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侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!  作者: のびろう。
第3章 冒険編 〜ハイエルフとの出会い〜

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決断と祝福の精霊

 森の奥深く、瘴気の中心部にもっとも近いとされる「禁域」。その結界の前に、イッセイたちはついにたどり着いた。


 黒くねじ曲がった根が地表を這い、毒々しい紫煙が静かに立ち上る。空気そのものがどこか淀んでおり、息をするたびに体力が削られていくような圧迫感があった。


「ここが……魔樹の瘴気の根源か」

 イッセイが剣に手をかけながら、慎重に周囲を見渡す。


「空気の密度が変わってる……まるで、この場所そのものが異界に近いような気配ですの」

 クラリスが眉をひそめ、護衛のルーナがそれを支えるように立つ。


「精霊たちが……泣いている。ここにいるだけで、心が締めつけられるようだわ」

 シャルロッテが胸元に手を当て、精霊との交信に集中する。


「けど、まだ完全には堕ちてない。希望は……残ってる」

 フィーナが前に出て、魔力を周囲へと広げながら言った。


 その瞬間、大地が大きくうねり、腐ったような臭気と共に巨大な魔物が姿を現した。


 木と獣が融合したような異形の存在で、体中から瘴気が噴き出している。

 無数の触手、赤黒く濁った瞳、口の代わりに裂けた顎から漏れ出す瘴気の波——。


「出やがった……ッ!」

 イッセイが剣を抜き、瞬時に構える。


「イッセイくん、援護するにゃん!」

 ミュリルが跳躍し、双剣を抜いて急接近。


「回復と支援は任せて、うさ!」

 フィーナが結界を展開し、味方全体を包むように魔力を流し込む。


「まさか、ここまで来るとは……けれど、引くつもりなどありません!」

 セリアが毅然とした態度で前線に躍り出た。


「私も行くよ!」

 リリィが弓を構え、矢に魔力を纏わせる。


 激戦が始まった。


 魔物の触手がうなりを上げ、瘴気が空間を歪めていく。

 イッセイの剣が光を切り裂き、ミュリルとルーナが左右から挟み撃ちし、セリアが鋭く踏み込む。

 フィーナが全体を支援し、リリィが遠距離から狙撃する中、シャルロッテだけが一歩後ろで震えていた。


「……私に……できるの? 本当に……」


 その声はかすかだったが、イッセイには届いた。


「シャルロッテ!」

 イッセイが強く叫ぶ。

「君の祈りを、精霊たちはきっと聞いてくれてる。信じるんだ、自分を」


 だがそのとき、魔物が怒り狂ったように瘴気を爆発させた。

 濃厚な闇が辺りを包み、視界を奪い、仲間たちをそれぞれ孤立させるように押し分ける。


「っく……この、瘴気の壁……!」

 ルーナが咳き込みながら剣を構えるも、視界はゼロ。


「イッセイくん! どこ……っ!」

 ミュリルの叫びも、濁った空気にかき消された。


 その時だった。濃霧のような瘴気の中から、無数の触手が飛び出し、セリアとフィーナを打ち倒す。


「がっ……!」


「セリア!? フィーナ!」


 イッセイが声を上げた次の瞬間、瘴気が襲いかかり、イッセイの体も地面に叩きつけられる。


「……くっそ……負けられない……」

 膝をつきながら、それでも剣を手放さない。


 だが、誰の目にも状況は絶望的だった。


「もう、ダメ……」

 シャルロッテが震える声で呟いたその時——。


 森の風が大きく渦を巻き、空間がひときわ輝いた。


 柔らかな光が降り注ぎ、そこに現れたのは、精霊《シェイル=アルファリア》。銀白の髪をなびかせ、気品に満ちた人型の姿をとる。


『森の娘よ。そなたの声、確かに届いている。我が名はシェイル=アルファリア。風と清浄の祝福を司るもの』


「シェイル……アルファリア……?」

 シャルロッテは光の中で手を伸ばし、涙を流しながら微笑んだ。


『そなたの勇気に応えよう。我が祝福を、この地に。そして、そなたに』


 精霊の力が彼女の身に宿る。

 まばゆい風の光が舞い、シャルロッテの身体を包み込む。


「……これが、精霊の祝福……あたたかい……」


 そして彼女は静かに瞳を開き、輝く風を纏って前へ進み出る。


「イッセイさん、今です!」


「ああっ、行くぞ!」


 イッセイが前に踏み込み、全員の動きが一つに合わさる。


 ルーナとセリアが魔物の動きを封じ、ミュリルが脚を切り裂き、リリィの魔法矢が急所を射抜く。

 シャルロッテは精霊の加護で全員を支えながら、風の刃を放つ。


「——いけえぇっ!!」


 イッセイの剣が光を放ち、魔物の心核を貫いた。


 魔物が絶叫をあげ、瘴気が晴れ渡っていく。

 風が吹き抜け、草木が震え、小鳥のさえずりが森へ戻ってきた。


「終わった……んだね」


 シャルロッテがその場に膝をつく。


 イッセイがそっと彼女に手を差し伸べた。


「君のおかげだ。君の力がなければ、この森はもう……」


「私じゃありません……精霊たちが、皆さんが……でも……私も、少しは役に立てたなら」


 彼女の瞳は、澄み切った空を見上げていた。


 そして、風が二人の頬を優しく撫でた。


 森は、静かに呼吸を取り戻していた。

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