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侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!  作者: のびろう。
第14章 歓喜の城塞と、偽りの楽園

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202/214

エピローグ 楽園の跡地で、交わす本当の言葉

がらんとした城塞の跡地で、俺たちは火を囲んでいた。

かつてここにあったはずの壮麗な建物は幻と消え、今はただ、神代の星座が輝く夜空と、静かに揺れる焚火の炎だけが俺たちを照らしている。


「それにしても、王妃になったわたくしも、なかなかでしたでしょう?」


沈黙を破ったのは、クラリスの茶目っ気のある声だった。

彼女は頬杖をつきながら、楽しそうに幻影の世界を振り返る。


「ふふっ、あたしと夫婦になったイッセイくんも、結構幸せそうだったわよ? 毎日あたしのためにコーヒー淹れてくれて」


ルーナも負けじと応戦する。

ヒロインたちは、先ほどまで見ていた幻影の話で盛り上がっていた。


それはもう、心を抉る辛い記憶ではない。自分たちの“ありえたかもしれない未来”として、そして何より、仲間がいない世界がいかに空虚であったかを確かめ合った、大切な思い出として、笑い話に変えていた。


「あたしなんて、世界一の大商人よ? でも、一人で食べる豪華ディナーほど不味いものはなかったわ。やっぱり、みんなでワイワイ言いながら食べる、焚火の周りの干し肉が一番よ」


リリィがそう言って笑うと、皆が頷いた。


「うむ。拙者の兄上が生きておられる世界は、確かに夢のようであった。だが、そこに貴殿らの騒がしい声がなければ、ただの静かな過去でしかない。拙者が生きるべきは、“今”なのだと、改めて知った」


サーシャの言葉には、迷いを断ち切った武士の清々しさがあった。

一人、また一人と、彼女たちは語っていく。偽りの楽園で得た完璧な幸福と、それでも拭えなかった喪失感を。

そして、最終的に、この不完全で、騒がしくて、手のかかる“現実”を、自らの意志で選んだということを。


俺は、そんな彼女たちの話を、ただ黙って聞いていた。そして、手にした《絆の宝冠》をじっと見つめる。

それは、俺たちの想いの重さそのものだった。

やがて、皆の話が一区切りついたのを見計らって、俺は静かに口を開いた。


「……俺は、選べなかった。……いや、選ばなかった」


俺の言葉に、皆が静かに耳を傾ける。


「幻の中で、世界は俺に選択を迫った。誰か一人を選べ、と。そうすれば、お前だけの完璧な幸せをやろう、と。……正直、一瞬だけ、心が揺らいだ。戦いのない、穏やかな世界。愛する誰かと、ただ静かに暮らす未来。それは、確かに魅力的だった」


俺は、ゆっくりと仲間たち一人ひとりの顔を見渡した。


「でも、できなかった。クラリスのいない世界も、ルーナのいない世界も、リリィのいない世界も……誰か一人でも欠けた未来を、俺は“幸せ”だなんて、到底思えなかったんだ」


俺は立ち上がり、宝冠を胸に抱いた。


「だから、誓うよ。俺は、お前たち全員が、心の底から笑える未来を創る。誰一人、欠けさせない。必ずだ」


それは、プロポーズにも似た、俺の魂の誓いだった。

その言葉に、ヒロインたちは息を呑み、そして、ゆっくりと、その瞳を潤ませていった。


俺は、彼女たちの前に進み出た。

そして、一人ひとりの手を取り、その瞳を真っ直ぐに見つめて、俺自身の想いを告げる。


「クラリス。俺は、お前の隣に立つ王にはなれないかもしれない。だが、お前が背負う王冠の重みを、共に背負うことはできる。お前が民を愛するように、俺はお前を、生涯をかけて守り抜くと誓う」


「……イッセイ様……。その言葉だけで、わたくしは、世界一の幸せ者ですわ」


「ルーナ。俺は、お前の自由な魂が好きだ。だから、どこへでも行け。世界の果てまで、冒険しろ。俺は、お前がいつでも帰ってこられる“港”になる。お前だけの、安らぎの場所に」


「……ふふっ。ばかね。あたしが帰りたい場所は、最初からあんたの隣だけだって、まだ分かんないの?」


「リリィ。お前の夢は、俺の夢だ。世界中を笑顔にするっていう、そのとんでもない夢、最後まで付き合わせてもらうぜ。最高のビジネスパートナーとして、そして……人生のパートナーとして」


「……ずるいわよ、あんた。そんなこと言われたら、あたし……一生あんたに、投資し続けるしかないじゃない……!」


「サーシャ。お前の剣は、もう過去を断ち切るためのものじゃない。未来を切り拓くためのものだ。その剣の、最初の鞘に、俺をさせてくれ。お前が戦いに疲れた時、いつでもその刃を休められる場所になる」


「……イッセイ殿。……その儀、謹んで、お受けいたします。我が剣も、我が心も、すべては貴殿と共に」


「セリア。お前は、俺の背中を守ると言ってくれたな。だが、これからは俺がお前の背中を守る。お前が安心して前だけを見ていられるように。だから、もう一人で全部背負い込むな。俺を、頼ってくれ」


「……っ! そ、それは……命令、と捉えて、よろしいのですね……? ……はい、イッセイ様」


「シャルロッテ。お前は、精霊と人の架け橋だ。その優しさは、時に自分を傷つける。だから、俺がお前の盾になる。お前が、その優しさを失わずにいられるように、俺が全ての穢れからお前を守る」


「……イッセイさん……。あなたこそが、わたくしの心を照らす、一番の光ですわ」


「フィーナ。お前の歌は、世界を元気にする力がある。だから、これからも歌い続けてくれ。お前が歌いたいと願うなら、俺が、世界中どこへでも、そのステージを用意してやる」


「う、うさーっ! うんっ! ボク、歌う! イッセイくんのために、世界一の歌を!」


「ミュリル。お前は、もう独りじゃない。お前が寂しい時は、俺がそばにいる。お前が眠りたい時は、俺の膝を貸してやる。お前は、俺のかけがえのない、大切な家族だ」


「……にゃん……。うん……。家族……だにゃ……」


一人ひとりに想いを告げ終えた時、俺たちは、自然と一つの輪になっていた。

ヒロインたちは、顔を赤らめながらも、涙を浮かべながらも、世界で一番幸せそうな顔で、一斉に頷いた。


神々の試練は、俺たちの絆を、また一つ、本物へと変えてくれたのだ。

手にした《絆の宝冠》が、俺たちの誓いに応えるかのように、温かく、そして力強い輝きを放っていた。


俺たちの、神々に抗う旅は、まだ続く。

だが、もう何も怖くはなかった。

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