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幕間:王女と小悪魔、学園日和。

「ねぇイッセイ、今日も一緒にランチ、いいですわよね?」


クラリスが背後から優雅に微笑みかけてきた瞬間、教室内の空気がほんのりピリついた。蒼眼に強い意志を湛えたその瞳は、誰よりも堂々とイッセイの横に立つ資格を誇示している。


「ええ、もちろん。僕でよければ――」


「うふふ、わたくしのために用意してくださってたんですのね? さすがですわっ♪」


「……え? いや、まだ何も言ってな――」


「ほら、席はこっちですわよ? さ、さ、さあ!」


王族特有の強引さで、イッセイはクラリスに手を引かれ、昼休みのベンチ席に連行されていった。


そこへ、くすくすと笑いながら現れたのが、もう一人の問題児――ルーナだった。


「おやおや〜、クラリス様がまた暴走なさってるわねぇ。かわいい〜♪」


「うるさいですわ、ルーナ。これは正当な特権ですのよ。彼が助けてくれた恩人というのは、貴女も忘れては――」


「知ってる知ってる。でもね、クラリス様?」


ルーナはひょいとイッセイの隣に腰を下ろし、すっと指を伸ばして、彼の頬に軽く触れた。


「今は私の番よ。……ね、イッセイくん?」


「えっ……あの、どっちも近いです……」


「ふふっ、そう言って照れるところがまた、かわいいのよねぇ」


クラリスがぷいっと顔を背けた。「……下品ですわ。わたくしは、もっと気高く愛を育みたいのですの」


「へぇ〜? じゃあ、さっきの強引な手つなぎは“気高い愛”なんだぁ〜?」


「ルーナっ!」


イッセイは苦笑しながら、二人の間にそっと紅茶を差し出した。


「まあまあ、二人とも。せっかくの昼休みだし、少し落ち着いてお茶でもどう?」


「……イッセイくん、優しい。好き」


「わ、わたくしも、好意を……いえ、敬意をもっていますわ!」


和やかな空気の中、三人は静かに紅茶を啜る――はずだったが。


「……あら? このお茶、イッセイくんが淹れたの? すごく美味しい」


「ほんとですわ……芳醇な香りと繊細な渋みが……!」


「よかった。ちょっとした工夫で美味しくなるんだ。蒸らし時間と茶葉の量を調整して――」


「ふふっ、今の話、メモしておこうかしら。“イッセイくんにとって美味しいって言われるのが一番うれしい”って♡」


「……そ、それは、照れるな」


「イッセイ……今日のあなた、少しだけ、かっこいいですわね……!」


午後の授業が始まる鐘が鳴るまで、三人の穏やかなランチタイムは続いた。


次第に深まっていく絆と、密やかに燃え上がる想い。


やがて始まる武闘会の戦火の中で、それぞれの想いは――さらに鮮やかに交差していく。

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