試される剣、はじまりの旅路
「それじゃ、いってきます!」
朝日を背に、僕――イッセイ・アークフェルドは屋敷を出た。
今日は記念すべき日。ついに――
「10歳、冒険者登録デビューです!」
「……お弁当、入れておきましたので!」
後ろからエリナが手を振って見送ってくれる。
剣を腰に、軽装の旅装に袖を通し、僕はギルドのある街へ向かった。
* * *
「おや〜? 小さなお坊っちゃん、冒険者志望かい?」
「はい。修行は5年積んできました。試験、受けさせてください」
受付嬢の茶髪お姉さんがにやりと笑う。
「意気込みはいいね。でも、登録には実技テストがあるんだ。まだ10歳でしょ? 本当に大丈夫?」
「僕、こう見えて……結構やってきましたので」
「そう言う子に限って“あれ?”ってなるんだけどね〜。ま、試すのはタダだ。行ってみよっか!」
* * *
案内されたのはギルド裏の訓練場。そこには、木人、模擬魔晶石、簡易的な戦闘スペースが用意されていた。
「剣術・魔法・反応テスト。ひととおりできれば、Dランクスタート。合格ライン以下なら保留、または補助職登録ね」
「了解しました。よろしくお願いします」
(……ふう、緊張するけど、ここまで来たらやるしかない)
まずは木人に向かって一撃。
「はっ!」
構え、踏み込み、斬撃。力よりもフォームを重視した一閃が、正確に木人の急所を捉える。
「……ふむ。フォームは基礎通り、無駄がない。次、魔法」
「《フレイムショット》!」
詠唱とともに小型の火球が放たれ、魔晶石の的に命中。綺麗に焼き焦がす。
「詠唱短め、制御良好、威力も十分。ラスト、反応確認――」
「了解!」
放たれた模擬矢をギリギリで回避! 軽やかに横に跳び、片足で着地。
「……」
「……ダメですか?」
「ううん。完璧すぎて何か仕掛けたかと思っただけ」
* * *
「というわけで、イッセイ君。仮Dランク登録、おめでとう!」
「ありがとうございます!」
ギルドカードを受け取った瞬間、自然と顔がほころぶ。
目標の一つを、確かに自分の手で掴んだ気がした。
「で、さっそくだけど、初依頼受ける?」
「受けます! えっと、できれば実戦経験を積めるような……」
「ふふ、実はちょうどいいのがあるんだよねぇ。君の“元・先生たち”からの推薦付きで」
「え?」
* * *
「やあ、久しぶりだね、イッセイ」
「ほんと〜、ちょっと見ない間に“冒険者の顔”になってるじゃん!」
目の前に現れたのは、剣の師匠・セリナと、魔法の師匠・メルティ。
今は現役のBランク冒険者であり、今回の依頼――交易商隊の護衛任務のリーダーを任されているらしい。
「師匠たちと一緒に任務……! なんか、すごく安心できるし、緊張します!」
「最初の現場は、ちゃんと信頼できる仲間と行くべきだ。貴族の坊ちゃんでも関係ない。実力で証明しろ」
「うんっ! 頑張ります!」
「ふふ、じゃあ張り切っていこ〜!」
こうして僕の冒険者生活は、実戦の第一歩へ。
この先で、どんな出会いがあるのか――それはまだ、誰も知らない。