表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/171

家庭教師は美少女剣士と魔法使い!?

「イッセイ様、ご準備は?」


「うん、今日は初めての剣と魔法の授業だね。少し緊張してるけど、楽しみでもあるよ」


晴れた朝。僕は屋敷の中庭で深呼吸をひとつ。

今日から、冒険者ギルドから派遣された家庭教師が来てくれることになっていた。


(前世ではプログラマーだったけど、こっちでは剣も魔法もゼロから。しっかり学ばないと)


扉がノックされ、エリナが恭しく開く。


「ご紹介いたします。剣術担当のセリナ様と、魔法担当のメルティ様です」


「よろしくお願いします。剣術をお教えする、セリナ・バレンティアです」


「魔法担当のメルティ・クラウゼルです♪ 一緒にがんばりましょうね、イッセイ君っ」


現れたのは、二人の若く美しい女性。

クール系の剣士と、ほんわかした魔法使い。……完全に漫画で見たような組み合わせだ。


「お二人とも、よろしくお願いします。僕、全力で学びますので」


  * * *


まずは、剣術の基礎。


「では、構えからいきましょう。イッセイ様は剣を握るのも初めてですよね?」


「はい。見よう見まねでも動いてみたことはあるけど……体で覚えたことは、まだないです」


「ならば、ゆっくりやっていきましょう。大事なのは姿勢とバランスです」


構え方、足の位置、重心移動――

セリナ先生は驚くほど丁寧で、わかりやすかった。


「……ふむ。初めてにしては飲み込みが早いですね。体の使い方に“無駄”が少ない」


「そう言ってもらえると、ちょっとだけ自信が出ます」


もちろん、“剣聖”スキルがほんのり補正をかけてくれてるのもあるだろう。

でも、あくまで助け程度だ。動きが洗練されていくのは、反復して、考えて、意識しての結果だ。


「じゃあ次は……ゆっくり素振りを百回。フォームを崩さないようにね」


「百回、ですね……了解。やります!」


(いきなりSランク! みたいな展開は正直リアルじゃないしね。しっかり積み重ねて強くなろう)


  * * *


午後は、魔法の授業。


「まずは《マナ感知》からですね〜。

自分の中にある“力”を意識して、静かに感じてみてください」


「……なるほど、魔力っていうのは……“熱”に近い感覚なんですね」


「おお、すごいすごい! 初日で感知できる人、珍しいですよ〜!」


「本当ですか? でも、うまく扱える気はまだしません」


「それで十分です♪ 最初は感じるだけでも一苦労なんですから」


イッセイの魔力は多い方らしいが、だからといって魔法がポンポン撃てるわけではない。

詠唱、制御、イメージ、それらを正確に積み上げて、ようやく魔法になる。


「今日は基礎の《灯火ライト》を目指しましょう。小さな魔法だけど、大切な一歩です」


「はい。よろしくお願いします、先生」


  * * *


その日の授業が終わる頃には、全身汗だくになっていた。

木剣を振り、詠唱を重ね、足も手もパンパンだ。


でも――


「……楽しかったな」


「お疲れさまでした、イッセイ様。今日はぐっすり眠れそうですね」


「うん。剣を振るのも、魔法を使うのも、すごく新鮮だった。

前世にはなかったものばかりで、どんどん世界が広がっていく気がするよ」


「明日は、実践練習を予定しております」とセリナ先生。


「魔法は《フレイム》に挑戦しますよ〜♪」とメルティ先生。


「おお……これは筋肉痛が続きそうだね」


思わず苦笑いしながら、僕は夕焼けの空を見上げる。

体は重い。けど、心は軽かった。


(一歩ずつでいい。ゆっくりでも、確実に強くなる。

この世界で、生きていくために――)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ