ミュリル編「教会の屋根裏で、小さな“にゃん”の告白」
教会の鐘が遠くで鳴りやんだ夜。
それがしは今、小さな屋根裏部屋にいるにゃん。
柔らかな毛布に包まれた孤児たちの寝息が、静かに響いているにゃ。
「……みんな、いい夢を見てるにゃんね」
そっと毛布を整えながら、わたしはにゃん語が止まらない。
子供たちを守るのは、わたしの使命でもあるけど――
本当は、心の底では「助けられないかもしれない」って不安でいっぱいだったにゃん。
けどね……。
イッセイくんがいてくれたから、逃げずにいられたにゃ。
冷たい夜風も、孤独も、彼と一緒ならほんの少しだけ軽くなる気がして。
「にゃん……ねぇイッセイくん」
ひそひそと声をかけると、彼は静かに返事をくれた。
やさしい光が差し込むランタンの下、彼の横顔を見つめると――
「ねぇねぇ……わたし、イッセイくんに――ぴったり、くっついててもいいにゃん?」
ちっちゃな声で、手を伸ばす。それを彼がそっと握り返してくれて、胸がキュッとなったにゃん。
「あったかいにゃ……」
唇がちょっとだけ震える。鼓動が跳ねる。
子供たちの寝顔がにじんで見えるくらい、世界があったかくて、柔らかくて……。
「……特別にゃん。イッセイだけにゃん」
そうとだけ呟くと、彼は微笑んで、おずおずと――そっと、唇を重ねてくれた。
柔らかいぬくもり。泡に包まれるみたいに、全身がとろけたにゃん。
唇が離れても、心はずっと膨らんだまま。
世界が愛おしくて、息をするのも忘れそう。それくらい、あたたかかったにゃん。
「うん、大丈夫にゃん……」
その一言でわたしの不安は消えたにゃん。
イッセイくんといるだけで、わたしは無敵になれる気がしたにゃ。