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侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!  作者: のびろう。
第7章 浮遊諸島の聖女と時の遺跡

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遺されし記憶と空の記録

 時の遺跡の奥、重なる時間の回廊を抜けた先に、一行は広がる空間にたどり着いた。


 そこは、浮遊島の中心に位置する「記録の間」――天空に浮かぶ記憶装置のような場所だった。

 無数の水晶のような球体が空間を漂い、それぞれが淡く発光しながら、空中に過去の映像を映している。


「これは……記録、なの?」

 クラリスが驚きに目を見張りながら、一番近くの球体にそっと手を伸ばす。


「触れないほうがいいにゃん、クラリスちゃん。時間を巻き戻す力、暴走するかもにゃん……」

 ミュリルが耳をピンと立てて、空気の歪みを感じ取っていた。


 シャルロッテが前に出て、淡く輝く球体のひとつに精霊語で語りかける。

「……《時の響きよ、我に示せ》」


 彼女の呪文に応じるように、水晶球のひとつが音を発し、やがて映像が浮かび上がった。


 古代の大陸。人々が空を見上げ、そこに浮かぶ“聖なる光の柱”を崇めていた。


「これ……“封印の儀式”? 中央にいるのは……聖女リアナ……?」

 フィーナが震える声で問いかける。


 そこに映った少女は、今まで書でしか知らなかったはずの聖女そのものだった。

 穏やかな微笑み。白銀のドレス。膝に伏せる多くの人々。そして、その背後には、巨大な“封印の扉”が存在していた。


「……あの扉、今の時の扉とは違う。もっと……原初の、何かを封じてるような……」

 イッセイは鋭く目を細める。


 クラリスが水晶球の下に刻まれた碑文を読み上げる。

「『その者、千年の時を超えて記憶を鎮め、世界の境界を守りし者……聖女リアナ、いま永遠の眠りの内に』……」


「世界の境界……?」

 セリアが眉をひそめた。


 そのとき、空間全体がわずかに揺れた。

 水晶球のひとつが不意に黒く濁り、違う映像が浮かび上がる。


 戦火に包まれる聖都、呻く人々、闇に呑まれゆく大地。そして――仮面の男。


「……あれは!」

 ルーナが思わず叫んだ。


「仮面の男……やっぱり、あの時見せた力は、聖女の封印と何か関係してるんだ」

 イッセイの瞳が鋭く光る。


 その映像の最後、仮面の男は空を指差し、叫ぶ。

『……目覚めの時は近い。封印は、既に……』


 次の瞬間、記録の間が激しく振動した。

 天井から亀裂が走り、空間に強烈な魔力が流れ込んでくる。


「これは……干渉を受けてる!? この場に“何か”が迫ってきてるにゃ!」

 ミュリルが警告を発するや否や、空間の中心に黒い瘴気の渦が発生した。


 そこから現れたのは、瘴気に包まれた巨大な獣の影。かつて闇ギルドの幹部が使役していたものに酷似している。


「迎撃態勢を! ここを守り切らないと、記録そのものが失われる!」

 イッセイが叫び、剣を抜いた。


「絶対に通さない……ここは、“真実”の眠る場所よ!」

 セリアも前へと出る。


 仲間たちは即座に陣形を整え、記録の間を守るべく迎撃態勢に入る。

 時の歪みと瘴気の渦中、迫る敵の群れに向けて――戦いが始まる。


 異空間の中心、時の扉の祭壇。光と影が交錯するその場所で、突如現れた仮面の少女の正体は、かつて聖女リアナと共に封印された“もう一人の聖女”――影の存在、"ノワール・リアナ"だった。


「あなたたち、知らなくていいことを……知ってしまったわね」


 仮面の奥から響く声は、まるで誰かを責めるようで、どこか哀しみに濡れていた。


「……リアナ、じゃない。けど、どこかで見たような」

 クラリスが目を細め、魔力の波長を読み取ろうとする。


「姿形は似ている……でも、魂の色が違うウサ」

 フィーナが震える声で言い、気泡の杖を構えた。


「ノワール・リアナ……それが、貴女の名か」

 イッセイは一歩前に出て、彼女と対峙する。


「聖女の“裏”……もうひとつの封印の鍵。私は、光のリアナと共に世界の均衡を保つため、この地に縛られていた……でも、千年の時を経て、封印はほころび始めた」


 ノワールは静かに仮面を外す。その素顔は、確かにリアナに似ていた。だが、眼差しは深い闇をたたえている。


「闇の力は、滅ぼすためにあるのではない。均衡を保つためには、必要な“夜”なの」


 そう告げた次の瞬間、時空が震えた。


「来るわよ、強力な反応……!」

 シャルロッテが警告を発する。


 時の祭壇の石畳が崩れ、そこから這い出してきたのは、瘴気をまとった魔獣たち――過去と未来の因果から外れた、異形の存在。


「時間の狭間にあるこの地だからこそ、封じられし“存在しなかったはずのもの”が集まってくるのね……」

 セリアが剣を抜き、静かに構える。


「皆、あたしが前線に立つ。援護を頼む」

 サーシャが一歩踏み出し、瞬時に二体の魔獣を斬り裂いた。


「にゃあああっ! 癒しと妨害、にゃんでも任せてにゃっ!」

 ミュリルが回復魔法とスロウを重ねて詠唱。


「バリアは任せて。絶対、誰も通さないウサ」

 フィーナが防壁を張り巡らせる。


 ノワール・リアナは戦いの様子を冷静に見つめながら、そっと右手を掲げた。


「これが、あなたたちの“選択”なのね。ならば見せて。光と闇を受け入れるに値する魂かどうか――」


 その言葉と共に、時の扉が青白く輝き、世界そのものがぐらついた。地面が崩れ、全員がそれぞれの場所に散らばる。


「くっ、みんな無事か!?」

 イッセイが叫ぶが、応答はなかった。


 彼が落ちたのは、何もない空間――時間の裂け目。

 だがその前方、光の柱の中に、うっすらと聖女リアナの姿が見えた。


「リアナ……? お前は……」


「イッセイ……選びなさい。“光”を信じるか、“闇”を認めるか。あなたにしかできないことがある」


 その言葉と同時に、彼の手の中で剣が赤く輝く。新たな力が呼応し、彼の中で何かが覚醒する。


「皆を……この世界を、必ず守る。それが俺の、選択だ」


 赤き剣を握り締め、イッセイは再び立ち上がる。

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