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侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!  作者: のびろう。
第6章 聖なる記憶と千年の封印

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聖なる記憶の書庫

聖教国の中心都市、聖堂都市イシュリールは、石造りの大聖堂と荘厳な尖塔が並び立つ聖地であった。

天を貫くような鐘楼が鳴り響くなか、巡礼者や信者たちが白い衣をまとい、祈りの言葉を口にしながら広場を行き交っていた。


「ここが……聖教会の中枢都市、イシュリールか」


イッセイは、フードを目深にかぶりながら街の雰囲気を見渡した。隣にはクラリスが、貴族らしい立ち居振る舞いで同行している。


「王国の特使という名目で入国はできたけれど、これからが本番ね。記録の殿堂にどうやって潜り込むか……」


「堂々と潜り込むウサ。王族推薦という切り札、使いどころじゃない?」


フィーナが得意げに笑う。クラリスは頷きながら、懐から金の紋章入りの推薦状を取り出した。


「父上からのものよ。学術研究の名目であれば、閲覧は可能なはず」


イッセイたちは、大聖堂の背後にそびえる巨大な図書施設「記録の殿堂サンク・メモリア」へと足を運んだ。


──天井が見えないほどの吹き抜け構造、幾万もの魔道書が浮遊し、光る糸で結ばれている。

中には神官服をまとった聖教会の学者たちが、無言で書を運び、記録を整えていた。


「すごい……本当に、記憶が封じ込められてるみたいな空間ね」


シャルロッテが目を見開き、魔力を感じ取るように空を仰いだ。


クラリスが前に進み、受付台に推薦状を差し出す。


「王国第三王女、クラリス・アークフェルド。聖女リアナに関する歴史資料の閲覧を希望します」


一瞬、受付の神官が息を呑んだ。


「……しばしお待ちを。特別閲覧室へご案内いたします」


イッセイたちは通路を抜け、魔封印のかけられた半球状の個室へと案内された。


その中にあった、厚い封印魔術がかけられた一冊の書物。

クラリスが静かに手を伸ばし、魔力でロックを解除する。


──ページがゆっくりと開かれ、そこに記されていたのは……。


「“聖女リアナ、封印の代償として、世界よりその存在を消されし者”……?」


イッセイが声を潜めて読み上げる。クラリスも眉を寄せた。


「これは……記録抹消。つまり、存在ごと歴史から消されたってこと?」


シャルロッテが、その書の傍に記されていた古い碑文を見つけ、目を凝らした。


「これ……精霊語です。読めます……“時の輪廻、封じられし深き闇、再び目覚めん時……光の記憶、道を示さん”」


「……封印が、弱まってきているということか」


イッセイが呟いた。


重苦しい沈黙が流れた。


──そして、何者かの気配が個室の外で揺らいだ。


「……誰かが近づいてくるウサ」


フィーナが耳をぴくりと動かし、気配に反応する。


「隠れた方がいいかもしれません。魔力の流れが少し……不穏です」


シャルロッテがそっと立ち上がり、結界の隙間に向かって小声で言った。


その瞬間、部屋の扉が静かに開いた。


「……どちら様かな?」


現れたのは、黒衣を纏った中年の男。肩には聖教会の高位神官を示す刺繍があり、その眼光は鋭く、イッセイたちを一瞥する。


「私は“記録の守り手”、ゼルガ。……王族推薦とはいえ、閲覧目的には相応の理由が求められる」


クラリスが一歩前に出て、丁寧に頭を下げた。


「聖女リアナの記録に関心がございます。王国でも異変が増えており、古代の伝承から学びたいのです」


ゼルガはしばし黙考し、目を細めた。


「なるほど……ならば、これも目を通しておくといい」


彼が手にしていたのは、薄く金に縁取られた巻物だった。


「これは『黙示の予告』。教会内でも閲覧が制限された文献だ。記録の殿堂が完成する前、聖女リアナにまつわる“異端文書”とされたものだ」


イッセイが慎重に巻物を受け取り、クラリスと共に内容を確認した。


そこには、次のように記されていた。


“聖女は、ただ封印を施したにあらず。命と記憶を代償に、世界の闇を閉ざした。だがその封印は千年の輪廻により、徐々に緩む定めなり。”


「千年の……輪廻?」


イッセイが呟くと、シャルロッテが再び碑文の断片に目を走らせた。


「時の輪は閉じていません。……封印が解かれるとき、“あるじなき闇”が再び姿を現すとあります」


「……仮面の男が言っていた“魔王”とは、その“主なき闇”のことか」


イッセイの言葉に、全員が静かに頷いた。


ゼルガは言葉少なに続けた。


「その闇が真に復活すれば、我ら聖教国とて持ちこたえられぬ。……お前たちが真に知識を求める者であるなら、この先の“封印の地”へ赴くがいい」


「封印の地……?」


「北の雪原地帯にある“聖域ルクス”。そこには、聖女リアナが最後に祈りを捧げた地がある。だが、今は結界も薄れ、魔物の出現も増えている」


イッセイは静かに頷いた。


「行ってみる価値はありそうだな」


「行くウサ!」


「もちろん、私たちも同行するわ」


クラリスとフィーナが声を揃えた。


そしてゼルガは最後に一言だけ、重く残した。


「気をつけるがいい。“真理”に触れることは、“覚悟”を問われることと同義だ」


石造りの回廊を出るイッセイたちの背中に、聖なる光が差し込んでいた。


物語は、再び新たなる地へと動き出す──。

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