表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首椿  作者: 真崎いみ
17/68

第17話

それから二人は時間が許す限り、自らの根底深くのことまでを語り合った。

今までのこと、そしてこれから。

「たまちゃん。僕はね、君が描いた僕自身に会うことができたなら、警察に自首しようと思うんだ。」

「そうなの?残念。」

「うん。僕は少し、人を食べ過ぎた。この生活は名残惜しいけれどね。」

本当に。…本当に、離れがたい。

だけど、僕は血肉の糧となった人を忘れないために、世間から犯罪者というタトゥーを入れようと思う。

「そういえば、たまちゃんは生き物を殺したことないの?」

「ないねえ。殺戮処女なの、私。」

午前中いっぱい一緒の時を過ごし、昼食を簡単に食べ終えると珠子は出かける支度を始めた。

「個展の在廊時間を設けててさ。ちょっと行ってくるね。」

「うん。わかった。」

「今日が今年最後の個展だから、帰ってきたら打ち上げしようよ。」

カレンダーを見ると、今日は12月30日だった。随分と内容の濃い、年末だ。

「行って来ます。」

「行ってらっしゃい。」

珠子を見送って、健は手を振った。帰ってくる時刻は、5時を過ぎるという。珠子の部屋の鍵を持っていないので、無闇に留守にするのは防犯上危険だろう。

健は彼女が愛読しているというファッション雑誌などを読みつつ、今の流行りを勉強などしてみた。角が折られたページに珠子の好みがあるのだろうと察し、より熟読した。いつか好きな服の答え合わせができるといい。

午前中に干し、乾いた洗濯物を取り込んで畳む。タンスのどの場所に入れれば良いのかわからないので、帰ってきたら聞こうと思った。

食器の洗い物を済ませ、お茶を飲む。

好きにしてて良いよ、と言われたが、まだ彼女に対して遠慮があるのであっという間に手持ち無沙汰になってしまった。健は畳の部屋に赴いてみる。物を部屋の角に寄せて、できたスペースに横になった。真横にある珠子が描いた死体たちと目が合った。

「…。」

空虚な目色に、心が落ち着いた。彼らに見守られて、健はいつの間にか眠っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ