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第一章 屋敷の目覚めと最初の剣

「おはようございます、イッセイ様! 本日は体調いかがですか?」


「うん、もうすっかり元気だよ。ありがとう、エリナ」


そう答えながら、僕――イッセイ・アークフェルドは、ふわりとベッドから立ち上がった。

あれから二日。僕は“呪病”という厄介な状態から回復し、ようやく普通に動けるようになっていた。


「にしても……この体、軽いなぁ」


細く引き締まった四肢。まだ五歳の子供のはずなのに、妙にバランスがいい。

きっとステータス補正がかかってるんだろう。剣聖スキル、侮れない。


「イッセイ様、今日は書斎へ行かれるのですか?」


「うん、まずはこの世界の基礎情報を頭に叩き込みたいからね」


まず調べるべきは、この国の歴史、地理、魔法体系、そして――

冒険者ギルドの構造とダンジョンの存在。


(スキルやレベルの上昇条件、称号の仕様も押さえておきたい)


「では、書斎へご案内いたします」


「ありがとう。……その前に、ちょっと庭に出てもいいかな?」


「庭、ですか?」


「少し、剣を振ってみたくてね」


僕はにっこり笑って、腰にチュートリアルソードを装着した。


  * * *


侯爵家の中庭は、想像以上に広かった。

石畳の小道が緑の芝を縫うように続き、小さな噴水と花壇が整えられている。

端には、訓練用の木人もくじんまで備え付けられていた。


「うん……ここなら、ちょっとくらい暴れても大丈夫そうだね」


まずはステータスの確認。


レベル:1

ジョブ:侯爵家三男(固定)

スキル:ステータスウインドウ/インベントリ/鑑定/言語理解/剣聖/賢者

装備:チュートリアルソード/チュートリアルメイル

(剣聖スキルの影響がどれほどか、少し試してみよう)


「はっ!」


踏み込みと同時に、鋭く木人へと斬りかかる。


ズバッ!


刃が木人を一閃。真横から斜めに、剣が食い込んだ。


「……あ、これ思ってたより強いな」


剣聖スキル補正なのか、筋力の補正、反応速度、バランス。

“初心者より少し強いかも?”の動きだった。


「こりゃ、下手に人前で振り回すのはやめといた方がいいかもね……」


「……イッセイ様?」


「あっ、エリナ。見てた?」


「はい。あの、木人が……剣が食い込んで……」


「あはは。ちょっと力みすぎたかな」


「……イッセイ様、もしかして、どこかで密かに修行を……?」


「そういうことにしておこうか」


(バレるの早かったな)


  * * *


書斎に戻ってからは、本と格闘。

王国の地図、種族の解説、ギルドの仕組み。

どれも予想以上にゲーム的で、読めば読むほど面白かった。


「この世界、本当に自由度が高いな……。王族でも冒険者になる時代か」


「イッセイ様、お茶をどうぞ」


「ああ、ありがとう。……それにしてもエリナ、気が利くね」


「えへへ……それが、わたくしの務めですから」


(こういう“素で尽くしてくれる系ヒロイン”、現実でも貴重だったなあ……)


「さて、次は魔法の体系か……賢者スキルをちゃんと試すには、基本の詠唱から覚えないと」


「明日より、魔法の家庭教師がいらっしゃいます。お父様のご命令で」


「……それはいいタイミングだね。僕も教わる準備はできてる」


書を閉じ、窓の外を見る。空は澄み渡っていて、どこまでも広がっていた。


(この世界には、きっと無限の可能性がある。なら、僕がやることはひとつだ)


「エリナ、明日から忙しくなるよ。

……修行に勉強に、それから――世界を見に行く準備だ」


「はいっ、イッセイ様!」


その目には、まっすぐな光があった。

理想の異世界ライフは、まだ始まったばかりだ。

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