表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!  作者: のびろう。
第4章 冒険編 〜ヒノモトの侍〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/214

月影の決戦、仮面の王

「この城……どこか、異様に静かだな」


イッセイが呟いた。


瘴気の神社での死闘を終え、主城へと続く山道を抜けて辿り着いた先にあったのは、異様な沈黙と霧に包まれたヒノモトの中心、かつての栄華を象徴する大城――しかしその威容は、今や不気味な沈黙の殻と化していた。


「サーシャ、あなたの故郷……あまりにも様変わりしていて……」


クラリスが、憂いを含んだ眼差しで城を見上げる。


「……あぁ、こんなの、私が知っているヒノモトじゃない」


サーシャは唇を噛み締めた。


その時、城門前の広場に集まる人々のざわめきが耳に届いた。


「――民衆が……何か騒いでるウサ」


フィーナが不安げに耳を澄ます。


そこには、仮面をつけた男が壇上に立ち、人々に向けて高らかに演説をしていた。


「我が名はクロガネ=オウ。旧ヒノモト王家の血を引きし者なり! 我こそが新たなる時代の覇者、真なるヒノモトの王である!」


群衆はその言葉に喝采をあげていたが、その次の言葉に一行の表情は凍りついた。


「ヒノモトを瘴気に沈めた元凶、カグヤの血を引く反逆の一族……サーシャ=カグヤ。その者とその仲間たちを捕らえよ!」


「なっ……!? ふざけるなっ!」


サーシャが叫ぶも、人々の目はすでに扇動され、怒りと恐れに満ちていた。


「誤解だ! 話を聞いてくれ!」


イッセイが前へ出るが、群衆は一斉に押し寄せてきた。


「やめて! わたしたちは……!」


ルーナが叫ぶが、その声は届かず、一行は捕縛されてしまう。


暗く湿った牢獄。


「……くっ、どうしてこうなるのよ……」


セリアが壁を蹴る。


「冷静になってにゃん。あいつら、完全に騙されてるにゃん」


ミュリルが低く唸る。


「……あの仮面の男、ただの扇動者じゃない。裏に何かある」


イッセイは思案を巡らせながら、サーシャを見る。


「私は……この国を、守るって決めたのに……」


サーシャが項垂れたその時だった。


カシャン、と何かが外れる音。


「お待たせしました、お姫さま方」


月影のように現れたのは、黒装束に身を包んだ少女――旧ヒノモト家のくのいちだった。


「あなたは……!」


「名を、ユエと申します。元将軍家直属の密偵隊、現在は、主家再興のため動いています」


ユエの導きで一行は牢を抜け出し、地下道を通じて脱出。


「……ここが、旧ヒノモト家の隠れ家……?」


忍びたちが静かに動き回るその屋敷は、精緻な木造建築でありながら、あらゆる方向に逃走経路が張り巡らされていた。


そこに現れたのは、威厳ある老忍――ニンジャマスター「ハンゾウ」。


「そなたらが……将軍家の娘と、その仲間か」


「はい、サーシャ=カグヤと申します。どうか、この国を……取り戻すために力を貸していただけませんか」


サーシャが深く頭を下げた。


「……よかろう。我らの誓いはいまだ絶えておらぬ」


ハンゾウの言葉に、一同が静かに頷いた。


「明日、主城を取り戻す。カグヤの隠れ里と味方領主に援軍を要請する。夜明けと共に、決戦だ」


イッセイは剣の柄を握りしめた。


「終わらせよう、この瘴気に覆われた悲劇を」


闇夜に沈む主城の城壁を、静かに影が這っていく。


「ここが……忍びの隠れ家か」


瓦屋根と竹垣に囲まれた、趣ある古民家。その奥に潜むのは、ヒノモト旧王家に忠誠を誓い、闇に身を隠していた忍びたちである。


「ようこそ、我が隠れ家へ」


「イッセイ殿、サーシャ姫。まずは救出を喜ばせていただこう」


「ありがとう、助かった。だが……このままでは終われない」


イッセイの目は既に、仮面の男との決戦を見据えていた。


「主城の奪還には、奇襲しかない」

「だが、民衆が敵に回っている現状では……」


サーシャが眉をひそめる。


「殿。誤解を解く手段は、ある」


くのいちの一人が名乗りを上げる。彼女はサーシャの乳姉妹でもあるという。


「情報を拡散し、真実を告げれば、民の中にも立ち上がる者が現れましょう」


「それでも時間は限られてるウサ。明日の満月の夜、首領は“新たな王政”を布告すると発表してる」

フィーナが焦燥をにじませる。


「なら、今夜が勝負か」


イッセイが剣の柄に手をかける。その顔は冷静だが、全身から闘志が溢れていた。


「奇襲部隊、城内突入班、民衆工作班。それぞれに分かれて動くにゃん」

ミュリルが巻物を広げながら作戦を立てる。


「……いざとなれば、我らが前に立ちます」


クラリスとルーナが同時に言った。


「イッセイくん、私たちも一緒に戦うから」


「もちろんだ。全員で、生きて帰ろう」


そして——


夜明け前――ヒノモトの主城の周囲には、数百を超える決起軍が静かに息を潜めていた。忍びたちが展開した幻術の霧が、城壁を包み込み、まるで月影が戦の舞台を静かに見下ろしているかのようだった。


「作戦通り、北門から陽動をかける。俺たちは西の地下道から侵入だ」


ハンゾウと呼ばれる老練な忍び――忍者衆を束ねるニンジャマスターが、鋭い眼差しで指示を飛ばす。


「皆、準備はいいか?」


イッセイが振り返ると、サーシャをはじめとする仲間たちは力強く頷いた。


「拙者、刀に誓いを」

サーシャの眼差しは炎のように燃えていた。


「いっせいくん……絶対、戻ってきてね」

ルーナがいつになく真剣な顔で袖を引く。


「この戦いが終わったら、一緒にまた旅を続けましょう」

クラリスも微笑みながらも、強い意志を宿す瞳で彼を見つめた。


「リリィのファンの前で負けたりしたら、商会の評判が落ちるからねー?」

リリィが軽口を叩きながら、そっとイッセイのマントを直す。


イッセイは一人一人に頷き、剣の柄を握り直す。


忍びの導きにより、一行は城の地下道へと侵入する。道中、罠と闇ギルドの配下たちが現れるも、ハンゾウを筆頭とする忍びたちが道を切り開く。


そして、ついに玉座の間へと辿り着いた。


「ようこそ、反逆者ども……我が新たなる秩序の礎となるがいい」


玉座に座していたのは、仮面の男。漆黒の仮面、背後に渦巻く闇の魔力、異形の瘴気をまとい、その姿はもはや人とは思えない。


「お前が……全ての元凶か!」

イッセイが怒りに燃えた声を上げる。


「この国は、腐り果てた王族どもに支配されていた。新たなる秩序こそ、この国の真の救済だ」


「お前はただの暴君だ……! 自分の欲望を正義にすり替えるな!」

サーシャが剣を構える。


仮面の男が手をかざすと、闇精霊が現れ、その身体と融合するように溶け込んだ。


「来るがよい……死をもって、正義の終焉を見届けろ」


イッセイとサーシャが同時に駆け出した――


鋼と鋼が激突し、魔力がぶつかり合い、玉座の間は戦火の渦となった。イッセイの剣技は凄まじいが、仮面の男の力はそれを凌駕する。


「がっ……!?」

イッセイの胸に闇の爪が突き刺さり、彼の身体が吹き飛ぶ。


「イッセイくんっ!!」


悲鳴が上がる中、イッセイの命の火が消えかける……しかし、その時。


「……まだ、終われない……!」


最後の力で彼は「神命の雫」を取り出し、胸元で輝きを放つ。命が蘇り、傷が癒えていく。


「立て……イッセイ」


サーシャの背後から、風の精霊が現れた。その名は――【スイレン】。


「貴女の想い、我が風が受け取った」


サーシャの髪が風に舞い、剣が青白く輝き出す。


「風よ、我が刃となれ……!」


イッセイも仲間たちの加護を受けて再び立ち上がる。


「イッセイくん、バフ、いっくよー!」

ルーナの魔法が彼の身体を覆い、クラリスが強化魔法を重ねる。


「見てなさい……あなたは、独りじゃないわ」

クラリスが優しく囁いた。


「サーシャ、いけるか!」


「応!」


イッセイとサーシャは息を合わせ、渾身の奥義を放った。


「蒼刃風迅・双華断!!」


一閃。


仮面の男の身体を光と風が切り裂いた。


「ぐあああああああ……ッ!」


崩れ落ちる仮面。そこには苦悶に歪んだ男の顔。


「……我らが主、魔王さまの……夜は……これからだ……」


呟きを残し、男は黒い塵となって消え去った。


ヒノモトに、再び光が戻りつつあった――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ