ルーナ編「夜の街と月明かりの言葉」
王都の夜、祭の余韻が残る街並みに、月明かりが柔らかく降り注いでいた。
白い石畳が光を反射し、建物の影が静かに伸びる中、ルーナは一人で街を歩いていた。
「ふぅ……賑やかなのも好きだけど、静かな時間も悪くないわね」
夜風に揺れる淡い銀髪が、彼女の横顔をふと幻想的に照らす。
そのとき――
「……おねーちゃん……」
聞き慣れない声に足を止める。
振り返ると、小さな少女が道端の影にぽつんと立っていた。
「どうしたの? こんな時間に……迷子なの?」
「う、うん……ままがいなくなっちゃったの……」
泣きそうな顔でしゃくりあげる少女に、ルーナは優しくしゃがみ込む。
「大丈夫よ。お姉ちゃんが一緒に探してあげるから」
手を取って歩き出すルーナ。
だが王都の夜は意外と複雑で、住民ですら迷う路地が多い。
「ねえ、おねーちゃん、なんでこんなに優しいの?」
「うーん、そうね……私は侍女だから、誰かのために動くのが当たり前なの」
「じじょ?」
「そう。誰かのそばで、力になりたいって思ってる人。……それが、私の誇り」
やがて、祭の屋台の明かりが見える場所へと出ると、少女の母親が必死に人混みをかき分けていた。
「ミナ! どこに行ってたの……!」
「ままーっ!」
抱き合う親子を見て、ルーナはそっと微笑んだ。
「ありがとう、お嬢さん……あなたがいてくれて、本当に助かりました」
「いえ、私はただ……当然のことをしただけです」
別れ際、少女が小さな声で言った。
「おねーちゃん……だいすき」
ルーナの胸に、ふわりと温かいものが広がった。
――たとえ地位や力がなくても、自分の手で守れるものがある。
月の光が照らす中、ルーナの背筋はいつになく凛としていた。
彼女もまた、自分の信じる道を歩んでいる。
静かな夜の中、その歩みは確かに続いていた。




