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侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!  作者: のびろう。
第14章 歓喜の城塞と、偽りの楽園

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絆の宝冠、神々の沈黙

偽りの世界が、ガラスのように砕け散った。

俺が最後に見たのは、俺の叫びに応えるかのように、光と共に現れた仲間たちの幻影だった。


その光景が薄れ、意識が現実へと引き戻される。


気がつくと、俺は、がらんとした何もない空間に一人立っていた。

白亜と黄金で彩られていたはずの《歓喜の城塞》は、その華やかな装飾をすべて失い、ただの骨組みだけの、無機質な遺跡へとその姿を変えていた。

静寂が、耳に痛い。


「……みんな……?」


俺は、不安に駆られて叫んだ。

まさか、俺だけが帰ってきてしまったのか? 彼女たちは、まだあの甘美な牢獄に囚われたままなのか?


血の気が引いていくのが分かった。独りぼっちの楽園を拒絶した結果、独りぼっちの現実に放り出されたというのなら、これ以上の皮肉はない。


その、時だった。

俺の背後で、パリン、と空間が砕ける音がした。


「……イッセイ様……!」


振り返ると、そこにいたのはクラリスだった。涙で瞳を潤ませ、それでも気丈に立っている。

彼女もまた、自らの意志で、偽りの王妃の座を捨てて帰ってきたのだ。


「クラリス……!」


それを皮切りに、次々と仲間たちが帰還した。


「イッセイくん!」


「イッセイ殿!」


空間の至る所が砕け、ルーナが、サーシャが、リリィが、セリアが……一人、また一人と、俺の元へと駆け寄ってくる。

誰もが、頬に涙の跡を残しながらも、その表情は、かつてないほど強く、そして晴れやかだった。


「……みんな!」


俺が声をかけると、全員が涙を浮かべながら、それでも力強い笑みを浮かべていた。


「……当たり前じゃない。あんたのいない楽園なんて、地獄と同じよ」


リリィが、涙声で悪態をつく。その言葉に、誰もが頷いた。


「そうウサ! イッセイくんのいないステージなんて、歌う意味ないウサ!」


「にゃーん……。イッセイくんのいないお昼寝は、ただの睡眠だにゃ……」


フィーナとミュリルが、俺の両腕に泣きながら飛びついてくる。


もう、誰も言葉はいらなかった。

俺は、駆け寄ってきた仲間たちを、一人ひとり、強く抱きしめた。


いや、自然と、全員が中心に集まり、一つの塊になっていた。

涙と、笑い声と、互いの温もりが混じり合う。言葉はいらない。


ただ、互いの温もりだけが、俺たちが選んだ“現実”の証だった。


(……ああ、そうだ。これが、俺の欲しかった世界だ。完璧な楽園なんかじゃない。騒がしくて、手のかかって、それでも、どうしようもなく愛おしい、この現実こそが……)


その、俺たちの想いが一つになった瞬間だった。

俺たちの中心で、七色の光が集い始めた。


一人ひとりの胸から溢れ出た、仲間を想う心が、光の糸となって絡み合い、一つの美しい宝冠を形作っていく。

それは、俺たちの絆そのものが具現化したかのような、温かい輝きを放っていた。


第二の神具、《絆の宝冠》だ。


「これは……」


「私たちの……想いが……」


シャルロッテが、感極まった声で呟いた。


俺が、その奇跡の結晶に手を伸ばした時、空間に冷たい気配が満ちた。

オリオンが、再び俺たちの前に姿を現したのだ。


彼は、宝冠と、涙ながらに笑い合う俺たちを、ただ黙って見つめていた。

その無機質な瞳に、初めて“理解不能”という名の感情が浮かんでいるように見えた。


(……エラー。論理マトリクスに、該当する答えがない。『個人の最大幸福』というインプットに対し、『集団の不完全な現実を選択』というアウトプット。……理解不能。そして、その非論理的な選択の結果、新たな概念武装(神具)が生成された……? この“絆”という変数は……私が想定していたバグ(不具合)の範疇を、超えている……)


オリオンは、しばらくの間、ただ黙って俺たちを見つめていた。

その沈黙は、どんな言葉よりも雄弁に、彼の敗北を物語っていた。


神々の“理”が、俺たちの“想い”の前に、意味をなさなくなった瞬間だった。

やがて彼は、何も言わず、ただ、次なる試練の地――大陸の最も高く、そして厳しい山脈の方角を指し示した。


その仕草は、もはや審判者としてのものではなく、ただ、自分には理解できない現象の行く末を見届けようとする、観察者のそれのようだった。

そして、彼は静かに光の中へと姿を消した。


俺は、仲間たちと顔を見合わせ、ふっと笑った。


「……俺たちの、勝ちだな」


その言葉に、全員が力強く頷いた。

俺は、宙に浮かぶ《絆の宝冠》を、そっと手に取った。


それは、驚くほど温かかった。俺たちの、魂の温度そのものだった。

神々の試練は、俺たちを引き裂くどころか、また一つ、俺たちの絆を強く、本物へと変えてくれたのだ。

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