失って、肉が全て焼けて心臓だけになって、ドクンドクンと動いていた時のあの記憶を、僕は今、美しいものとして捉えている。僕を僕たらしめているものは確かにあの光で、植物が光合成によって成長していくように、僕の肉体が何も無い所から創り上げられて、裸のまま立ち尽くした僕は、しばらく泣いた。何故泣いているのだろう。そんなことも分からぬまま、僕は涙を流して、やがて涙が枯れるまで、ずっと泣き続けた。
生まれ変わり。
僕は一度死んでいる。
死んで全部終わりにしようと、本気で考えたら、生きることがどうでも良くなって、自分に甘えて生きることが、怖くなくなった。だけどこうして凪のような毎日を過ごしていると、時折あの戦火の中で見た光を思い出してしまう。まるで別の人間が体験したことのような、遠い思い出にも思えるのに、あの景色はくっきりと鮮明に思い出されて、それがすごく、ありがたい。
こうして小説を書いていると、途方もない道のりにうんざりしてしまうから、やはり今は幸せなのだろうと思う。僕にとって、小説を書くことは救済であるが、今の僕に救済は必要ない。だけどこうしてまた、小説を書いているのは、やはりあの頃の刺激を、まだどこかに求めているからなのだと思う。
闇から出た、黒い塊のような、僕の子。
その産声に僕はいつの間にか魅了され、
もう一度、聞きたいと思ってしまっているのだ。
僕の腕の中で気持ち良さそうに眠っているその子の、柔らかいほっぺを撫でる。
次に目を開けた時、この子の瞳は何色をしているだろう。
あの時の、真っ赤に染まる瞳を思い出す。
炎の瞳。
僕の身体を燃やしたあの瞳は、とても恐ろしく、
とても美しかった。




