表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!  作者: のびろう。
第5章 王都の休日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/214

シャルロッテ編「精霊の言葉と揺れる森」

王都の喧騒から少し離れた南の丘陵地帯。そこには、古くから“眠れる森”と呼ばれる広大な自然地帯が広がっていた。春の風にそよぐ草花の香り、緑の葉を揺らす優しい木漏れ日。しかし、シャルロッテの足は自然と重くなっていた。


「……風が、ざわついてる。いつもの調べじゃないわ」


ハイエルフの少女――シャルロッテは、長く艶やかな銀髪を風に流しながら、小さな吐息をついた。その肩に小さく揺れる、エメラルド色の羽根飾り。それは精霊との契約の証――森に息づく生命の声を聴く者だけが持つ、特別なしるしだ。


「あなたたち、今日はなんだか元気がないみたい……ねえ、教えて?」


シャルロッテは森の奥深くで、静かに語りかける。すると、木々の葉がそっと揺れ、ふわりと淡い光が舞い始めた。精霊たちが姿を見せる――それは、人の姿にも、光の粒にも似た、神秘的な存在。


『……汚れた風が、北から来る……千の眠り、目覚めの刻、近し……』


かすかな声――いや、これは精霊語。人の言葉ではないが、シャルロッテの心には、はっきりと意味が届く。


「千の眠り……目覚め……やっぱり、“魔王”のことなのね?」


声にならぬ返答に、彼女はそっと拳を握った。森に異変が起こっている。それは、ただの気まぐれでも、自然現象でもない。精霊たちが恐れている。“魔”の存在が近づいているということだ。


「……イッセイさんに、報告しなきゃ。でも……」


彼女は静かに首を振った。その場を離れる前に、もう一つ、やらなければならないことがある。


「この森の結界、少し補強しておくわね」


シャルロッテは腰のポーチから、小さな精霊石を取り出した。それを胸に掲げ、目を閉じる。


「――ルア・シルフィ・エルノア、風と命の契約において、ここに守護の輪を描き給え」


地面に淡く光る円が描かれ、草花がそよ風とともに揺れた。その中に宿る力が、森を包むように広がっていく。


「これで、少しは安心……できるといいのだけど」


そして再び、彼女は森の奥を振り返る。


「あなたたちも、無理をしないで。私たちが、必ずこの世界を守ってみせるから」


風に乗って届く、かすかな精霊たちのささやき。それに背を押されるように、シャルロッテは森をあとにした。


──


「おかえりなさい、シャルロッテさん!」


王都の宿舎に戻ると、ミュリルが跳ねるように駆け寄ってきた。


「にゃんにゃん! 森でなんかあったの?」


「……ええ、少し不穏な兆しがあったの。精霊たちが、“千年の目覚め”に言及していたわ。おそらく、魔王に関することだと思うの」


「ウサ!? そ、それって……!」


フィーナが目を丸くして、耳をぴくんと震わせる。


「やっぱり……間違いじゃないんだね」


そこに、イッセイも歩み寄ってくる。心なしか、彼の表情も険しい。


「精霊の森に行って、何か掴めたか?」


「……うん。はっきりとしたことは、まだ言えないけど、森の異変は“魔”の影響と見て間違いないわ。王都に向かう道すがらの風の流れが、明らかに変わってたもの」


イッセイは頷いた。


「ありがとう、シャルロッテ。君がいてくれて本当によかった」


「そんな……でも、嬉しい」


シャルロッテはほんの少し頬を染め、俯く。だがその瞳には、エルフの誇りと覚悟が宿っていた。


「精霊たちが恐れているのは、私たちが恐れるよりも深い絶望。なら、私はその声を伝える役目を果たしたい。自然と人との橋になりたいの」


「……ああ、その志、大事にしていこう」


そして、一行は次なる目的地――聖教会の本拠地、神聖レオノーラ王国へと旅立つ準備を始めた。


だが、その森の奥――誰も気づかぬほど深い深い場所では、小さな黒い影が、そっと目を開けていた。


それは、かつて世界を滅ぼしかけた存在の“欠片”――魔の目覚めが、静かに始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ