旅立ち、大陸縦断の風に乗って
王都から東へと延びる街道を、一行は馬車で進んでいた。
車内には、どこか浮き足立った空気が流れている。
「ん~っ! 旅って最高ウサ!」
フィーナが伸びをしながら叫んだ。長い耳がぴょこぴょこと揺れる。
「フィーナ、落ち着いて。馬車の屋根を突き破る気?」
隣でミュリルが半眼になりながら、膝の上で眠る猫耳を震わせる。
「ふふ、いいじゃない。フィーナが元気な方が楽しいわ」
リリィが笑い、向かいの座席で彼女に微笑みかけた。
「まったく、騒がしい連中ね。イッセイ様、こんな子たちを連れて大丈夫なの?」
セリアが腕を組みながら、やや呆れた顔で言う。
「大丈夫さ、みんな頼もしい仲間だよ。……僕にとっては、家族みたいなものだからね」
イッセイはそう言って、車窓から見える草原の広がりに目を向けた。
卒業と同時に、彼らは冒険者としての正式な旅に出ることを決めた。
行き先は北方、幻の地と噂される「ハイエルフの里」へ。
「……本当に、行くのね」
クラリスが静かに言った。
その横では、ルーナが頬杖をついて、からかうように微笑む。
「ふふ、イッセイくんが行くなら、私も行くに決まってるでしょ」
「当然ですわ。わたくしも……あなたの隣にいたいのですもの」
イッセイは苦笑しながら、どちらにも視線を向けた。
「ありがとう、二人とも。危険な旅になるかもしれない。でも、それでも――」
「だから、行くのよ」
ルーナが言葉をさえぎるように笑って言った。
「イッセイくんが一人で危ない目にあうなんて、許せないもの」
「……そういうこと、ですわ」
車輪が石を踏み、揺れる馬車の中で、心の中は不思議と静かだった。
どこか、これから訪れる未来が――楽しみで仕方がない。
街道を進み、昼食休憩をとった先の村では、依頼を受けて魔獣の駆除を行った。
「やるじゃない、イッセイ。完全に仕留めたわね」
「ありがとう、リリィ。けど今回はセリアが先陣を切ってくれたからこそ、だよ」
「……べ、別に、あんたの役に立てたからって、嬉しいわけじゃないんだからっ」
「はいはい、ツンツンご苦労様。……にゃー、なんか疲れたにゃん」
軽口と笑い声が、夕焼けに包まれた村に響いた。
旅は順調に、しかし確実に、彼らを新たな運命へと導いていく。
そして数日後。
遥か北方の山脈を越える直前。
そこには、風にそよぐ光の森。
まだ誰も知らぬ、出会いが待っていた。




