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垂直の風、ヴェル=レヴァタ突入!

「視界、ゼロだな……!」


イッセイの声が空中船ノア・スカイランダーの操縦室に響く。


目前にそびえるのは、天へ向けて果てなく伸びる風の柱《ヴェル=レヴァタ》。

空を裂き、無数の乱気流が縦方向に螺旋状の壁を作り、侵入者を拒んでいるかのようだった。


「うおおお……まるで、風の迷宮だぜ……」

ルーナが窓に張りつき、流れる風の筋に見入っていた。


「計器、完全に狂ってる。通常の航法じゃ、正確な座標が取れないわ」

シャルロッテが冷静に告げる。


「……でも、行くしかないのよね? この先に、神柱がいるんでしょ?」

サーシャが剣の柄を握る手に力を込めた。


「大丈夫、にゃ。ミュリルのヒゲが、ちゃんと風向きを感じてるにゃん!」

「ヒゲじゃなくて感応石だろ」セリアが即ツッコミを入れる。


「落ち着いて、みんな」


イッセイは《風導音叉》を取り出し、音を鳴らした。

すると、不思議なことに、風の柱の一部が――“呼吸するように”空間を開いた。


「……今、風が反応したウサ!」

フィーナが耳をピンと立てて叫ぶ。


「この音叉は“神柱たちの導き”なんだ。音に応じて、風の壁が開く。

つまり……通れる“隙間”があるってことだ」


「よーし、それなら突入あるのみだな! 次の神柱、起こしてこようぜ!」


ルーナの掛け声に、空中船が風の柱の中へ滑り込む。


その瞬間――


「うわ、上下感覚なくなるウサ! 浮いてるのか落ちてるのかわかんないウサ~!」


「にゃー!? ミュリルのしっぽが……絡まったにゃ~!」


「お前ら、騒ぐなっ!」


船内はちょっとしたパニック状態だったが、リリィだけはワクワクしていた。


「この風の流れ……回転エネルギーとして利用できるかも。風力タービン型の回転翼で……ぐふふっ、スパ飛行城が作れそう……」


「今はそれより生き残る方が大事だろう!」イッセイが鋭く突っ込む。


しかし、そんなやり取りも束の間――


「……! 見えた、あれよ!」


シャルロッテが指差した先、風の柱の最上層に、青白く光る“浮遊神殿”が姿を現した。


「……あれが、《神柱シリル》の眠る神殿──《エアリア・レクス》!」


「着陸態勢に入る! 船の魔力フィールド、最大展開!」


イッセイが叫ぶと、空中船は強烈な上昇気流を切り裂きながら神殿前に接近した。


バシュッ――!


風の抵抗が霧散するように弾けた瞬間、船体がゆっくりと石造のプラットフォームに着地した。


「よっしゃ……なんとか、着いたな」


「でも……なんだか、静かすぎるウサ」


フィーナが警戒心を強める。確かに、風の柱の中にあるはずの場所なのに、神殿の周囲には一切の風がない。


「風が……止まってる?」

ミュリルが不安げに呟いた。


「この空間だけ、風の存在が封じられている。

たぶん“神柱シリル”が眠っている影響だ」


シャルロッテが周囲を見回し、魔導スキャンを開始する。


「これは……空間封鎖結界。一定の“歌と魔力波長”がないと、封印は開かないみたいね」


「じゃあ、また“風歌”の出番ウサ?」


「……いや、エリュアはいない。代わりに歌うのは、私たちだ」


イッセイが、リリィに目を向ける。


「いけるか?」


「もちろん。これ、商機じゃないけど……魂のコラボ、してみようか!」


リリィは音叉をチューニングし、シャルロッテと共に“風の響き”を作り出していく。


「……風よ、記憶を抱きしめし者よ。汝の眠りに、声を添えん」


「……いま、目覚めのとき……風の名において、我ら呼ばん!」


音が神殿内に吸い込まれる――


次の瞬間、地響きのような風鳴が巻き起こった。


神殿が微かに震え、空間にひび割れのような光が走る。


「くるぞ……!」


イッセイが叫んだその時――


神殿の中心部から、淡い光の粒が舞い上がり、それはやがて“少女の輪郭”を形作っていく。


「私は……風柱、シリル。誰が……我を呼び覚ました?」


その声は風のささやきのように優しく、しかしどこか試すような冷たさを孕んでいた。


「私たちだ。空を、世界を守るために。風を継ぐ者として、君の力が必要なんだ」


イッセイが一歩前に出て言うと、シリルの瞳が静かに動いた。


「……ならば、覚悟を示せ。“風に選ばれし意志”を、私に見せよ――」


彼女の手が風の剣を形作り、瞬間、空間が一気に収束する。


「――試練、開始ウサ!」

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