初めてのダンジョン攻略
「さあ、今日は本気のダンジョン攻略だよ。全員、よろしくね!」
朝日が差し込む中、僕――イッセイ・アークフェルドは、仲間たちと共に王都近郊の未踏ダンジョン《古代遺跡ダリム》に向かっていた。
今回は僕の初任務でもあるけれど、それ以上に重要なのは――
「今日こそ、“主さま”を守ってみせるにゃん!」
「……私も、戦えるようになりたいウサ」
「やれやれ、仕方ないわね。背中くらいは守ってあげるから」
ミュリル(豹人)、フィーナ(兎人)、セリア(ダークエルフ)。
三人の亜人少女たちも正式に同行する初の冒険だった。
「イッセイくん、ダンジョンは初めてじゃないでしょ。気を抜かないで」
「はは、わかってます、メルティ先生」
「今回は私も本気でいくわよ。命を預ける以上、訓練とは訳が違うから」
剣の師匠・セリナ、魔法の師匠・メルティ先生も加わり、万全の布陣。
いよいよ、冒険者としての“最初の本気”が始まる。
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遺跡の入口は、崩れた石柱とツタの絡まる古代構造。
内部はひんやりとした空気と、どこか漂う不穏な魔力の気配があった。
「足元注意。ここ、罠もある可能性が高いわ」
「了解です。ミュリル、前方確認お願い」
「任せるにゃ!」
シュンッ、と猫のように滑る動きでミュリルが前方へ。
「右側の床、少し浮いてるにゃ。踏んだら落ちるにゃん」
「すごい……ミュリルちゃん、頼りになるね」
「ふふーん、もっと褒めてもいいにゃ!」
そのまま慎重に進んだ先で、第一の戦闘が訪れた。
「来たウサ! 魔物……三体!」
現れたのは石皮に覆われたゴーレム。鈍重だが一撃が重い。
「私が正面から受ける。メルティは援護を!」
「任せたわ。イッセイくんは後方支援お願い!」
「了解!」
「私も行くにゃっ! 側面から――《猫爪乱舞》!」
ミュリルがゴーレムの脇に回り込み、高速の爪撃を放つ。
そのスピードに、一瞬ゴーレムの動きが止まった。
「隙ありウサ――《跳躍斬り》!」
フィーナが軽やかに飛び上がり、ゴーレムの頭に蹴りを入れる。
衝撃でバランスを崩したその隙を――
「《雷槍の術》!」
セリアの放った魔法が命中。ゴーレムがバラバラに砕け散った。
「……やるじゃない。少しは頼れるようになったわね」
「えへ……主さま、見てたウサ?」
「もちろん! すごかったよ、みんな!」
(戦いの中で、確かに彼女たちは成長してる。剣も魔法も、訓練通りに動けてる――いや、それ以上だ)
⸻
進行を続ける中、僕も随時、指示を出しながら仲間の動きを確認する。
状況判断、支援魔法、時には直接戦闘も。
「メルティ先生、次の魔法障壁はどうすれば?」
「重ねがけされてるタイプね。解除には魔力の干渉が必要――あなたなら、できるでしょ?」
「よし、やってみます!」
魔力を集中し、詠唱速度と制御精度を高め――
「《ディスペル・コードブレイク》!」
魔法障壁が弾け飛び、奥の階段が現れる。
「やったにゃ! 主さま、かっこよすぎるにゃ!」
「……惚れ直したウサ」
「べ、別にすごいなんて思ってないんだから!」
⸻
最奥部ではボスモンスター《鎧霊の番犬》が待ち構えていた。
巨体と呪いの鎧をまとった狼型魔物。
剣を弾き、魔法を歪める特殊耐性を持つ強敵だった。
「連携で崩すしかない。セリナ先生、正面を!」
「了解、盾は任せて!」
「ミュリルとフィーナ、左右から攪乱! セリアは援護魔法を!」
「了解にゃん!」
「うさっ! 突っ込むよ!」
「……イッセイ、私も《火力》いくから、ちゃんと見てて」
作戦通りに連携が決まり、僕の最後の一撃――
「《終焉の炎》!」
炸裂する紅蓮の柱が、番犬の巨体を飲み込み――
ついに、ダンジョンボスを撃破した。
⸻
「……これで、クリアだね」
「はぁっ……はぁっ……みんな……無事でよかったにゃ……」
「うん……なんか、自信ついたウサ」
「はっ……ふん、当然でしょ……でも、まあ……お疲れさま」
彼女たちが、少し誇らしげに笑っていたのが、なにより嬉しかった。
「……僕も、もっと強くなろう。君たちを守れるように」
静かに誓う。
これはただの一回きりの冒険じゃない。
僕たちは、これからも“仲間”として、共に成長していくのだから。