表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/171

護衛任務と、運命の三人

「今日の空、いい感じじゃない? “冒険日和”ってやつだね!」


旅路の途中、青く広がる空を見上げて僕はつぶやいた。


街から東の交易村へ向かう護衛任務。

荷馬車4台に商人と護衛5名、そして僕。

師匠のセリナとメルティも同行してくれているという、安心感MAXの初陣だった。


「気を抜くな。初任務は“慣れた道こそ危険”ってよく言うだろう」


セリナは相変わらずストイックだ。


「でも、イッセイ君の顔が前より頼もしくなってるよね〜♪」


メルティのひらひらローブが風に揺れる。


「前より、ですか?」


「うん。“守りたい”って顔してる。前は“覚えなきゃ”って顔だったからね」


「……そう見えてたんだ。たぶん、その通りかも」


(剣も魔法も、“誰かのために振るう”ために身につけた。だったら、いまがその時だ)


  * * *


午後になり、森の中の小道に差しかかったとき。


「前方から――悲鳴!? 子供の声だ!」


商人の一人が叫ぶ。


「全員停止! 戦闘準備!」


セリナがすぐさま指示を飛ばし、護衛たちが展開。


茂みの奥、明らかに魔物の唸り声が聞こえる。

僕は即座に走り出していた。


「イッセイ、単独行動は――!」


「行ってきます! 必ず戻るから!」


剣を抜きながら、声を張った。


  * * *


見つけたのは、開けた草地。


そこには、三人の少女がいた。

服はぼろぼろ、肌は傷だらけ。

銀髪の猫耳、青髪のウサ耳、そして黒髪の褐色肌――ダークエルフ。


彼女たちを囲むように、狼型の魔物――ブラッドハウルが5体。


(まずい……このままじゃ……!)


「――離れろ!!」


僕の声に反応し、魔物たちがこちらを睨む。

剣を構え、一気に距離を詰める。


「《フレイムショット》!」


先制魔法で一体の動きを止め、すぐさま斬りかかる!


「はっ!」


ザンッ!


炎の煙を抜けて、魔物の喉元を断つ。


「2体目――!」


「っ……主さま……?」


少女たちの声が聞こえた気がする。

でも、集中は切らさない。


「《風刃》!」


残りの魔物を距離から削り、動きが鈍った瞬間に、駆け込んで一閃!


――全滅。


静寂が戻った森で、僕は荒い息を吐いた。


「……ふぅ、間に合った、かな」


  * * *


三人の少女は、まだ恐怖に震えていた。

でも、僕が手を差し出すと――ウサ耳の子が、そっと指先で触れてきた。


「もう大丈夫。僕は君たちを助けに来た」


「……本当に、助けに……?」


「うん。誰かに命令されたわけじゃない。僕が、君たちを“守りたくて”来たんだ」


猫耳の子が涙を流した。

ダークエルフの少女は、歯を噛みしめながら言った。


「……信じないぞ、そんなこと……」


「信じてもらえるように、これから行動で示すよ」


  * * *


その夜、焚き火の前でセリナが言った。


「見事だったな。あの戦い方と判断力、君はもう一人前だよ」


「でも、一番大きいのは……あの子たちに出会えたことだと思うんです」


「そうね。運命ってやつかな」


「うん……でもその運命を選んだのは、イッセイ君だよ」


メルティが微笑む。


焚き火の影で、三人の少女たちは寄り添って眠っていた。

その小さな背中が、僕の胸の奥をじんわりと温める。


(この世界で、生きる理由がまた一つ、増えた気がする)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ