幕間「月夜の女子会」
ヒノモトの平穏を取り戻した春の夜。
旅立ちを明日に控えたイッセイの仲間たちは、宿の一室で静かな女子会を開いていた。
「こうして、皆で話すのも久しぶりよね」
クラリスが微笑むと、周囲の少女たちも一様に頷いた。
丸く並んだ座布団。中央には茶菓子と湯気の立つ茶器。
窓の外には、満月がやわらかく光を注いでいた。
「で、何から話す? やっぱり……イッセイくんのこと、だよね」
ルーナがにやりと笑いながら言うと、場がぱっと華やぐ。
「ふふ、隠しても無駄だにゃん。みんなイッセイのこと、好きなんでしょ?」
ミュリルが尻尾を揺らしながら挑発的に言う。
「わ、わたしは……っ、そ、その……」
セリアが顔を真っ赤にして俯いた。
「ボクも……イッセイと出会って、世界が変わったウサ」
フィーナが頬を染めながらも真剣な眼差しを浮かべる。
「わたしも……最初は商売相手だったのに、今じゃ……あんなに近くに感じるなんて思ってなかった」
リリィは小さく笑いながらお茶を口にした。
「……拙者も、あの者と剣を交え、命を預け合い、共に笑った。旅が終わっても、共にいたいと思っておる」
サーシャの言葉に、他の少女たちは少し驚きながらも、すぐに優しく頷いた。
「ボク、イッセイくんのそばにいたら、もっと強くなれる気がするウサ」
フィーナがそっと手を握ると、シャルロッテも小さく微笑む。
「……私は、まだ半人前だけど……イッセイ様の隣に並べるよう、精霊魔法も剣術も、もっと磨きたいと思っています」
「クラリスは?」
リリィが問いかけると、クラリスはしばし考え、微笑んだ。
「わたくしも……正直に言えば、イッセイの隣を歩みたい。でも、それはわたくし一人の願いではなくなったのですわ」
「……そうだね」
ルーナが頷く。
「イッセイくんって、ずるいよね。誰にでも優しくて、ちゃんと見てくれて……そりゃ、好きになるでしょ」
「でも、誰が一番なんて決めなくていいと思うの。わたしたち、対等な仲間だもん」
ミュリルの言葉に、一同が頷く。
「夢……か。ボクは、いつか皆と一緒に、お店を開きたいな。旅の思い出を詰め込んだ、お菓子と料理のお店」
「拙者は、剣術道場を開きたい。イッセイと共に――子どもたちに、戦うことの意味を教えてやりたい」
「わたしは、魔道具の商会を大きくして、世界中に支店を作る!」
「ボクは……お芝居がしたいウサ! 世界中の舞台で踊って、歌って!」
「わたしは……まだ考え中。でも、みんなと一緒なら、何でもできそう」
「……ねえ、もし夢が違っても、離れ離れになっても、また会おうね。絶対」
ルーナの言葉に、全員が頷いた。
「誓おう。月に。星に。そして……イッセイに」
クラリスが厳かに言うと、少女たちは一斉に手を重ねた。
「乾杯!」
「にゃーん!」
「ウサ〜!」
――月夜の誓いは、静かに、そして温かく交わされた。




