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侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!  作者: のびろう。
第6章 聖なる記憶と千年の封印

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聖域ルクスの雪原にて

「白い……世界、ウサ……」


フィーナの耳が震えるほどの寒気が、聖域ルクスの雪原を包んでいた。


辺り一面を覆う銀世界は、まるで時間さえ凍てつかせるように静まり返っていた。雪は止んでいるのに、どこか息苦しい。肌を刺す冷気には、ただの自然の力ではない何かが混ざっている。


「瘴気……残滓のようなものが漂ってる。魔力の流れが歪んでるわ」


シャルロッテが小声で言うと、彼女の肩に乗った小精霊〈シア〉もぶるっと震えた。


「この雪、精霊の加護ではない……何者かの意志で、冷やされている……っ」


イッセイはコートの襟を立て、前を歩くクラリスに視線を送る。


「さっきの分岐で良かったんだな?」


「ええ。地図によると、この先の峡谷を越えれば“祈りの礼拝堂”跡があるはず。リアナ様が最後に祈った場所……」


「でも、どうしてこんなに荒れてるのに、聖教国は放っておいたのかにゃん……?」


ミュリルが不安げに耳を伏せると、後ろからセリアが、腕を組んで答える。


「それだけ、立ち入りが危険ってことだ。軍でも制圧できなかった……そういうことだろう」


「へえ、そりゃあ燃える展開じゃないの。こういう時こそ、あたしの出番ってわけだな!」


リリィがいつもの調子で軽口を叩くが、足取りは慎重だった。


そして、雪の向こうから──音がした。


「……ギャアアアァァ!」


風を切り裂くような叫びと、獣の咆哮。数体の黒い影が、吹雪の中から跳び出してくる。


「瘴気獣!? こんなところまで──!」


シャルロッテの声に、イッセイが即座に剣を抜いた。


「全員、戦闘態勢! 前衛は俺とセリア、遊撃にルーナとサーシャ、後衛は支援を!」


「心得た、イッセイくん!」


ルーナの返事と同時に、セリアが雪を蹴って前に出た。


「くるぞッ──!」


氷に覆われた地面を滑るように突進してきた瘴気獣は、狼のような姿をしていた。牙は紫に染まり、目は赤く輝いている。瘴気の濃度は通常の三倍、すでに自然回復も間に合わない領域だ。


「これが……“封印の揺らぎ”による、瘴気の発露……!」


シャルロッテが呟きながら、精霊魔法で後衛を守る結界を張る。


「にゃんにゃんヒール、全力モードにゃんっ!」


ミュリルの回復魔法が前衛の身体を光で包む。フィーナもすかさず補助魔法を展開した。


「魔力強化フィールド、発動! 今のうちに一気に叩くウサ!」


イッセイとセリアが同時に飛び出した。


「──“双閃・霜天落とし”!」


「“牙月斬ッ!”」


二人の技が交錯し、雪原に瘴気獣の絶叫が響き渡る。


しかし、次の瞬間、後方から別の咆哮が響く。


「待て……もう一体来るぞッ!」


クラリスが警告の声を上げたとき、雪の中から巨大な影──まるで氷の竜のような姿が姿を現した。


「……これは、“守護者”じゃない。封印が……“何か”を呼び出している……!」


シャルロッテの蒼い瞳が震えた。


その瞬間、全員の胸に戦慄が走る。


「……本番はこれからってわけか。いいね、燃えてきたよ!」


リリィが微笑を浮かべ、背中の双剣を構える。


氷の聖域。崩れかけた封印。


その先にある“真実”を求めて、彼らの戦いは、いま、再び始まる──。


吹雪は、まるで世界の声をかき消すように激しさを増していた。


「この先に……祈りの礼拝堂跡があるはずウサ……けど、見えない……!」


フィーナが魔導石を灯して先を照らすも、前方は一面の白。視界は数メートル先で途切れ、音も匂いも、すべてを雪が飲み込んでいた。


「魔法による視界確保を……やってみます」


シャルロッテが魔導の結印を組み、精霊語で囁くように唱える。


「〈風精霊ノ名ニオイテ、霧ヲ祓イ給エ──〉」


風が唸り、視界が一時的に広がった。そこに浮かび上がったのは、崩れかけた古びた石造の礼拝堂だった。


「ここが……」


イッセイが足を止める。


石の壁面には精霊語で何かが刻まれていた。シャルロッテが即座に駆け寄り、指でなぞる。


「……これは、“世界の願い”と書かれてる。ここは、リアナ様が最後に精霊へ祈った場所……」


「瘴気の痕跡が濃い。これは……封印の“縫い目”が緩みかけてる証拠だにゃん……」


ミュリルの声がかすれる。


セリアとサーシャは、礼拝堂の周囲に警戒の目を配っていた。


「……妙だな。瘴気は確かに強いのに、魔物の気配はほとんどない」


「……いや、逆かもしれん」


イッセイが目を細めた。


「気配を“隠している”。ここは……“誰か”に守られているんだ」


その時だった。


「ようやく来たか、勇者の系譜よ──」


石壁の陰から声が響いた。現れたのは、漆黒のローブを纏い、目元だけを露出した人物だった。


「貴様は……!」


サーシャが即座に構えを取る。


男は微笑を浮かべたまま、ゆっくりと両手を広げる。


「ここは我が“主”の記憶が刻まれた地……精霊の祈りに触れる者よ。選ばれし者であるかを、試させてもらおう」


次の瞬間、礼拝堂の地面が震えた。


白銀の雪を突き破り、無数の黒き“瘴気の触手”が這い出してくる。その中心に立つ影は、かつて見た“仮面の男”によく似た雰囲気を纏っていた。


「精霊の力を……魔に変える禁呪……!」


シャルロッテが息を呑む。


イッセイは剣を構え、仲間たちを見渡した。


「ここで止めなきゃ、封印は完全に破られる。行くぞ、みんな!」


「了解ウサ!」


「にゃんにゃんヒール、最大展開にゃ!」


「俺に背を預けろ、イッセイ!」


「行きましょう、皆さん!」


雪と闇が交差する中、彼らは戦いの渦中へと飛び込んでいった──。

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