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侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!  作者: のびろう。
第15章 最後の神具と、神々の審判

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第三の選択、魂を乗せた剣

《さあ、選べ》


オリオンの声が、最後の審判のように、音のない祭壇に響き渡る。


《一人の永遠の苦しみか、世界の永劫の混沌か。どちらの“理”が、より優れている?》


その問いは、俺たちの心を容赦なく引き裂いた。

目の前で揺らめく黄金の天秤。


その両皿に乗せられた、あまりにも重い二つの未来。

仲間たちが、顔を見合わせる。その瞳には、深い苦悩と葛藤が浮かんでいた。


『……そんな……』


シャルロッテを通じて、クラリスの震える心の声が届く。


『……王として……民の平和を守るのが、わたくしの務め……。たとえ、それがどれほど非情な選択であったとしても……一人の犠牲で、数多の民が救われるというのなら……わたくしは……選ばなければ……ならないの……?』

彼女は、王として民の平和を守るべきだと、唇を噛み締める。その顔は、血の気が引いていた。


『……否』


今度は、サーシャの鋼のような意志が響く。


『……一人の無辜の魂を見捨てることは、武士の道に反する。そのような偽りの平和の上に立つ誉れなど、拙者は望まぬ。たとえ世界が混沌に満ちようとも、守るべき一人の命を見捨てることは、できぬ……!』

彼女は、一人の無辜の魂を見捨てることはできないと、拳を握りしめる。


『でも、あの混沌は……地獄だったウサ……』


『そうよ……あたしたちが守りたかった笑顔なんて、どこにもなかったじゃない……』


フィーナとリリィの心は、混沌の未来がもたらす絶望に打ちのめされていた。


『……だからって、誰かがずっと泣き続ける世界が、幸せだなんて思えないにゃ……』


ミュリルの声も、悲痛に揺れる。

仲間たちの心が、引き裂かれそうになっていた。


どちらを選んでも、待っているのは地獄だ。

俺たちがこれまで信じてきた“正義”が、今、神々の理不尽な天秤の上で、その価値を問われていた。


「……黙れ」


その沈黙を破ったのは、俺の声だった。

いや、声にはなっていない。


魂の、叫びだった。

仲間たちが、はっとしたように俺を見る。


「それは、選択肢じゃない。ただの、神々の押し付けだ」


俺は、仲間たちの前に進み出た。そして、絶対的な理の化身であるオリオンを、真っ直ぐに睨みつけた。


「あんたは言ったな、『どちらが正しいかを選べ』と。だが、どっちも間違ってる! そんな二つの未来しか創れないなら、そんな神々の理そのものが、欠陥品なんだよ!」


《……何だと?》


オリオンの思考に、初めて明確な“不快”の色が混じった。


《神々の理は完全無欠。絶対の法則だ。それを、欠陥品だと?》


「ああ、そうだ!」


俺は叫び返す。


「あんたたちの理屈には、一番大事なものが欠けてる! それは、“心”だ! 哀しみに寄り添い、共に涙を流し、それでも前に進もうとする人間の心だ! あんたたちは、その心を『非効率なバグ』と切り捨てた! だから、そんな絶望的な未来しか計算できないんだ!」


俺は、仲間たちから受け取った二つの神具――《赦しの聖杯》と《絆の宝冠》を、空間に具現化させた。


「俺たちは、哀しみを乗り越える力を知った! 《嘆きの神殿》で、涙の跡に希望の花が咲くことを、この目で見たんだ!」


聖杯が、温かい光を放つ。


「俺たちは、絆で結ばれた心が、偽りの幸福を打ち破ることも知った! 《歓喜の城塞》で、独りぼっちの楽園よりも、仲間といる不完全な現実を選ぶと誓ったんだ!」


宝冠が、七色の輝きを放つ。


「だったら、創れるはずだ! 魔王の魂を救い、それでもなお、世界が混沌に堕ちない未来を! あんたたちのくだらない計算式にはない、俺たちの手で創り出す、第三の未来をな!」


俺は、天秤へと歩み寄る。オリオンが、無言の圧力で俺を制止しようとする。


《愚かな。神々の審判を汚す気か》


「汚す? 違うね。上書きするんだよ」


俺は、宝玉が置かれた皿ではない、天秤の支柱、その中央に――リアナから受け継いだ《精霊剣》を、静かに捧げ置いた。


その剣は、もはや俺一人のものではない。

クラリスの誇り、ルーナの自由、リリィの情熱、セリアの忠誠、サーシャの誠意、シャルロッテの慈愛、フィーナの希望、そしてミュリルの温もり。仲間たち全員の魂が宿った、俺たちの“絆の象徴”だ。


「俺は、あんたが提示した未来を選ばない!」


俺は、オリオンに向かって、そしてこの世界の理そのものに向かって、宣言した。


「俺が選ぶのは、混沌でも、犠牲でもない! ここにいる、俺の大切な仲間たちだ! 俺たちは、哀しき魂を救い出す! そして、その先に来る混沌があるというなら、それも俺たちが全員で受け止めて、乗り越えてみせる! それこそが、俺たちの見つけた、たった一つの“答え”だ!」


俺の魂の叫びに呼応し、精霊剣が、世界そのものを照らし出すほどの、眩い光を放った。

その光は、神々の冷たい理を溶かす、人間たちの、不屈の“想い”の輝きだった。

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