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侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!  作者: のびろう。
第7章 浮遊諸島の聖女と時の遺跡

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星霊の扉、黎明の記録

「……この扉の奥に、時の星霊が眠っている?」


イッセイが足元の転移陣を確認しながらつぶやく。浮遊遺跡の最深部――天頂の間と呼ばれる空間は、星の光を閉じ込めたように静かで神秘的だった。高くそびえる石柱の奥、荘厳な双扉が黄金の封印によって閉ざされている。


「封印の魔力は……星霊級ね。これは下手に触れば吹っ飛ぶわ」


クラリスが魔力を練りながら額に汗を浮かべる。


「ふむふむ、これは“星霊回路式の交信扉”にゃ。開けるには、契約者の波長を合わせる必要があるにゃん」


ミュリルが猫耳をぴくぴく動かしながら、扉の縁に手を当てて感知している。


「でも、契約者って……誰なの?」


ルーナが不安げにイッセイを見上げた。


その瞬間、扉の中心部――円環のような魔法紋に淡い光が灯り、静かに声が響く。


『我は時の記録を守りし星霊。――かの契約者の血を引きし者、ここにいるか』


「……! これって……」


「イッセイくんのことウサ!?」


フィーナが目を見開いて叫ぶ。


「違う。これは……」


イッセイが静かに首を振る。


「これは、リアナ――聖女リアナと契約していた星霊だ。俺たちは、あくまで“来訪者”に過ぎない」


すると扉の前に立っていたシャルロッテが一歩前へ進み出る。


「……けれど、私には聞こえるわ。この扉の“記憶”が……」


その瞳は深い翠色に輝き、まるで精霊そのもののように澄んでいた。


「精霊語、起動するにゃん!」


ミュリルが叫ぶと同時に、シャルロッテの手がゆっくりと扉に触れた。封印が、ゆっくりと――解け始める。


「うそ、動いた!?」


「彼女が――“鍵”だというのか……」


ルーナとクラリスが息を呑む中、扉の魔力が渦を巻き、空間に浮かぶ星屑のような粒子が広がった。


「入るぞ、皆。これが……『星霊の扉』の先だ」


イッセイの言葉にうなずき、一行は慎重に扉の中へと足を踏み入れた。


中は――時を忘れたような世界だった。


天井も地面も曖昧で、重力さえも定まらない、無数の「記録」が空間を漂っている。その中心に、ひときわ強く輝く光球が浮かんでいた。


「……アレが星霊?」


サーシャが手を伸ばしかけると、光球から柔らかな声が響いた。


『我はエル・エルミナ。時を綴る者。あなた方の問いに答えよう……』


次の瞬間、空間が変わる――。


世界が、記憶の映像へと書き換わっていく。


「こ、これは……!」


「イッセイくん……ウサ、これ……聖女リアナの記録!?」


フィーナが震える声をあげた。


映し出されたのは、まだ若く、穏やかな微笑を浮かべたリアナと、一人の騎士。


「……あれは……」


「まさか……王国の、初代の騎士団長では……?」


クラリスの声も震えていた。


「……そうか。これは、封印された“記憶”そのものなんだ」


イッセイが小さくつぶやく。


リアナが命を賭して封じた存在とは――、そして彼女を導いた“預言”の真実とは――


記憶の断片は、まだそのすべてを語ってはいなかった。


「――聖女リアナは、その命と記憶を代償に“何か”を封印した」


イッセイは、空間に浮かび続ける記憶の映像を睨みつけるように見つめていた。


その映像では、リアナが騎士団長とともに荒れ果てた地に立ち、巨大な魔の影に立ち向かっていた。そしてその直前、リアナが小さな瓶のようなもの――いや、輝く液体を詰めた水晶の器を騎士に託すシーンが映る。


「これ……“神命の雫”じゃないか?」


サーシャが低くつぶやく。


「間違いないウサ。あれは聖女だけが生み出せる“祝福の結晶”……!」


フィーナが目を見開いた。


光が消え、星霊エル・エルミナの声が、空間を優しく満たす。


『封印は再び、千年を経て揺らいでいる。かの“瘴気”は、封印の裏側より漏れ出る雫の影……』


「……じゃあ、瘴気の源はやっぱり――」


「“魔王”なんだにゃ」


ミュリルの耳がピクッと動き、全員が緊張を走らせた。


『封印の地は、“時の神域”セーレ・リュミエール。かの地に再び、封印の調律が必要となる。されど、それを果たすには――』


星霊の声が一瞬だけ沈黙し、次いで澄んだ輝きとともに、ひとつの問いを投げかけた。


『――そなたらに、リアナの記憶を継ぐ意思はあるか?』


沈黙が走る。


ルーナがそっとイッセイの袖を引いた。


「……でも、それって……リアナ様の“記憶”を、誰かが背負うってことだよね……?」


「そのとおりにゃ。封印の力を蘇らせるには、彼女の“役割”を受け継ぐ者が必要にゃん」


「だが、それは同時に……“人としての生”をすこしずつ削ることにも繋がるかもしれん」


クラリスが唇を噛むように言った。


「そんなの……!」


ルーナが叫びかけたそのとき。


「やるよ、俺が」


イッセイの言葉に、全員の視線が集中した。


「イッセイくん……」


「リアナが命を懸けて守った世界だ。その記憶が、この世界を救う鍵になるなら……背負わなきゃならない。俺たちは、そういう旅をしてきた」


静かに、しかし確かにイッセイは言葉を刻んだ。


「――けど、ひとりじゃ背負えない」


その言葉に応えるように、サーシャが前に出た。


「我も、共に背負おう。命を懸ける覚悟は、とうにある」


「当然にゃ。イッセイの背負うものは、皆で分けるにゃん」


「イッセイくんが“世界の記憶”を継ぐなら、私は“知の証人”になるわ。すべてを書き留めてみせる」


クラリスの言葉に、シャルロッテが静かにうなずく。


「なら、私は……“精霊との橋渡し”を。世界の声を、あなたたちに伝え続ける」


「ボクもウサ。泡でも魔力でも、できること全部使うウサ!」


「リリィも、癒しとビジネスで支えてあげる♪」


「……そばにいるにゃん。それだけで、元気が出るにゃ」


イッセイは、仲間たちの言葉を一つ一つ噛みしめ、ゆっくりと拳を握った。


「ありがとう。じゃあ、みんなで一緒に進もう。この先に――“星霊の扉”の先にある、本当の未来へ!」


星霊エル・エルミナの光が優しく広がり、一行の足元に転移陣が浮かび上がる。


『刻を超えし導き手たちよ。黎明の記録は、そなたらに託された』


光と共に空間が崩れ、意識が引き戻されていく。


――次なる目的地、“封印の神域”セーレ・リュミエール。


千年の記憶が眠るその地で、一行はついに“魔王”の真実に触れることになる。

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